春って、とっても豊かなイメージだけど、食卓に関しては、かなり窮迫する時期なんだなぁ。保存してあったキャベツや白菜、大根、そろそろ底をつくころだし、かといって畑はこれからが種のまき時、残っているのは、冬越しのキャベツと白菜だけ。これもあっという間に董立ちしてしまうから、ここ数週間食卓を支えてくれるくらいだろう。とは言っても、雪の下でよくぞ生き延びてくれた。最初の春の恵みとしてありがたくいただくことにしよう。
白菜は早くも伸び始めた花を周囲の柔らかい葉とともに刈り取る。せっかくなので、細かく刻まず葉は一枚ごとに、董はそのまま調理する。まずは味噌汁。白菜と若葉をたっぷり、それに油揚げを加えた。野草と違ってくせやえぐみはまったくない。物足りないといえば、物足りないが、歯ごたえの柔らかさはいかにも春の息吹だ。一杯の汁椀に株一つ、贅沢にいただいた。
キャベツの方も、大きくなることを期待して欲をかくと、あっという間に花が咲くので、そろそろ収穫時だ。小屋で保存した数個とともに、これから数週間、食卓を彩ってくれるだろう。
有機農業の先輩から大量のシイタケをもらった。これは別に旬ではない。加温ハウスで育てたものだ。収穫を切り上げたらしく出荷できないくず物がたくさん出たからと袋いっぱい持たせられた。とてもくずとは思えない上物ばかり、一人でそんなに食べられないから、と断ったら、余ったものは干しシイタケにすればいいこんだ、とのアドバイス、なるほどそりゃそうだ。もらってきた。
それにしても、多い。どうしよう。干すには小さいものもある。料理に使うって言ったって、高が知れてる。なんか、大量に捌く方法はないか。そうか、佃煮はどうだ。甘辛く煮詰めておけば、当分はちょっとしたお菜にぴったりだ。時間がないとき、料理するのが面倒なとき、それがあれば、なんとか食いつなげるだろうし。ってことで昆布も一緒に煮込んでみた。正月のお煮しめよりやや濃い目の味付け。うん、いける。シイタケの風味と歯ごたえ、なかなかの逸品に仕上がった。一鍋煮たので出来上がりはどっさり、半分は容器に入れて冷凍することにしよう。
乏しい畑の恵みを慈しみつついただいていく。これが我が家の、ていうより僕流の食卓術だ。