Willow's Island

since 2005

北京大学てなもんや留学記

2009年06月14日 00時48分25秒 | 

 図書館で借りた谷崎光の「北京大学てなもんや留学記」を読んだ。筆者が北京大学に留学し、学生、教師や北京市民らと接して得た経験、中国社会への洞察、などを彼女一流の感性で表した留学記である。等身大の目線で語られる中国は実にリアルで、興味深い。
 谷崎光の書いた本はどれも面白いが、特にこの本で語られている内容は、いつもよりかなり辛口だ。正直言って、この本を読んで中国に留学したい、住みたいなどと考える人がいたとすれば、本当に理解に苦しむ。(^^;) 所々で「中国人にも長所はある」とフォローを入れてはいるものの、この本を素直に読めば、中国人というのは常に自分のことしか考えず、全く信用のできない人々である、という印象しか残らない。この本に書かれている中国社会の著しいモラルの低さ、共産党の悪辣さ、などは、外国のこととはいえ怒りが沸いてくるほどだ。
 フランシス・フクヤマあたりが言っていたが、日本は「高信頼社会」に分類されるそうだ。最近はちょっと怪しくなってきたが、それでもまだ大多数の日本国民は信頼に値する人間だといえる。少しでも信頼を裏切るような企業や団体が出てくれば、新聞に報道されて徹底的に叩かれる。汚職、腐敗、背任行為が珍しいからこそ、ニュースになるのである。それに対し、中国は極度の「低信頼社会」だといえる。日本であれば大きく報道される不正など、あまりにも当たり前すぎて報道さえされていないだろう。私は去年から土地を買ったり自宅の建築を契約したりしているが、これは信頼に値する(と私が感じた)不動産屋や建築業者がいたから、安心して取引を行うことができたのである。中国で同じことをやれる自信は、私にはまったく無い。というか、恐ろしくて、とても不可能だ。
 谷崎光の著書であれば、この「北京大学てなもんや留学記」のほかに、「中国てなもんや商社」、「てなもんや中国人ビジネス」、「スチャラカ東京のオキテ」、などがお勧めである。特に「中国てなもんや商社」は80年代の中国を扱っており、現在中国との大きな違いが分かって面白い。目下、私は「今日も、北京てなもんや暮らし」を読んでいるところである。