博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

グーグル

2006年04月23日 | 書籍(その他)


佐々木俊尚『グーグル Google-既存のビジネスを破壊する-』(文春新書)

タイトルの通り、グーグルの登場と普及が今までの企業活動をどのように破壊しているのか、またグーグルが今までの検索エンジンと比べてどのあたりが画期的だったのかを解説した本です。

内容的には前に紹介した『ウェブ進化論』(本ブログでの紹介ページはこちら)と重なっている部分もあるのですが、こちらはキーワード広告の導入によって零細・中小企業が廃業の瀬戸際から救われた事例など、具体的な事例を盛り込んでおり、『ウェブ進化論』の内容を補完する本であると言えます。

また、最終章にはグーグルの企業としての問題点にも切り込んでおり、その面でもこういったことに触れていない『ウェブ進化論』を補完する内容になっております。この問題点については、悪徳商法によって儲けている企業が、自分たちのやり方を批判しているサイトをグーグルで検索できないように要請し、その要請をグーグル側がそのまんま受け入れてしまう「グーグル八分」問題、グーグルが提供するアドセンス広告を、ブログ運営者自身だけではなく他人が嫌がらせのために何回もクリックした場合にも、グーグル側が一方的なアドセンス契約を停止してしまう「クリック詐欺」問題、そしてグーグルが国家の要請によって都合の悪い情報を検索・閲覧できなくするという政治問題の3つを取り上げています。

しかし最初の2つの問題については、グーグル側がいずれ、こういった問題によって個人ユーザーからのイメージが悪くなるということを認識すれば、徐々に改善されていくのではないかと思います。もしこういった問題を放置するという姿勢を続けたとしても、かつてグーグルが他の検索エンジンの問題点を改善してトップの位置に躍り出たのと同じように、他の新しい検索エンジンが新規参入し、こういった問題点を改善することによって、グーグルをトップの位置から引きずり下ろすことになるんじゃないかと思います。

本当に憂慮すべきなのは最後の政治問題じゃないかと。
本書ではグーグルが中国政府の要請によって天安門事件や法輪功など、政治的に都合の悪いホームページを見られなくした事例が紹介されています。これについては私は以前からそういった動きがあると知っていたので、『ウェブ進化論』でこの問題について触れていないのを不審に思っていました。『ウェブ進化論』では「どうせこんなバカなことが10年も20年も続くまい」と楽観的に見て、敢えてこの問題をスルーしているのかと思いましたが、本書でグーグルマップ上でホワイトハウスや沖縄の米軍基地の精密航空写真が見られないように処理されているという事例を読んで、「こんなバカがこれからもずっと続くのだろう」という印象を持ちました……

グーグルの問題点ばかりに目がいってしまいましたが、ワープロソフトや表計算ソフトをブラウザ上で無料で使用できるようにする計画や、図書館の蔵書をデシタル化し、検索できるようにする事業については是非成し遂げて欲しいと期待しております。図書館の件については著作権絡みで猛烈な反対に遭っているとのことですが、中国では超星数字図書館という先例が既にできているわけで、グーグルのやる気と押し次第で充分に実現は可能だと思います(^^;)

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