Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

遠い日の寂寥

2022年01月07日 | 日々、徒然に
The Last Picture Show(1971)

Paper Moon(1973)

ピーター・ボグダノヴィッチ監督が亡くなった。
82歳だったらしい。

どうしてくれるんですか。
中学生のときに「ラスト・ショー」「ペーパー・ムーン」
という傑作を見せられたせいで、
世の中になーんも役に立たない
シネフィルになっちゃったじゃないですか。
あなたのせいですよ、ボグダノヴィッチ監督。

そもそもボグダノヴィッチ自身が
ものすごいシネフィルであり、
映画批評からキャリアをスタートさせ
ジョン・フォードやオーソン・ウェルズへの
インタビューをものにしたことでも有名だ。
トリュフォーやゴダールに少し遅れて来た人、という感じがする。

若くして上記の2本の傑作をものにして、
その後はあまり作品が公開されず、忘れた頃に
「マスク」とか、最近でも「マイ・ファニー・レディ」という
ハイテンションなコメディを見せてくれたっけ。
未公開作だと「ラスト・ショー」のヒロインだった
シビル・シェパードを主役にした「Daisy Miller」とか、
彼女とバート・レイノルズが共演した
「At Long Last Love」という作品があるらしい。
日本では正当な評価がされていない監督なのかな、と。

ともあれ、「ラスト・ショー」で描かれた、
アメリカの片田舎の街で
繰り広げられるどん詰まりの青春群像。
街に一軒だけ残された映画館の最後の上映が「赤い河」で、
館主がベン・ジョンソンという泣けるキャスティング。

「ペーパームーン」のノスタルジックで
スラップスティックなロードムービー。
人を騙して聖書を売りつける詐欺師のライアン・オニールと
ひょんなことから彼と行動を共にする少女のテイタム。
実の父娘が疑似の親子を演じる面白さ。ふたりの掛け合いの楽しさ。

両作ともモノクロで撮られたのもあるのだろう、
淋しさと懐かしさがにじみ出るような撮影が忘れがたい。

あと1本。
「ペーパー・ムーン」のライアンとテイタム父娘が再共演し、
バート・レイノルズが出た「ニッケルオデオン」も好きでした。
アメリカ映画界の創世記を描いたバックステージもの。
D・W・グリフィスの「国民の創生」にオマージュを捧げていて、
これまたノスタルジックで楽しくも淋しげな映画だった。
同じくグリフィスを描いたタヴィアーニ兄弟の
「グッドモーニング・ビロン!」と双璧を成す佳作で、
どこかの名画座さん、この2本立てをやってくれませんか。


Nickelodeon(1976)

ボクダノヴィッチ監督、あなたのせいで
こんな体たらくになっちまいましたけど、
あなたのおかげで、生かされているとも言えます。合掌。

コメント
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