博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

2023年2月に読んだ本

2023年03月01日 | 読書メーター
漢文の語法 (角川ソフィア文庫)漢文の語法 (角川ソフィア文庫)感想
巻末の解説にも触れられている通り、語法の解説を読むというよりは膨大な数にのぼる文例を読む本。類書と同様に『史記』や『論語』などが多いが、清朝考証学者による該当する語法の解説や唐律なども含まれている所が独特。文法的には現在の水準、感覚からすると古い所も目立つが、それは他書で補うべきであろう。
読了日:02月01日 著者:西田 太一郎,齋藤 希史,田口 一郎

しろがねの葉しろがねの葉感想
戦国~江戸初期にかけての石見銀山を舞台とする。ウメが星人してからの話がメインかと思いきや、彼女が最も輝いていた時期というか、彼女自身が後から振り返って一番戻りたいと思うことになる少女時代が、全体の半分近くを占めている。彼女の回想譚として読めば面白い構成。時代の変化に対応できない喜兵衛の姿も印象的。
読了日:02月04日 著者:千早 茜

アジア人物史 第1巻 神話世界と古代帝国アジア人物史 第1巻 神話世界と古代帝国感想
アジア各地の神話についても触れていること、その人物に対する後代の人々の受容や現代への影響に言及していること、ローリンソンなど関連する後代の学者も項目として立てていること、女性を積極的に項目に立てていること、人物以外に王朝や族群などの勢力、集団も項目に立てていることが特徴だろうか。執筆者の中に当該人物に関する評伝等を既に発表している研究者もかなり含まれているが、始皇帝担当の鶴間和幸氏のように違うアプローチを試みている人もいて好感が持てた。
読了日:02月10日 著者:

西太后に侍して 紫禁城の二年間 (講談社学術文庫)西太后に侍して 紫禁城の二年間 (講談社学術文庫)感想
宮廷で女官のような立場で二年間暮らした際の自伝ということだが、近代化を迫られる旧弊な王朝という要素はあるものの、基本的には清末の宮廷を舞台とした中国版『枕草子』のようなものとして読むことができる。西太后はもっと若ければ中宮定子のようだったかもしれないし、聡明な光緒帝は母后に掣肘される平安時代の天皇のようにも見える。西太后に仕える女官や宦官の振る舞いも、日本の宮廷の女官などと似通った所がありそうである。中国人特有ということではなく、そういった普遍性に思いを致しながら読むのも一興だろう。
読了日:02月14日 著者:徳齢

「幕府」とは何か: 武家政権の正当性 (NHKブックス 1277)「幕府」とは何か: 武家政権の正当性 (NHKブックス 1277)感想
私にとっては本論にあたる議論よりもその周辺の議論、先行研究や研究史理解に関わる話を面白く読んだ。「マルクス主義史観」を前提とする研究者はもちろん、往時それを批判した研究者も、その時代の外的状況や論調を強く意識していたことが本書からわかる。翻って「マルクス主義史観」的な研究を批判する現在の中堅・若手研究者も、現在の状況や論調から離れて史料に接しているつもりでも、実際にはとらわれしまっているのではないか。そんなことを考えさせられた。
読了日:02月17日 著者:東島 誠

申(シェン)の村の話申(シェン)の村の話感想
中国の農村で暮らしてきた職人たちの物語。著者やその父祖が自分たちの暮らしてきた村で見聞きした話に基づくノンフィクションということだが、やはり地方の農村での伝聞に基づく小説『一日三秋』を連想させる。同じ村での話なので、鍛冶屋の章が仕立屋の章と深く関係してくるといった構成も面白い。老百姓が辛亥革命や文革といった大文字の歴史にどのように巻き込まれ、あるいは巻き込んでいったのかという読み方をすると面白い。
読了日:02月20日 著者:申 賦漁(シェン・フーユイ)

貴族とは何か (新潮選書)貴族とは何か (新潮選書)感想
古代から現代まで、西欧、就中イギリス貴族の歴史を中心に、中国の貴族や日本の華族、更には日本の貴族院を経て参議院にまで話が及ぶ。もっと雑多な構成かと思いきや、貴族の歴史を現代への提言に繋げている。中国の六朝貴族についても西欧の貴族との共通点を挙げ、普遍性の中で考察している。ただ、本編末尾に言う道徳を説く重要性については、「道徳」よりは「倫理」とした方がよりふさわしいのではないかと思ったが…
読了日:02月22日 著者:君塚 直隆

いちにち,古典 〈とき〉をめぐる日本文学誌 (岩波新書 新赤版 1958)いちにち,古典 〈とき〉をめぐる日本文学誌 (岩波新書 新赤版 1958)感想
日本の古典の中の時刻にまつわる記述に注目した古典エッセー集。取り上げる古典は源氏物語など平安~鎌倉時代にかけてのお馴染みのものが多いが、他の時代のものや漢籍についても取り上げている。時刻に絡んで話題は昼強盗、女性が月を見ることのタブー、ドッペルゲンガー等々、本書の後ろの方になればなるほど時刻とはあまり関係の無い方向へと広がっていく。しかし本書の本来の趣旨から離れ気味になっても面白い。
読了日:02月25日 著者:田中 貴子

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