JR東海の今後の経営戦略について、
葛西敬之会長の講演をききました。
8月5日、東京で内外情勢調査会主催による、JR東海代表取締会長の葛西敬之氏の講演会があり出席しました。
葛西会長の講演要旨は、「新しい高速鉄道の世紀」と題し、1.JR東海の創業の使命 2.JR東海のユニークさ 3.東海道新幹線の発展の軌跡 4.超伝導リニアによる東京-名古屋間のバイパス建設 5.N700-Iと超伝導リニアのトータルシステム輸出でした。
この中で葛西氏は、JR東海は民間の採算性の中で実験などが出来る政界で唯一の鉄道会社と胸を張り、以下のような話しをしました。
国鉄分割民営化以降、JR東海は3.7兆円の設備投資をした。
その内訳は、年間平均、国鉄時代の約倍の新幹線に1048億円、在来線に353億円、実験等に285億円である。
国鉄時代の借金を約5.3兆円引き継いだが、残金は約3.2兆円となっている。
こうした中、毎年約3000億円の利益が出るが、今後これをどの様に投資して行くか、以下の3点を考えている。
1.維持発展のために
約1100~1200億円程度。
2.東京~名古屋間のリニア新幹線整備。
3.旧国鉄時代の借金返済。
(金利が上がった場合は、早期返済)
この内、維持発展についてはローカル線の赤字補填とともに、N700系の開発により速度220キロから300キロで走行出来るよう環境への配慮も含め利便性を図って来た。
また、品川駅の新設に1000億円を使ったが、年約500億円の増収となり2年間でもとを取ることが出来た。
また、駅周辺に多くのビルが出来たことは、地域振興に貢献出来たと思う。
リニアについては、国鉄分割民営化後、山梨の18.4キロの実験線で様々な実験を行い時速581キロを具体化した。磁気の影響も実験により全く問題はない。
今後は3250億円をかけて、実験線の42Kmへの延伸を4年間で完成させるとともに、東京~名古屋間のバイパスを自己負担で行うための手続きを行っている。
長野県の意見が二つに割れているが、一県一駅と直線ルートが最も合理性が高い。
迂回するルート(Bルート)は、60Km距離が長くなり維持コストが年間190億円高くなるばかりか、何よりも用地買収がネックとなり一軒でも反対すれば全てが無になり不可能に近い。おのずと合理性を考えればルートは絞られて来る。
リニア新幹線バイパスの整備効果は、東京~名古屋間の時間短縮となり、リニアを利用すれば名古屋で15分の乗り換え時間をみても大阪方面へは45分早くなる。
その分、東海道新幹線は「のぞみ」は減らすことになるが、現在「こだま」や「ひかり」が止まっている駅を増やすことが出来、利便性が高まり利用者が増え、高速道の混雑解消にもなる。
国内では鉄道車両の市場は年2000億円であり、5社が競合している。また、鉄道部品の市場も年2000億円と言われていて、JR東海は海外へのN700-Iと超伝導リニアのトータルシステム輸出のプロジェクトチームを作り取り組んでいる。
中でも、新たな専門の鉄路を整備するという意味で、アメリカが有力と取り組んでいる。
この講演の後、予定の時間内で時事通信と内外情勢調査会諏訪支部長が質疑を行いましたが、葛西会長は、リニア新幹線は開業単年度から黒字となり現在の全体で5%程度増の旅客数を見込んでいる。ルートは、いかに経済性と合理性を持って行うか、60Kmの延長と用地交渉に要する時間が問題であり、合理性のあるところに落ち着いていくと強気の姿勢でした。
この葛西会長の講演をお聴きし、私は、JR東海の「民間会社」としての利益優先の企業論理を強く実感するとともに、国鉄の分割民営化の経緯と仕組みや、地域の公共交通としての在来線への投資のあり方、リニア新幹線整備が依拠している全国新幹線整備法の見直しは出来ないか等々、今後、対応を考えさせられました。
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