スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

人神思想&正当性

2020-01-18 19:40:39 | 歌・小説
 『ドストエフスキイその生涯と作品』で,埴谷が『悪霊』のキリーロフに注目するとき,その理由のひとつはキリーロフが癲癇の発作を起こすという点にありました。埴谷がキリーロフに注目するのにはもうひとつの理由があって,これはキリーロフが自殺をする点と関連します。『悪霊』というのは表向きだったかもしれないドストエフスキーの転向と大きく関連する小説であり,そのために登場人物の多くは死ななければならない運命に執筆の当初からありました。その中には自殺をする人物も含まれていて,キリーロフはそのひとりです。ですから単に自殺をするというだけでは何ら注目するに値しません。埴谷がとくにキリーロフの自殺に着目しているのは,キリーロフが自殺へと至るキリーロフ自身の考え方に,ある種の感慨をもっているからです。
                                        
 キリーロフにとって,人神と神人の相違は重要でした。人類を救うのは神人ではなくて人神であったのです。これはキリーロフがスタヴローギンに言ったことですが,このときキリーロフは神人ということでキリストを意味させていたと亀山はみています。会話の流れからはそう受け取るべきです。なぜならキリーロフは自信が無神論者であるということ,キリストを信じていないということには自覚的であったからです。
 では人神とはどういう存在であったのでしょうか。キリーロフは,死に対する苦痛と恐怖を克服した人間は自らが神になるという思想を抱いていました。それがいわばキリーロフの人神思想であったわけです。そして埴谷が着目するのはこの点です。そしてキリーロフはこの思想のゆえに自殺に至るのです。つまりキリーロフにとって自殺をするということは,死の苦痛と恐怖を克服し,自らが人神となる行為だったのです。
 埴谷はキリーロフのこの思想のゆえに,『悪霊』の中でとくにキリーロフに焦点をあてました。ですが僕には,キリーロフの思想はきわめて凡庸にみえるのです。

 末尾の部分が,証明Demonstratioの全体と関係するのか,それとも秋保がいうように,直接無限様態が永遠aeterunusであるということにだけ関係するのかということは不明です、ですから,この点に関する秋保の見解opinioが正しいのかどうかも不明であるとしておきます。ただ不明であるというのは,正しくないかもしれないけれど,正しいかもしれないということです。そこでまずはそれが正しいとして,探求を続けていくことにします。
 神Deusの絶対的本性から神の属性attributumの中に生じることが何であるのかということは,ここでは第一部定理一六を参照して結論づけました。したがって,無限に多くのinfinita各々の属性のうちに無限に多くのものが生起するということがその意味になります。ところで,無限に多くのもののうちには個物res singularisも含まれます。もっといえば現実的に存在する個物も含まれるということになります。これはそれ自体で明らかだといえるでしょう。したがって,秋保の見解が正しいとするなら,個物は無限infinitumではないにせよ永遠のうちに存在するということでなければなりません。実際に秋保はそういう見解を示しているのですが,その見解の正当性を考えていきます。
 第一部定理一六を援用したのはこのブログでのことであり,秋保はその部分については言及していません。これは前にもいった通りです。秋保が示しているのは第二部定理八系です。この系Corollariumでは,個物が神の属性の中に包容されている限りで存在するということが認められています。したがって,たとえば神の絶対的本性によってある物体corpusが生起するとして,その物体は延長の属性Extensionis attributumの中に包容されている限りで存在するということになるでしょう。そして属性は永遠に存在するのですから,属性に包容される限りでのその物体は永遠に存在することになるでしょう。確かにこのように考える限り,物体は無限ではないにしても永遠に存在するということが正当化できますし,もっと一般化して,個物は無限ではなくても永遠であるということを正当化できることになるでしょう。
 さらにこのことは,第五部定理二二を参照しても正当化できるように思えます。ここでは現実的に存在する個々の人間の身体humanum corpusについて言及されています。

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