吉田秋生「詩歌川百景」第2巻を読む。
1年半ぶりの新刊だから、
すっかり内容を忘れているのはいつものこと。
第1巻だけでなく「海街diary」の最終刊に
収録されている番外編が本作のプロローグになっているので、
そこから読み直す。おかげさまで作品の世界に
どっぷり浸かることができました。
主人公の和樹は、実母に棄てられた過去がある。
大叔父夫婦に育てられたあと、
老舗の温泉旅館「あづまや」で湯守の見習いとして働いている。
和樹の幼馴染みの類と剛、
そしてふたつ下の女の子で
あづまやの大女将の孫である妙(たえ)。
この3人を中心に、片田舎の温泉街で
濃厚で複雑な人間関係が渦巻く。
きりっと一所懸命生きている人もいれば、
欲望のおもむくままに暮らしている人もいる。
彼ら彼女らは悪人ではないが善人とも言えず、
みんなそれぞれの思いを秘めて生活している。
そうした人々の思いが
たまにほとばしる場面があるのが吉田秋生の真骨頂。
その絶妙な語り口で、あるときは笑わせつつ、
あるときはしんみりさせながら、
狭い温泉街に生きる人たちを描き切ろうとしている。
まだ2巻で、
このあとどれくらい続くかはわからないが、
「海街diary」との物語の繋がりもあり、
昔からのファンはみんな喜んでいると思う。
1年後か2年後に3巻が出たら、
どうせ、きれいさっぱり忘れているだろうから、
そのときは最初からまた読み直します。
それはそれで楽しいというか。
記憶力が衰えても、悪いことばかりではないのです。