Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

哀しくてやがておかしく

2009年04月20日 | 映画など
小津安二郎監督『早春』を見る。
『東京物語』と『東京暮色』の間に撮られた本作は、
小津の中でも地味で、あまり語られていない作品だが、
切なさの中に滲み出てくるユーモアに酔いしれる2時間20分。


早春(1956)

丸ビルの会社に勤めるサラリーマン・杉山(池部良)が、
同僚のOL・千代(岸恵子)といい仲になってしまう。
ふたりの関係を疑う杉山の妻・昌子(淡島千景)。
この三角関係を軸に、杉山が働く会社の同僚たちや
昌子の母親(浦辺粂子)とのやりとりなど、
さまざまな人間模様が描かれる。

あくまで物語は淡々と進み、
登場人物たちは、心の内側にある葛藤や嫉妬、
哀しみや欲望などを押し込めたまま、
不倫をしたり、ハイキングに行ったり、
うどんを食べたり、葬式に出たりする。

人間、本当に悲しいときは、笑うんです。

小津は、役者に演技をつけるときには、
こういう言葉をかけたらしい。
実際、本作でも杉山の同僚が死ぬエピソードがあるのだが、
訃報を聞いても、彼は大して動じず、
そうか、死んだか。と呟くだけである。

浮気をしてしまう主人公の杉山は、
妻に気兼ねをしながらも、
千代に翻弄されてしまう優柔不断さが、
妙なおかしみを醸し出す。

人間の行動というものを、端から見ていると、
どうも滑稽に見えてしまうことがあるのだが、
小津の映画は、どれを見てもそんな感じがある。

味わい深いというか。何度でも見たくなる。
5年後ぐらいにまた見たいものだ。





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