第2章 七郎殺潘虎(前編)
冬が去って春が到来し、花が満開となってそろそろ散ってしまうという頃、六郎楊延昭と七郎楊延嗣は武当山で武芸を学んで三年となっていました。彼らは師匠に別れを告げ、代州の我が家へと急ぎます。
二人が何日か進むと、河南洛陽の境までたどり着きました。やんちゃな楊七郎は、大宋の都の汴梁城が非常ににぎやかであると聞いており、見てみたいと思いました。楊六郎もそう思っていましたが、以前に宋の軍と戦ったことがあり、人に見られるのを恐れていました。二人は相談のうえ、城内に入って人に尋ねられたら、自分たちが木易六・木易七であると名乗ることにしました。相談がまとまると、嬉しそうに汴梁城へと駆けて行きます。
汴梁城に入ると、二人は城門の前にお触れ書きがあるのが目に入りました。お触れ書きにはこう書いてあります。「我が大宋の神威を昂揚させ、楊家将を打ち破るため、特に潘虎に命じて酸棗門の外に演武台を設け、武芸を磨き、天下の英雄を募集させることにした。ともに大宋の天下が永久に続くように守っていこうではないか。」
七郎はこれを見ると、怒りで肺が破れそうになりました。六郎は弟がもめ事を起こすのではないかと不安になり、向きを変えて去っていきます。七郎は急いで兄を追いました。二人は街を通り抜けて食堂にたどり着きました。店員はおしゃべりで、二人が潘虎について尋ねると、こう答えました。「あいつですか、あの有名な潘太師潘仁美の二番目の若様で、少林寺での修業から戻ったばかりです。父親の方は朝廷で我が物顔で、息子の方はその虎の威を借りる狐、都でやりたい放題にやってますよ。最近皇帝陛下があいつに演武台を設けさせましたが、あいつは悪辣で、口では武芸を磨くと言いながら、既に何十人もの好漢があいつの手で殺されているんですよ。」言い終わるとぶんぶんと首を振ります。
七郎はこの話を聞くや、顔を真っ赤にして、六郎に対してこう言いました。「オレはあの野郎を引き裂かないと、気持ちが収まらないぞ!」二日目の朝、六郎と七郎は人の流れに着いて行って酸棗門までたどり着くと、演武台の両脇に対聯が掛かっているのが見えました。上の句は「芸は天下に冠たりて敵手無し」、下の句は「功は寰宇を蓋いて威名有り」で、「奉旨会武」という扁額があります。七郎は「あの野郎がこんな大ぼらを吹くとは、よくも舌が回るものだ。」とこっそり罵りました。六郎は弟の怒りが収まらないのではと思い、そっと彼の袖を引っ張り、演武台の北側の人気が少ない場所へと連れ出しました。
しばらくすると、潘虎は殺気をみなぎらせて台へと上り、「命が惜しくないやつはいくらでも上ってこい!」と叫びました。声が消えないうちに、一人の男がさっと演武台に跳び乗って言うには、「拙者は尤点保。わざわざお前のような無頼者を懲らしめに来てやったぞ!」彼がまだ言い終わらないうちに、潘虎は足を揚げて尤点保の急所を蹴りつけます。尤点保は落ち着いて受け流し、二人は五十数合打ち合いましたが、勝負が着きません。
六郎は注意深い人間なので、とっくに潘虎の足に仕掛けがあるのを見破っていました。彼は七郎に言いました。「七弟、私が見たところこの潘虎の脚力は平凡なものなのに、ずっと蹴りを用いている。奴は靴の中に暗器を隠しているに違いない。お前が台に上って腕比べをするならば、奴の両足に気をつけなければいけないぞ!」七郎はうんうんとうなずきました。
冬が去って春が到来し、花が満開となってそろそろ散ってしまうという頃、六郎楊延昭と七郎楊延嗣は武当山で武芸を学んで三年となっていました。彼らは師匠に別れを告げ、代州の我が家へと急ぎます。
二人が何日か進むと、河南洛陽の境までたどり着きました。やんちゃな楊七郎は、大宋の都の汴梁城が非常ににぎやかであると聞いており、見てみたいと思いました。楊六郎もそう思っていましたが、以前に宋の軍と戦ったことがあり、人に見られるのを恐れていました。二人は相談のうえ、城内に入って人に尋ねられたら、自分たちが木易六・木易七であると名乗ることにしました。相談がまとまると、嬉しそうに汴梁城へと駆けて行きます。
汴梁城に入ると、二人は城門の前にお触れ書きがあるのが目に入りました。お触れ書きにはこう書いてあります。「我が大宋の神威を昂揚させ、楊家将を打ち破るため、特に潘虎に命じて酸棗門の外に演武台を設け、武芸を磨き、天下の英雄を募集させることにした。ともに大宋の天下が永久に続くように守っていこうではないか。」
七郎はこれを見ると、怒りで肺が破れそうになりました。六郎は弟がもめ事を起こすのではないかと不安になり、向きを変えて去っていきます。七郎は急いで兄を追いました。二人は街を通り抜けて食堂にたどり着きました。店員はおしゃべりで、二人が潘虎について尋ねると、こう答えました。「あいつですか、あの有名な潘太師潘仁美の二番目の若様で、少林寺での修業から戻ったばかりです。父親の方は朝廷で我が物顔で、息子の方はその虎の威を借りる狐、都でやりたい放題にやってますよ。最近皇帝陛下があいつに演武台を設けさせましたが、あいつは悪辣で、口では武芸を磨くと言いながら、既に何十人もの好漢があいつの手で殺されているんですよ。」言い終わるとぶんぶんと首を振ります。
七郎はこの話を聞くや、顔を真っ赤にして、六郎に対してこう言いました。「オレはあの野郎を引き裂かないと、気持ちが収まらないぞ!」二日目の朝、六郎と七郎は人の流れに着いて行って酸棗門までたどり着くと、演武台の両脇に対聯が掛かっているのが見えました。上の句は「芸は天下に冠たりて敵手無し」、下の句は「功は寰宇を蓋いて威名有り」で、「奉旨会武」という扁額があります。七郎は「あの野郎がこんな大ぼらを吹くとは、よくも舌が回るものだ。」とこっそり罵りました。六郎は弟の怒りが収まらないのではと思い、そっと彼の袖を引っ張り、演武台の北側の人気が少ない場所へと連れ出しました。
しばらくすると、潘虎は殺気をみなぎらせて台へと上り、「命が惜しくないやつはいくらでも上ってこい!」と叫びました。声が消えないうちに、一人の男がさっと演武台に跳び乗って言うには、「拙者は尤点保。わざわざお前のような無頼者を懲らしめに来てやったぞ!」彼がまだ言い終わらないうちに、潘虎は足を揚げて尤点保の急所を蹴りつけます。尤点保は落ち着いて受け流し、二人は五十数合打ち合いましたが、勝負が着きません。
六郎は注意深い人間なので、とっくに潘虎の足に仕掛けがあるのを見破っていました。彼は七郎に言いました。「七弟、私が見たところこの潘虎の脚力は平凡なものなのに、ずっと蹴りを用いている。奴は靴の中に暗器を隠しているに違いない。お前が台に上って腕比べをするならば、奴の両足に気をつけなければいけないぞ!」七郎はうんうんとうなずきました。
そもそもこの時代に武当派なんてあったのかとツッコミたくなります(^^;)