Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

共感は悪

2023年12月09日 | 映画など
岸善幸監督「正欲」を見る。
「観る前の自分には戻れない」という
本作のキャッチコピーは言い得て妙。
知ったかぶりをしながら「多様性ってさあ」
「ダイバシティーとは」なんて声高に言ってる人は必見。


新垣結衣という人を、実はあまり知らない。
いや、まあ、CMでの姿はよく目にしているけれど、
この人の映画やドラマをほとんど見たことがなく、
ほとんど初めて本作で彼女の演技や佇まいに触れる。
劇中、ジェンダーバイアスかかりまくりの
暴言を吐く女性に向かって
憎悪の目を向ける彼女に戦慄し、
これはただ者ではないと。彼女も映画も。

そんな彼女が本作のクライマックスで
対峙(対決)するのが稲垣吾郎。
実はこの人のこともあまり知らなかった。
いや、もちろん元SMAPの人で他のメンバー同様、
芸達者な人だという認識はあったけれど、
これほど尊大で優生思想丸出しの男が
似合うとは思わなかった。けだし名演だと思う。

観客は登場人物のうち誰に共感するか。
大きく分けると、新垣か稲垣かのどちらかになるだろう。
いわゆるマイノリティーな性志向を持つ新垣が、
やっと出会った仲間である磯村勇斗との間を裂こうとする稲垣に対し、
それのどこが悪い。私たちにも生きる権利があるんだ。それを奪うな。
という力を突き刺してくるのだ。
揺らぐ稲垣。おそらく観客の多くもそうだろう。

マジョリティーだろうとマイノリティーだろうと、
それぞれの人間が持つそれぞれの
「正しい欲」について思いを馳せることを目的にした
メッセージ映画だと思う。
新垣の。磯村勇斗の。
稲垣の息子を演じた子役の目の力はそのためにある。

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