沖田修一監督「子供はわかってあげない」を見る。
田島列島の原作が面白かったので、
本作もきっと良作だろうと思っていたら、
予想以上の素晴らしさ。
夏の陽差しがまぶしくて、この心優しい青春映画に
おっさんは感じ入ってしまいましたよ。ほんと。
上白石萌歌演じるサクタさんは
部活の水泳とアニメに夢中な高校生。
あるときプールサイドから校舎の屋上で
彼女が好きなアニメの絵を描いている
もじ君の姿を見る。
アニメの話でそこそこ盛り上がり、
サクタさんともじ君は、恋愛モードに突入かと思いきや
彼女の生き別れた実の父親を探す物語になっていく。
超能力があり、新興宗教の教祖となっていた父は、
今や能力が枯渇してしまったようで、
海沿いのひなびた整体院で働いていたことがわかる。
サクタさんとその実父のあいだには、
微妙な距離感がありつつも、
父がご飯をつくり、一緒に食べる場面が積み重ねられるところ。
整体院一家の孫の女の子に
サクタさんが水泳を教えるところなど、
一時的ではあるけれど、
ほぼ家族と言っていいコミュニティができあがる。
彼ら彼女らの背景には、眩しい日差しと海。
なんとも幸福感に満ちた場面が続き、心地良いことこの上ない。
「カムカムエヴリバディ」と本作を見て、
ようやく上白石姉妹のお姉さんがあっちで、
妹さんがこっちというのがわかりました。
実の父親を演じた豊川悦司や
母親役の斉藤由貴、継父役の古館寛治らも好演で、
高橋源一郎が古書店の店主だったりするのも楽しい一作。