今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

山の中で車が…

2008年04月20日 | 失敗・災難
「月1回は宿泊旅行」をノルマとしている私の、今年度初月の宿泊先は浜名湖畔の準定宿。
というのも、最近の旅行目的は未知の土地の訪問ではなく、日常からの気分転換だから、気に入った宿へのリピートでも満足。

ただ、昨年秋から、愛車(17年目のローバー・ミニ)で遠出すると、車が旅先で動かなくなって、レッカー車のお世話になる事が続いた。
旅先のしかも山の中で車が動かなくなるという、考えただけでも顔面蒼白になる困惑事態を複数回経験すると、さすがに”学習”してしまって、車で遠出するのが恐くなる。

といっても、その後あちこち修理(部品交換)して、今のところ車の調子は悪くない。
そうなるとやはり、毎月の遠出をしたくなり(2,3月は電車旅行だった)、懲りずに今回も車での旅行とした。

さぁ、出発の日は朝から青空。
この天気ならと、四角い革製の旅行用ボストンバッグをミニの屋根(ルーフキャリア)に紐でくくりつける。
このいでたち、いかにも小粋なイギリス紳士のドライブスタイルだね、と一人で悦に入る(写真)


浜名湖は名古屋からなら東名高速を使えば、インター脇なのでてっとり早いのだが、それではドライブとして面白くない。
なので浜名湖行きは、毎回、高速を使わずに、一般道で三河高原を横断し、さらに愛知・静岡県境を峠越えして浜名湖に降りることにしている。

頭にボストンバッグを載せた我がミニは、車体の小ささに似合わぬ重低音を響かせて、一路浜名湖へ目指して走り出す。
香嵐渓の新緑が美しい(ここを目的にしても充分満足)足助の町を抜けて、新緑におおわれた三河高原に入って行く。
国道の一本道を、風景を味わいながらマイペースで走っていると、背後に 4WDが追いついてきた。
こちらもスピードを上げるが、張り付いてくる。
こっちは急ぐ旅ではないので、先に行かせようと、見通しのいい所でウインカーを出して路肩に寄って停車した。
すると4WDは私の右側を追い越しざまに停車して、運転席のおじさんが大声で何か言ってくる。
窓を閉めていたので、何を言っているのかよくわからなかったが、怒っている風でもない(道を譲ったのだから礼を言われて当然だし)。
ただ発音と身ぶりから、私の車の後ろのバンパーの下に異状があるという指摘は読み取れた。

「やってしまったか」とその時気づいた。
実は、先ほどから、この車の真下から後ろにかけて変な音が断続的に響いていたのだ。
その音は、この車に後から付けたマフラーの管の取付けが弛んで、カーブやシフトチェンジごとに管が道路や車体にあたる音だとわかっていた。
車を降りて、後ろへまわると、重低音自慢の2本のマフラーが車体から離れて、力なく地面に着かんとしている。
思っていたよりひどい。
車の下の覗くと、マフラー管そのものは車についているが、それをささえる留め具がすべて無くなっていた。
つまり、この道を快走している時に留め具の最後が落ちたのだ。
このまま走行を続ければ、マフラーは自重と振動と遠心力によって、私の背丈ほどの長さの管ごと車から脱落することは必定。
今すぐになんとかしなければ。
しかし、ここは三河高原のど真中。
行くも戻るも山の中。
あ~、また山の中でトラブルだ!

停車した所が集落の入り口だったので、中を歩き回ってみたが、車の整備工場などあるはずがない。
尋ねようと思った駐在所も無人で「パトロール中」の札があるだけ。
民家の庭に婦人がいたので、付近に車の整備屋はないか尋ねた。
その人は丁寧に、電話帳で調べて、思い当たる所に電話をかけてくれたが、いずれも休業日らしく誰もでない。

しかし次の手がある。
こういう故障時も、任意保険で契約している保険会社に電話すれば、レッカー車の手配をしてくれることを前回の故障時に知ったので、携帯で電話してみる
(前回のトラブル時は、携帯のバッテリがへたっていたので、パソコンで充電しながら通話した。実は携帯電話を買い替えたのは、この経験から)。
保険会社さらにはJAFと幾度かやり取りして、この山の中にJAFに来てもらうことにした。
しかし何時に着くかは、出回っているレッカー車に問合せ中とのこと。
また、着いても応急処置しかできないが、最低2万円ほどかかるという。

いつ来るかわからないJAFを待っている間、
「今は宿に行く途中なのに、戻るに戻れない。はたして旅は続けられるのか」と落ち込んだが、
さっきの「応急処置」という言葉が心に残っていた。

何もせず待っているのは暇なので、自分でもその「応急処理」とやらはできないだろうか。
ひたすら誰かに頼ろうとしていた心を改めて、冷静な目でもう一度マフラー周辺を点検してみる。
脱落しそうなマフラーを車体に固定できれば、奥のエンジンに続く管も不安定でなくなる。
マフラーを留めていた金具代わりになるものは何もないが、マフラー脇の車体側左右に紐を通せる丸い穴が開いているのを発見。
ひらめいた。

私は、車の屋根に載せていたボストンバッグの紐をはずしにかかった。
イギリス紳士を気取ってる場合でない。
ボストンバッグを車内にしまい、そのバッグの固定専用の紐を持って、車の後ろにまわり、思いきり身を屈めて、車体の下に手を廻した。
まず紐の端をマフラー横の穴に通し、マフラーの下をくぐらせて、もうひとつの穴に通す。
これを3度ほど繰り返して、最後に紐を止めたら、マフラーは手で押しても動かないほどにしっかり固定された。
柔軟な紐の方が金属の鎖よりもマフラーを包むようにしっかり固定できる。
ただ布製で強度は弱いので、マフラーの熱や衝撃による断裂が懸念されるが、今回の旅の間はもつだろう。
前にまわってエンジンを回転させ、後ろに回ってマフラーの振動具合をみる。
OK。紐がゆるむことはない。
再び保険会社とJAFに電話を入れて、救援要請をキャンセルした。

道路脇の自販機に進み、あたたかい缶コーヒーを安堵感を味わうかのように飲み干し、
出発。
数十分ぶりに車は地面にこすれる音を出さずに正常に走り出した。
ときたま車を止めて、マフラーをチェックしたが、紐の緩みも断裂もなく、マフラーはしっかり固定されたまま。
やがて、わが愛車はチェックイン時刻前に予定通り宿の駐車場に到着した。

昨年秋の一回目のトラブルでは、なすすべもなく無駄に時間が経過し、結局行き当たりの人にJAFの連絡先を教えてもらった(レッカー代を支払った)。
今年の冬の二回目のトラブルでは、他人に頼らず、自分で保険会社に電話して、保険契約内でレッカーを頼んだ。
そして春の三回目のトラブルでは、幸い車は動くこともあり、自分で応急処置をして、 レッカー車要請をキャンセルするに至った。
トラブルは続いているが、自分の対処法は進歩しているようだ