第9章 計審潘楊案(前編)
党進が潘仁美を護送して帰京した後、太宗皇帝は故意に岳父の肩を持ち、この案件を参知政事の傅鼎臣に審理させることにしました。
傅鼎臣はお金に目のないとんでもない貪官で、こんな大きな案件を任されて、彼は裁判が始まらないうちから、どれだけうまい汁が吸えるのかと皮算用をしています。この日、果たして潘府の黄夫人が、大事なことで相談があるからと侍女を派遣してきたと知らせがありました。傅鼎臣が奥の部屋にやって来ると、侍女は跪いて言いました。「奥様が私めに黄金百両と玉帯を送り届けるよう命じられました。どうかお納めになってください。潘様のことであなた様に面倒をおかけしますので。」傅鼎臣は黄金と玉帯を見ると、相好を崩し、すべての品を受け取りました。
さて、八賢王は傅鼎臣が金に汚いことを知ると、傅府の状況を逐一監視させます。この日潘府の侍女が傅府に入ったと聞くと、八賢王はすぐさま駆けつけ、うまい具合にその侍女を捕まえました。傅鼎臣は八賢王を見ると、驚いて顔が土気色になります。ひとしきり厳しく訊問されると、その侍女は本当のことを白状しました。八賢王は供述を記録し、太宗に上奏しました。太宗は腹立ちのあまり、傅鼎臣を平民の身分に落としたのでした。
それから、八賢王は今度は寇準を推薦して西台御史に昇格させ、潘・楊の案件を審理させることにしました。知略に富んだ寇準はこの案件を任されると、こう思いました。「かたや陛下の岳父殿、かたや八賢王の義理の弟。この案件はうまく治められればよいが、ちょっとでも過失があろうものなら、おそらく命すら保てまい。とは言っても皇命には逆らえぬし、思い切って西台に赴任するしかあるまい。」
寇準が赴任しないうちに、潘仁美の娘の潘妃がもう一度同じ手を使い、小間使いの宦官に贈り物の目録を送り届けさせて言いますには、「お妃様は御史様に寛大なご処置をとのことです。」寇準はとっさに考えがひらめき、ただちに金に目がくらんだ様子を装って目録を受け取り、それからそれを懐に押し込んで八賢王の南清宮に直行します。寇準は八賢王に見えると、地面に跪いて叩頭しました。八賢王は奇妙に思って尋ねます。「お前は西台に赴任せずに、どうして南清宮にやって来たのか?」寇準はすぐさま潘妃の贈賄のことを話し、また懐から目録を取り出し、八賢王に渡して目を通してもらいました。
八賢王は目録を目にすると、怒りで顔色が変わり、この潘妃にしっかり灸を据えねばなるまいと思いました。彼が考えをめぐらせると、突然怒りが喜びに変わり、思わず「こいつめ、このように頭が回るとは、誠に宰相の才覚を有しておるな。」と口に出してしまいます。ドサッという音がしたかと思うと、寇準が地面に跪いて「ありがたき幸せ!」と言いました。八賢王は訳が分からずに尋ねます。「何がありがたいのだ?」寇準は言いました。「殿下は私を宰相に取り立ててくださいました。どうして感謝しないでおれましょう。」八賢王は失言をしたことに気付きましたが、潘・楊の案件が片付いたら彼を吏部に行かせて宰相にさせてやると承諾するほかありません。
党進が潘仁美を護送して帰京した後、太宗皇帝は故意に岳父の肩を持ち、この案件を参知政事の傅鼎臣に審理させることにしました。
傅鼎臣はお金に目のないとんでもない貪官で、こんな大きな案件を任されて、彼は裁判が始まらないうちから、どれだけうまい汁が吸えるのかと皮算用をしています。この日、果たして潘府の黄夫人が、大事なことで相談があるからと侍女を派遣してきたと知らせがありました。傅鼎臣が奥の部屋にやって来ると、侍女は跪いて言いました。「奥様が私めに黄金百両と玉帯を送り届けるよう命じられました。どうかお納めになってください。潘様のことであなた様に面倒をおかけしますので。」傅鼎臣は黄金と玉帯を見ると、相好を崩し、すべての品を受け取りました。
さて、八賢王は傅鼎臣が金に汚いことを知ると、傅府の状況を逐一監視させます。この日潘府の侍女が傅府に入ったと聞くと、八賢王はすぐさま駆けつけ、うまい具合にその侍女を捕まえました。傅鼎臣は八賢王を見ると、驚いて顔が土気色になります。ひとしきり厳しく訊問されると、その侍女は本当のことを白状しました。八賢王は供述を記録し、太宗に上奏しました。太宗は腹立ちのあまり、傅鼎臣を平民の身分に落としたのでした。
それから、八賢王は今度は寇準を推薦して西台御史に昇格させ、潘・楊の案件を審理させることにしました。知略に富んだ寇準はこの案件を任されると、こう思いました。「かたや陛下の岳父殿、かたや八賢王の義理の弟。この案件はうまく治められればよいが、ちょっとでも過失があろうものなら、おそらく命すら保てまい。とは言っても皇命には逆らえぬし、思い切って西台に赴任するしかあるまい。」
寇準が赴任しないうちに、潘仁美の娘の潘妃がもう一度同じ手を使い、小間使いの宦官に贈り物の目録を送り届けさせて言いますには、「お妃様は御史様に寛大なご処置をとのことです。」寇準はとっさに考えがひらめき、ただちに金に目がくらんだ様子を装って目録を受け取り、それからそれを懐に押し込んで八賢王の南清宮に直行します。寇準は八賢王に見えると、地面に跪いて叩頭しました。八賢王は奇妙に思って尋ねます。「お前は西台に赴任せずに、どうして南清宮にやって来たのか?」寇準はすぐさま潘妃の贈賄のことを話し、また懐から目録を取り出し、八賢王に渡して目を通してもらいました。
八賢王は目録を目にすると、怒りで顔色が変わり、この潘妃にしっかり灸を据えねばなるまいと思いました。彼が考えをめぐらせると、突然怒りが喜びに変わり、思わず「こいつめ、このように頭が回るとは、誠に宰相の才覚を有しておるな。」と口に出してしまいます。ドサッという音がしたかと思うと、寇準が地面に跪いて「ありがたき幸せ!」と言いました。八賢王は訳が分からずに尋ねます。「何がありがたいのだ?」寇準は言いました。「殿下は私を宰相に取り立ててくださいました。どうして感謝しないでおれましょう。」八賢王は失言をしたことに気付きましたが、潘・楊の案件が片付いたら彼を吏部に行かせて宰相にさせてやると承諾するほかありません。
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