Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

耳と心をすませば

2022年01月18日 | 読んでいろいろ思うところが
いとうせいこう「想像ラジオ」(河出文庫)を読む。
昨日が阪神淡路大震災の日だと思ったら、
3.11もまたやってくるんだな。
そういえばせいこうさんのこの本、読んでいなかったな、と。


この小説の語り部は“DJアーク”。
彼はリスナーに向けて、
とりとめのないお喋りをして、音楽をかけ続ける。
たとえばモンキーズの「デイ・ドリーム・ビリーバー」を
かけると言いながら、リスナーの脳内には
清志郎率いるタイマーズの
日本語ヴァージョンが鳴ることもあるようだ。

DJアークはスタジオにいるわけではない。
周りにマイクもターンテーブルもない。
彼がいるのは、山の中に立つ
1本の杉の木のてっぺんなのだ。

あの3.11以降、DJアークはこの木の上から、
想像の電波に乗せて、自らの思い、家族への思いを語っていく。
その言葉をキャッチするリスナーたちも
閉じ込められた建物の中や、水没したクルマの中にいながら、
自分たちの人生に思いを馳せていく。

死者の言葉を聞くということは
こういうことなのかもしれない。
3.11に限らず、それなりの年月を生きてきた人なら、
DJアークとそのリスナーたちの言葉を
自分に重ね合わせながら、
今は亡き人たちの姿や言葉を思い起こすことだろう。

軽快でリズミカルなDJアークの語りは、
ラッパーでもあるせいこうさんならでは。
小説の文字を追いながらも、音を聞いている感覚になる。
やっぱり聞く力が卓越しているんだろうな。
以降、せいこうさんが東北の人たちの言葉に
耳を傾けていくのも納得できるのです。

コメント
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