ステージおきたま

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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

「顔パンツ」コントで先取り!

2021-12-09 10:15:16 | コント

 顔パンツが話題だなぁ。今朝のモーニングショーでも取り上げてたしね。どうも、パンツって言葉にゃしっくりこないが、若者たちの気持ちはわかるぜ。もう2年近くマスク着けて暮らしてるからね、外したくない、他人には見せたくない、目から下は隠したい自分って感じ、当然かもしれないな。

 たしかに、マスクして目だけ出してると女性はみんな綺麗に見えるし、男ならイケメンだ。へぇそういうもんなんだ?!って、気づいたのは2か月前。あっ、これでコント1本書けそう。

 で、書いたねぇ、上演しちまったねぇ。

 「リアルが怖い=マスクを外せない女」

 ちょいと先取り、ふふふ、時代?を先取りしたぜ、ってそれほどのことでもないか。

 もっとマスクを外せない、外さない女たちの気持ちやマスク社会の現実も深堀りできればよかったぁ、って反省はあるが、まっ、これはこれでショートショート完結コントとして面白いんじゃないかな。

 短いものだ、ぜひ、目を通してくれよ。

 あっ、このコントの前提。デルタ株の終息後、新型クサイ株、新型出現は当たったがクサイを飛ばしてオミクロンと名付けるとは思わなかった、外出時は全身を覆う防護服の着用が義務付けられてる近未来という設定だ。

 

エピソード⑤「リアルが怖い=マスクを外せない女」

            防護服を着、マスクを着けた女Aが上手から歩いて来る。同じく女Bも下手から出て来る。どちらも人目を避けるように、口元を隠しうつむき加減だ。二人、ほぼ同時にお互いに気付く。舞台中央、二人、素知らぬ顔で一旦通り過ぎ、如何にも忘れ物を思い出したかのように元来た方へ戻る。すれ違う際、ちらりと相手を覗う。また、行き過ぎようとするが、二人同時に立ち止まる。時計を見たり、誰かを探す振りをしつつ相手に視線を飛ばす。二人、同時に、

AB    あの、

AB    はい。

AB    どうぞ、お先に。

A     それでは失礼して、マスク?

B     私も聞きたかったの、マスク?

A     息苦しくしはないこと?

B     マスクよりこの服。

A     そうよねぇ、全身覆うなんてねぇ。

B     こんなの不自然だよね。     

A     いくらクサイ株が強力だからって、全身防護服は行き過ぎだわ。

B     マスクで十分。後はその人の心がけよね。

A     でも、世間じゃマスクが外せてよかったって、評判いいんですってよ。

B     信じられないよ。絶対、マスクだってぇ。

A     私もそう思う。

B     いやぁ、マスク外さない派に出会えるなんて思わなかったよ。

A     ほんと!

B     もう2年もマスク着けて暮らしてるんだもの、マスクなしの生活なんて考えられないよ。No Mask No Lifeだよ。

A     私も、欠かせないわ、マスク。いつだってしてるのよ。

B     おっ、同じ、同じ。外すのなんて、食事と洗面の時だけ。

A     立派だわぁ。尊敬しちゃう。でも、お化粧とかの時は外すんでしょ。

B     とんでもない!化粧はマスクから上だけ。特に目の界隈はもう念入りに化粧しちゃう。だって、マスク着けてたら、決め手は目だものね。口元なんてどうでもいい。

A     そうよねぇ。

B     マスクから上の顔半分、自信あんのよねぇ。

A     ええ、とてもきれいだわ。

B     ありがとう!そう言ってもらうのいっち嬉しい。てぇか、下半分はからっきしなんだよね。

A     あら、歯並び悪いとか?

B     ううん。

A     ニキビ?

B     ないって。

A     総入れ歯?

B     そんなわけないだろ。

A     うーん、じゃあ、これ。

            と、頬を切る仕草。

B     もう、いい加減にしてよ。自信がないの。ぜんぜんイケてないんだもん、とても見せらんないよ。

A     でも、コロナ流行る前は、マスクしてなかったんでしょ。

B     自覚が足りなかった。

A     そうなの?

B     マスクして顔見るじゃん。毎日、毎日。しょっちゅう見るわけ。で、おっ、まんざらじゃねえぞ、って。

A     うんうん。

B     シャドー、こう入れよ、とか、眉のライン細くするとか、コンタクトもその日の気分で変えたり。どんどんメイクも進化して行くわけよ。すると、ほったらかしの下半分の不細工とは格差社会になっちゃうでしょ。もう、どんどん格差拡大するばっか。ますます、見るのも嫌になる。マスク外すなんて、ぜぇーったい!あり得なぁぁい。

A     美容整形するとかは?

B     してんの?

A     (やや狼狽して)私は、できない、って言うか、しちゃまずいって言うか。私のアイデンティティ失くしてしまうもの、整形したりしたら。

B     へぇ、自信あるんじゃん。

A     ま、まあね。

B     だったら、マスクなんて無しで過ごせばいいのに。

A     いえ、これも大切な私の一つなの。

B     わかった!マスク業界の人!ねっ、当りでしょ?

A     えっ?

B     夢よもう一度!ってやつ。去年の今ごろはバカ売れでウハウハだったとか。でも、それにしちゃ、地味な布マスク、だよねぇ。それにちょっとサイズ大き過ぎない?

A     私もあなたと同じ、しっかり隠しておきたいの。

B     だったらさぁ、もっとカラフルでかっこいいデザインのものした方がいいよ。私さぁ、たぁくさん、持ってんだ。

            と、ポケットから何枚も取り出して付けてみせる。

B     ねっ、かわいいでしょ?

A     かわいぃぃぃ!マスクの魅力で魅せるていうのも有りね。でも、仕事や友達同士ならいいけど、恋人できたらどうするの?マスク、着けたまま?

B     うーん、そこよねぇ、問題は。

A     君の素顔が見たい、なんて言ってくるわよ。

B     そうそう。キスだって、マスク越しじゃね。

A     難しい?

B     うん、まっ、男しだいだね。こいつなら、見せてもいい、見てもらいたい、って人が現れたら、そんなときは、潔く、さっと外す。

            と、一瞬、マスクを外してみせる。

A     なによぉぉ、美人じゃないの!不細工なんてとんでもない!

B     ありがとう。ちょっと自信になった。で、あなたは、どんな時外すの?

            女A、髪を顔に垂らして、マスクに手を掛ける。

A     私、きれい?

            その口元は大きく裂けている。口裂け女だっ!

B     き、き、きれぇぇぇぇぃ!

            と、叫んで逃げ去る。A、客席に向けてもう一度。

A     私、きれい。

            不敵に笑う。

 


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