博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『刺客列伝』

2020年05月12日 | 中華時代劇
ここのところ『陳情令』『清平楽』と並行して捜狐のウェブドラマ『刺客列伝』を見てました。中国語版は第1季&第2季「龍血玄黄」それぞれ全30話ずつの計60話×35分程度、日本語版はこれを全42話に調整しているようです。

舞台は戦国時代をモチーフにした架空世界「中垣」。現実の歴史の周の天子に相当する鈞天国の英主啓昆帝が天璿国の差し向けた刺客裘振に刺殺されたところから物語は始まります。天璿、天璣、天枢、天権といった有力諸侯国の君主たちは能力ある臣下を抜擢してお互いに生き残りを賭けて駆け引きを繰り広げ、南方の蛮夷遖宿国が虎視眈々と「中垣」進出を狙います。

タイトルは『史記』刺客列伝から取っているのですが、内容はほとんど関係ありません (^_^;) また、低予算で製作されたということで、特に第1季はセットや小道具がチャチいです。戦争の経過なんかも説明台詞で済まされたりします。第2季では予算面が大幅に改善されたらしく、セットや小道具がグレードアップし、小競り合いや城攻めの場面なんかも出てきます。第1季と第2季とを見比べると、諸国同士の謀略戦という題材で構想通りに作ろうとすると最低限どのくらいの予算が必要なのかが見えてきそうです。

俳優も有名俳優はキャスティングできないということで、ブレイク前の生きのいいイケメンをキャスティングしています。更に特徴的なのは、後宮の妃嬪や侍女はもちろん街の通行人や店舗の女店主に至るまで、女性が一切登場しないということです。これは他の時代劇と見比べると異様さがはっきりするのですが、恐ろしいことに本作だけ見てると段々違和感を抱かなくなってきます。

第1季は腹心の裘振が自害して後君主が誰にも心を開かなくなった天璿、国の大事を卜占で決定し、卜占を司る太師が強い影響力を持つ天璣、君主の即位をも左右する三大氏族が実権を握る天枢、最も富裕であるが君主が絵に描いたようなバカ殿の天権の角逐と、これらの国々が共同で遖宿国に対処するさまが描かれます。


四カ国の代表者による対遖宿結盟。各国ともイケメンの君主に補佐役の老臣がつき、更に身分は低かったり出自に問題があるが、能力のあるイケメンが抜擢されるという構図となります。


誰が主役かは決めづらいのですが、天権のバカ殿執明と、天璿に滅ぼされた小国瑤光の王子で、身分を隠して執明のお気に入りとなり、復讐と故国復興を図る慕容離でしょうか。その執明も、第2季では親しい人々を亡くしたことで君主として成長を遂げていきます。一方の慕容離も故国復興という目的のためには手段を選ばずであったのが、執明に感化されて彼の友情や誠意を信じるようになります。


各国の統合が進む第2季では、西域出身で執明の側近となる子煜、新興の開陽国の面々など、新たなキャラクターも登場。

『史記』や『戦国策』に見える話を下敷きとしたエピソードなどは実のところ全くないのですが、同盟や対立といった諸侯国同士の離合集散、各国の君主が旧弊にとらわれた臣下を排除し、有能な臣下を抜擢しようとする実力主義の風潮などは戦国時代を彷彿させるというか、そのパロディと見ることもできそうです。
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