ステージおきたま

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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

カード詐欺防止コント台本『狙いは婆さん』

2011-11-06 21:21:30 | 脚本
11月3日川西町芸文祭で上演したコントの台本を上げておこう。
最近多発しているお年寄りを狙ったカード詐欺、その手口をちょっとひねってコントに仕立てた。
実際は銀行の者とか年金機構の職員とかと騙ってカードと暗証番号を盗みとるって方法が多い。
気をつけようよ、お婆ちゃん!
それにしても、お年寄りのなけなしの年金騙し取るなんて、世の中、薄汚くなったもんだよなぁ。

狙いは婆さん

スーパーの駐車場などに設置されたATMの入り口。
婆さんBが出てくる。婆さんA近付いて、

A     あんのぉぉぉ。もしかしてお金おろしてやったか?
B     ああ、ほだけど。
A     銀行から?
B     ほだ。
A     カードで?
B     これな、これ。
          と、カードを取り出す。
A     てえしたもんだなぇ!!!いやてえしたもんだ。
          と、大袈裟に驚く。
B     なにびっくらしてっこと?
A     こったら厚紙一枚で金おろしたんだべ。なんとなぁ。
B     厚紙!?
A     おらとっても信じらんね。こがな厚紙にお札入(へえ)ってるなんてよ。財布だってこんぐれえは厚みあんのによ。
          と、財布を取り出す。
B     ああ、ほだな。不思議って言やあ不思議だな。
A     それと、あの機械ん中さ入(へえ)ってる人、大変だべね。
B     えっ?中さ入ってんなか。
A     一日(いちんち)中だもんな。お昼とかどうすんなべ。
B     そ、そ、そりゃ、中で食べてんだべ。
A     なんと!あの狭い箱ん中でなぁ!一日(いちんち)中ご苦労なこったな。お給料いいんだこてな。
B     ほりゃ銀行だもの。たくさんもらってたべ。大企業だもの。
A     ほでも、給料ええなは、銀行ん中でえばってる人だけだべ。
B     ああ、ほだな、そういうもんだ。東京電力だって、原発ん中で頑張ってる人はちいっとしかもらってねえっていうもな。
A     下請な。下請。ほだ、あん中さいる人も下請か派遣社員だべ。
B     ほだべなぁ、そんじぇねくちゃ我慢さんねもの、あがな狭い箱んなかで。
二人    ご苦労様!
          と、ATMに向かって手を合わせる。          
A     退屈しねもんだべか?
B     中で、テレビとか見てんなべ。
A     テレビか、なるほどテレビなぁ。ほでも、テレビ放送、今、休みだべは。
B     休み?テレビが??
A     ああ、夏場からこんかた、さっぱり映らねもん。シャーッて縞模様映るばりでよ。
B     そりゃ、ちでじだべ。ちでじ。
A     なにや?それ。ちでじって痔の一種か?疣(いぼ)痔(じ)、裂(きれ)れ痔(じ)、ちでじ。
B     ああ、そんなもんかもしんねえな。これまでのテレビ糞詰まりになったんだべ。
A     ああ、糞詰まりな、おら家(え)のテレビも糞詰まりなんか。ほんで映らねえなだ。なるほどな。おら、また、テレビも夏休みなんかって思ってだった。節電、節電て騒いでいっからよ。
B     たまにゃ節電も悪くねえけど、やっぱ年寄りにゃテレビだべ。韓流だべ。チャン・グンソク!いやぁ、いい男だねえ。
A     あたしゃ、嵐だね。翔くん、最高!ああ、やっぱテレビねえとな。一日、暇で暇で。
B     新しいのに換えんなねだ。
A     なんと、また、新しい機械だか!
B     まったく!新型、新型ってなぁ!
A     電話だって、ほれ、こんなにちゃっこくなっちまって。なんも遠慮すっことねえのにな。どーんと、居間に居座ってていいものを。
B     新しいことできるちゅうけど、うちらにゃさっぱりだもん。
A     ほだほだ。メールたら、文字映ってもちっこくて見えねえしな。
B     どうやって返事してええかもわからねえ。
A     孫が、「婆ちゃん、便利だろ。助かっだろ。」なんて言うけど。さっぱり!今までのまんまでたくさん。ほっといてけろ!って言いてえよ。
B     ほだほだ。おお、便利て言えば、コンビニな。あれ、便利な店って言う意味なんと。
A     ほえ~~~!あれが便利な店か?!コンビコンビちぃうから、だれかお笑いコンビがやってる店だと思ってだった。ほんねえなな。便利ちぃう意味なんか。
B     なーーーんも便利なもんか。こないだも、魚、三枚に捌いてけろって頼んだら、できねえと。無くなった魚屋ならすんのにな。
A     配達もしねしな。
B     賞味期限ぎりぎりだから、まけろって言うたら、コンビニは絶対まけないんです、と。なにお偉そうに。
A     挨拶だけは達者ださな。いらっしゃいませこんにちは。いらっしゃいませの他にこんにちは、まで付けてよ。
B     ああ、ほだ。いらっしゃいませかこんにちは、どっちかひとつにしろての。
A     いらっしゃいませって言葉には、こんにちはが含まれてんなだから。
B     そんくせ、店先でおでんまで煮てたりして。いっつも思うなよ。あん鍋ん中、釣り銭落としたらどうすんなべ?中身みんな捨てんだべか?って。
ひっひっひ!一度やってみっぺか。
A     おっかねえこと考えんでね!年寄りはほでなくとも邪魔者扱いなんだから。
B     ほだな。東京じゃ、年寄り、列車にも乗せねえようにしてっしな。
A     ほだなか?
B     改札口はいっつも閉まってっし、切符買う窓口もねえ。
A     まさかぁ!
B     切符みんな自動販売機だもんな。こないだもよ、機械に向かって行き先怒鳴ってる爺さんいたったけど、周りの衆から、爺さん邪魔だってうっちゃられたったもんな。
A     もごせーこと!
B     それどこか、今じゃ切符も売ってねえなだ。改札通る人は、なんかこう財布だかなんだかかざしてよ、すっとよ、扉、ぱたんこって開いてよ。
A     財布でなして開くなだべ?金、入(へえ)ってからだかい?
B     ほんねえな。ほだっておらもやってみたなだもん。財布こうかざしてよ、開けごま!って。
A     だめか。
B     だめだ。開かね。なっ、都会じゃもう年寄りは出歩くなってことなんよ。
A     田舎だって同じよなもんだべ。
B     ああ、ほだ。バスは、もう遠の昔に廃止になったし、75歳過ぎたら車運転すんなって言うし。自転車乗っと危ねえから止めろ、だもん。
A     ほでも、あんた、いろんなこと知っていやんな。
B     ああ、勉強してっからな。若えもんに馬鹿にされてばっかいるもんかってな。
A     なるほどなぁ。勉強なぁ。
B     ほた。勉強さんなね。これ。
          と、イヤホーンを取り出し、Aに渡す。
A     なにや、これ。
B     耳に差し込むな。
A     なんや、耳栓か?
B     ほんね。ほら、聞こえったべ。
A     な、なにやこれ?
B     石川遼君のスピードラーニング。
A     英語だか?英語勉強してんなか?
B     ああ、時代に取り残さんねえよえにな。
A     てーしたもんだ!
B     こんなんも、勉強してっこて。
          と、ウォークマンを操作する。
A     うわっ!!なんと、これ!!!
B     ほだ般若心経。
A     お経?!
B     あの世行って馬鹿にさんねえよにな。
A     お経しらねえと、あの世で馬鹿にされんなか?
B     ああ、ほだとも。あの世の沙汰も経しだいって言うべした。
A     それ、地獄の沙汰も金次第でねえか?
B     なーにことわざだってどんどん新しくなる時代だもの。ダメだよ。愚痴ってばりじゃ。
A     て言わっちぇもなあ。
B     挑戦!挑戦!!なにごとも挑戦だ。
A     孫もな同じこと言うなよ。婆ちゃんやってみろ、便利だから、って。
B     ああ、使い慣れりゃ、便利、便利。
A     ほんじゃこのカードで。
           と、財布からカードを取り出す。
B     おお、金おろすんか。簡単、簡単。
A     おら、心配だから、一度やってみせてけねか?
B     任せてけろ。
           財布から自分のカードを取り出し、ATM機に刺し込む。
B     まず、カードをこの隙間さ、差し込む。
A     ふむふむ。
B     すっと、こういう画面出っから、暗証番号を打ち込む。続き番号とか、自分の誕生日なんてダメだよ。すぐと忘れるよなのもダメだ。もちろん、人様に言ってもわかんねえ。
A     なるほど、ほんで、あんたは。
B     おらか?おらは、じぇーったい忘れない番号。
A     ええーっ?なにや、それ?
B     初恋の人の誕生日!
A     そんなん、よく覚えてやっこと!
B     忘れるもんかね。大切な大切な思い出だもの。
A     旦那さんの誕生日でなくて?
B     そんなもん、とっくに忘れた。あんた、覚えてんなか?
A     ええー、・・・忘っちゃ。
B     ほだべ。爺さんのことなんてな。
A     ほだな。近頃は物忘れひどくなるばりだ。暗唱番号たらど忘れしったらどうすっぺ。どっかに書き置きしたりした方がいいなべ。
B     ダメダメ!メモなんかしちゃ。だれかに見られたらどうすっこと。A     ほでも、ど忘れしそうだもなぁ。
B     そったら時のために、質問準備しとくなよ。
A     どんなふうに?
B     おらの場合だと、仏さんの誕生日は?って具合にな。で、こう打ち込む。
          A、知らんぷりしつつそっと覗き見る。
B     次におろす額を打ち込む。よろしいですか?って聞いてくっから、いいとこでねえよって確認を押す。っと、ほら、中の人一生懸命お札数えてっぺ。で、お待たせしました。取り忘れにご注意くださいって、はいはい親切なことな。で、お金を受け取る。なっ、簡単、簡単。ほれ五千円。
          と、お札を見せる。
A     なるほどなぁぁ。
          自分のカードを取り出し、
A     これと同じもんだべ。これで下ろせんなべ。
B     ほだよ。ほれ、見てみ、同じカードだ。
と、自分のカートを見せる。A、受け取って。
A     ほーっ!はーっ!ふーっ!ひーっ!へー!
          と、感心するあまりそっくりかえってひっくりかえる。
B     あ危ねえ!
          と、支えようとして二人もつれる。A、2枚のカードを持ち換える。
B     大丈夫だか?
A     悪(わり)いこと、悪(わり)いこと。いやぁ、あんた、てえしたもんだ!
B     なぁに、こったらこと、造作(ぞさ)ねえことだべ。
A     ほんじゃ、これ。
          と、すり替えたカードを返す。
B     ほれ、あんたもやってみろ。見てやっから。
A     ああ、ほだな。ほんじゃ、
          と、ATMにカードを差し込む。
B     暗唱番号。
A     ありゃ?
B     どした?
A     忘っちゃ。ど忘れしっちゃ。
B     なんだべ!
A     孫にあんだけ言わっちゃのに、・・・・ダメだ。思い出せねえ。
B     出直して来っこんだ。
A     あぁ、ほだな。戻って聞いてくっぺ。
B     あぁ、しっかり忘れねえよにな。質問も考えとくんだぞ。
A     あぁ、質問な。質問。ほんとありがと様。
          二人、反対方向に去っていく。と、A、すぐに現れて、カツラをとって正体を現す。
A     ちょろいもんだ、婆さんなんて。さて、すり替えたカードで、婆さんがため込んだへそくり、ごそっといただくか。(客席に向き)詐欺の手口はあの手この手、騙さんねえよにな。気つけろな。
                    了



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