Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

喪失と率直

2022年11月17日 | 日々、徒然に
大森一樹監督は、
際立った個性のある映画監督ではなかった。
思想やテーマをことさらに主張することもなかった。
映画が映画であることの快楽を再現すべく、
やさしく穏やかに娯楽作を撮り続けた人だと思う。
いつまでたっても万年映画青年、という佇まいだった。
そんな大森監督がいつのまにか70歳になっていて、
亡くなってしまったのは、かなりの喪失感がある。

ヒポクラテスたち(1980)

やっぱりこれが代表作になるのだろう。
医学生だった監督の経験を活かした青春群像。
ぶっきらぼうでありながら、
いつポキッと折れても不思議ではない医学生を、
古尾谷雅人が好演していたと思う。
落第生の柄本明も若い。そしてキャンディーズ解散後、
俳優として復帰したランちゃんの可憐で儚げな存在感。
こういうのを青春映画というのだろうし、
「アメリカン・グラフィティ」的なラストの切なさとともに
忘れがたい名作中の名作。

恋する女たち(1986)

大森監督最大の功績は、
斉藤由貴を開眼させたことだと思う。
単なる一人の美少女アイドルが、
映画史に残るコメディエンヌとなり
スクリーンに躍動したのだ。
意中の男の子に振られて、口を開けて
思い切り笑う斉藤由貴のなんともいえないおかしみ。
続く「トットチャンネル」
「『さよなら』の女たち」とともに、
忘れがたい名作中の名作。

シュート!(1994)

大島司の同名マンガの映画化。
SMAP主演。公開当時はJリーグブームで
人気マンガが原作、超人気アイドルが主演と
これは絶対お客さん入るだろう、
と保険をいくつもかけた上でつくられた映画という印象。
でも、そんな大人の事情など軽く吹き飛ぶ素晴らしさ。
非業の死を遂げる伝説のミッドフィールダーを
キムタクが演じ、実に美味しいところを持っていく。
主役は中居くん。他の4人とのアンサンブルも見事。
これまたまっすぐな青春映画で、
大森監督の最高傑作かもしれない。
ともあれ名作中の名作。


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