桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

壱万円

2008-08-21 | Weblog
あれは結婚前、連れ合いの子供と食事をしたことがあった。まあ挨拶みたいなものだったが、俺は二人に「アナタたちの親になる気はないし、なれるとも思わない。少し親しい親戚のオジサンが出来たくらいに考えて」と言ったように思う。
あれから9年、そんなに話す時間もなかったが、それでも息子のアキラとは、かなり一緒のときがあり、やっと「アキラ」と呼び捨てにできるようになった。
お盆で水戸へ行ったらば、連れ合いの恵子さんが「これ、決定のお祝いだそうです、アキラがくれました」と、壱万円を見せた。
昔の俺は全く金にだらしなくて、生活なんて出来なかったし、ダメだったが、一人暮らしのアキラは、頑張りながらも、毎月、月末になると金欠病になるらしいことを聞いていたので、かなり驚いた。嬉しかった。
「早く渡したかったが、やっとボーナスが出たから」とのことらしかった。アキラの日常を知ってるだけに、本当に嬉しかった。
俺には家族と呼べる人たちがいる。母と思う人もいる。でも、同じ屋根の下に暮らす存在として、結婚相手以外に家族は持てないと思っていたが、もしかすると、恵子さんとの結婚生活が続けば、俺も家族を持てるかも知れないと感じた。
でも、娘は苦手だなぁ。他人ならば、平気で呼び捨てするのに、友達になってしまうのに、恵子さんの娘とは、どう付き合っていいか判らない。変だよね。