泡 盛 日 記

演劇人(役者・演出家)丹下一の日記です。

井上さんの「変身」ーー「舞台人」の神髄にふれた

2015-04-06 14:53:32 | 丹下一の泡盛日記
昨日、井上弘久さんの朗読演劇と名づけられた独り舞台、カフカの「変身」を観た。
正確に言うとウッドベースといくつかの音具を使うミュージシャンの吉田水子さんとのデュエットのような。
素晴らしかった。
休憩を挟んで2時間半と長いパフォーマンス。
「朗読」というが原作のことばを(若干のテキストレジはあるものの)すべて覚えて演じた。
「変身」を読んだのは高校生の頃だったが、井上さんの身体を通して紡ぎだされる「ことばたち」を聴きながらどんどん場面を思い出している。
本を読むよりも鮮明に「変身」のことばと世界が身体に迫ってくる。
さすが井上さんだ。

この頃「俳優」に二通りあるような気がしている。
世間で「俳優です」と言うと「いつテレビに出るんですか?」と問われたりするように、カメラの前で演技する「俳優」がいる。
周りを様々な機械に囲まれている。
アップになったり引きになったり、機械に「助けられて」場面を創る仕事。
もちろん技術も含めて大変な仕事だと思う。
そして、舞台俳優/役者という、人前に身体だけで立って時間を紡ぎだす「俳優」。
この両者は全く別の作業に思えるようになってきた。
ただ、最近の若い「舞台俳優」たちはなんだか専門職のようになっていて、照明や音響、大道具の体験がなかったりして驚く。
井上さんのように様々な事を体験、経験して来た人と区別したいとも思うくらいだ。
総合的に、そして全身で「演劇」と向かい合っている井上さんのような人は、舞台人とか演劇人、と呼べばいいのだろうか。
そういえば芥正彦さんは「演劇家」と自称していたっけ。
たんに「俳優」と言いたくない。
そんな舞台人の神髄を見せていただいた公演だった。



その後、江戸馨さんのお宅へ。
恒例の花見の会。
着いたのがだいぶ夜遅くだったので一人で公園で夜桜見物。
「江戸組」の役者たちに夫の作家・奥泉光さんも加わりわいわいと楽しい時間だった。
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