ステージおきたま

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裏方は大切なトレーニング:東北学生音楽祭

2013-02-11 12:27:31 | 教育
 『東北学生音楽祭』も今年で9年目になった。映画『スイングガール』を記念して毎年行われているこの音楽祭も、さすがに9年目ともなると、映画の記憶も薄れ内容もややマンネリ化して集客もままならなくなってきているようだ。

 置農演劇部は例年このイベントを裏方で支えている。今年も受付とピンスポットと舞台転換スタッフを担当した。数年前まではプラザから出る舞台監督も全体をしっかり把握し、さらに演劇部顧問が先頭に立って各ステージの準備を行ってきた。しかし、最近は部員たちにほぼ任せきるようにしている。毎年の行事なので2年生はすでに経験していることと、演劇部の質が上がってきたことによる。

 今年も、受付の責任者に副部長、舞台スタッフの責任者には先々舞台監督をする可能性のある生徒とトラックの積み込み等で中心になる男子生徒の二人を舞台上下の責任者に指定した。この二人がそれぞれの団体の椅子と譜面代の配置をしっかりと頭に刻み込み、スタッフの部員たちを指揮してステージ上を転換する。

 途中慣れないが故に持ち場を離れたり打ち合わせを忘れたりという失敗はあったが、ほとんどミスもなく、見苦しい動きも見られずスムーズに演奏会を仕切ることができた。舞台監督の館長さんはイベントの全体統括が忙しく舞台については演劇部員の方が熟知しているという形で、会館のスタッフとしっかり打ち合わせながら見事に進行することができた。仲間がリーダーということもあって他のメンバーも注意して指示を聞きそれぞれが自分の任務と全体を頭に入れて動けた。

 やはり生徒を信頼し多少のミスには目をつぶりつつ任せて行くということが大切なのだと、当たり前のことを改めて実感することができた。自分たちがするしかないとわかれば、生徒たちはその能力を傾注して任務に取り組むということだ。ただ、誤解していけないのは、放任するということとは違うということだ。常に近くに寄り添い、全員の動きをチェックすることが顧問の役割だ。小さなミスが大きな失敗につながらぬよう指摘して上げることや、時には立場について厳しく注意することも必要になる。

 今回も朝の8時20分の集合・ミーティングから、6時の片づけまで10時間近く、立ったままでの仕事遂行を厳命した。次々に舞台袖に来て待機する出演者にだらしない格好を見せて意欲をそぐことのないようにということ、きりっとした態度で舞台を仕切る姿で演奏者を応援しようという意図からだが、他にもこの程度の立ち仕事を苦にしない精神力と体力を将来のために身に付けてほしいとの願いもある。置農演劇部員の場合ほとんどが将来製造業で働くことになる。その現場はこの程度の立ち仕事は当然のことだからだ。

 昼食の休憩25分間だけ座るという辛い1日だったが、部員全員きつさを乗り越えて仕事しつづけた。以前は見つからぬ所で休んでいたりだらだらと椅子に寄りかかったりという部員も見られたのだが、ここでも、部員の意識の高まりが確実に感じられた。ただ、舞台の途中休憩15分は僕の位置から遠い上手で全員座っていたけど、まっ、そこは見て見ぬふりをした。もちろん、顧問の僕もKも100%立ち放しだった、当たり前だけど。

 こうやって生徒たちは自分自身を鍛えながら、仕事や適切な動き、振る舞い、礼儀、言葉使いを覚えていく。裏方仕事はこの点とても役に立つ職務だと思う。人目につかない部分で、出演者のために行動する。先を見通す力、全体を思い描く想像力、出演者や観客への気配り、舞台スタッフとの適切なコミュニケーション、どれをとっても高校生が普段身に付けにくい力だ。だから、置農演劇部は裏方仕事を嫌がらない。話しがくれば、ためらうことなくお引き受けする。町の夏祭りもこの音楽祭も。今や置農演劇部なくして町のイベントは成り立たないとまで言っていただけるようになった。そのような評価やお褒めの言葉、感謝の言葉が、さらに生徒たちの気持ちを引き締め町や人々に役立つことの気持ちよさを得ていくことにつながっている。

 さて、今年取り組んだ新しい約束事。それは学校指定ジャージの上下でスタッフ仕事を行うということだ。昨年までは黒衣装でよいとしてきた。しかし、これだと黒とは言いながら結構目立つジャンバーやシャツを着てくる者が少なくなかった。高校生のお洒落だ。どんなところでも人と違った格好で目立ちたい、なかなか根強い高校生の志向だ。でも、これでは一切目立つことなく黒子に徹するという黒衣装の意図に反する。裏に徹する時は徹底する。低次元の個性表現など超えたところで骨太の個性を身に付けよう、これが今年のチームの目標でもある。外から見れば多分どうでもいいことのように思われるかもしれない。でも、こういう小さな積み重ねが、定期公演や大会に向けた稽古の中で効いてくる。高校生にとって、集中する!熱中する!ということは、決して当たり前のことではないからだ。常に意識が携帯やお洒落に引きずられる今の高校生、せめて部活動の時間だけでも、その意識を舞台、演劇という一つのことに向ける経験をさせたい。そのために、傍目にはくだらぬことにも気配りしていかねばならないものなのだ、高校の部活動というものは。


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コメント (4)
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