雑誌の記事に「笑芸論」が載っていて興味を持ち書店で購入。話し方と同じように高田さんの言葉がポンポン飛び出て飽きない。こう言ったら失礼だが、ギョロ目が苦手で高田さんへの好感度は低かった。人は見かけではないのは承知しているが、苦手なものは苦手。表に出るよりは裏方での才能発揮がいい。だけどこの本は別。もっとも本は裏方作業のひとつなのだからやはりここでの才能は存分に発揮されているし好感度が一気に上がった。だからってあちらからすれば、なんだいそれがって話。映画監督の故森田芳光さんとは大学の先輩後輩の間柄で、森田さんが落研に入りたくても入れなかった過去の思い出話は面白かった。急逝されたので、きちんとしたお別れもなかったようで高田さんはかなりショックを受けられたよう。後輩を亡くすのはどんな状況であっても心が打ちひしがれる思いだろう。彼自身も不整脈で突然倒れ、心肺停止が8時間にも及んだ経験者。その経験があればこその言葉もあるようで、読み進むのは楽しいが終わってしまうのが悲しい気も少しする。
全体的には暗い印象の映画。だけど、笑顔が素敵な夏目雅子さんが登場すると画面が一気に明るくなる。不思議な人だ。若くして亡くなったから余計にそう感じるのかも知れないが、年を取る姿を見たかった。カラッとしていて気風がいい。スタイルは抜群だし、セリフもハッキリしていて聞き取りやすい。頑張ってセリフの練習をしたのだろうな、と思わせる素人のような初々しさもある。亡くなった当時、多くの俳優仲間や監督が彼女の死を悼んだ。その気持ちがこの映画を観て、よく分かった。彼女以外の出演者も個性的で味のある人たちが多い。津川雅彦さんの嫌らしい感じや朝丘雪路さんの妙な色気。名古屋章さんの豪快な笑い、大坂志郎さんの控え目な演技、陰湿で粘っこい渡瀬恒彦さん。それぞれが上手く絡み合って素晴らしい作品に仕上がった。派手なドラマ展開はない。ラストで夏目雅子さんが何事もなかったかのように、ケラケラと笑いながら日傘を手に歩道橋の階段を下るシーン。何気ない姿だが、とても印象に残った。
カッコイイ女性、と思っていた野際陽子さんだが母親としては案外、ダメだったのかも。女優として活躍していた頃に母になり子育てを、と思っても時間の制約もあり思うような子育ては出来なかっただろう。今回の密葬でも一応、娘が喪主となったが母子の間には他人にはうかがい知れないものがあったようで。芸能界に生きた人の多くは、子どもにも同じ道を歩ませる。上げたらキリがない。古くは松山兄弟、川口兄弟、そして高嶋兄弟。他には山口百恵・三浦友和の息子、大竹しのぶの娘、ビートたけしの娘、竹下景子の息子、問題があった高畑淳子の息子や橋爪功の息子、中村雅俊の息子、三田佳子の息子等。野際さんの娘も母親に抵抗しつつも同じ道を進んだ。以前は母が出演するドラマに出ていたが、最近はどうしていたのか? こんなお母さんなんて、と思いながらどこかで尊敬の念を持っていたのか。複雑な関係だったらしい母子。亡くなってしまえばどれも同じ。けれどそこに至る様々な状況を洗い流せるか否かは本人次第。野際さんの娘はその死をどう捉えていたのか。和解なく終わっていたなら、ちょっと寂しい気がする。
キリッとした目元と口元。ハッキリとした性格だったのだろうな。一見怖いけれど案外面倒見がよさそうなおば様。そんな印象が彼女にはあった。男性にはもしかしてモテないかも知れないが女性ファンは多かったのではないか。体調不良との噂はあったが、そんなにも深刻だったなんて。81歳だそうなので無理からぬ事か、とも思う。彼女の代表作は大昔のドラマ”キーハンター”や25年ほど前の話題作ータイトルは忘れたが冬彦さんの母親役。個人的に好きだったのは橋爪功さんと北村総一朗さんと出演した、京都日報のデスク役。金切り声を張り上げて聞き苦しい時もあったけど、いつでも元気いっぱい。独身で仕事一筋に生きる女。その役にピタリとはまってカッコ良かった。色気がある、女っぷりがいいタイプの女優ではなかったが、潔い感じが好きだった。アメリカ志向の元旦那と別れたのもスパッとしてて素敵だったし、その後に他の男と噂にすらならなかったのもいい。思い残す事はありませんでしたか? ゆっくりとおやすみください。合掌。
組織的犯罪処罰法改正案をめぐって、自民党は汚い作戦に出た。加計問題等で野党からこれ以上突っ込まれ、国会の会期を延長するような事にはしたくない為に強行採決に踏み切ったのだ。何をどうしようとしているのかを国民に納得させられないままに、自分たちの考え第一で動く政党ーそれが自民党。こんな人たちにこれからの日本を任せられる筈もない。国会議員がこんな行いをしていいのか。許されてしまう国。それが日本。空しいなー。「数が多ければ何をやってもいいという訳ではない」と民進党議員が嘆いていた。多数決で全てが決められてしまうなら、選挙の結果が全てになる。選挙で負ければ何の意見も通らないのか。そうではない。民主主義の世の中なのだから、話し合いの場が設けられそれによって国の在り方も決められて行くのではないのか。「時間をかけて丁寧に説明はした」と菅官房長官は言っていたが本当にそうなのか。彼が言う事はいつも違う様に思えてならない。