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スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

孤独の肖像1st.①&第四部付録第二四項

2018-04-03 18:57:58 | 歌・小説
 「捨てるほどの愛でいいから」に続いては「孤独の肖像1st.」です。この楽曲はいくらかの変遷があるので,まずはそれを紹介しておきましょう。
                                
 「孤独の肖像1st.」は「かもめの歌」も収録されている「時代」というアルバムの中の1曲です。アルバムのタイトルからも想像できるように,1曲目には「時代」も収録されています。アルバムは1993年10月21日に発売されたもの。「時代」がシングルとして発売されたのは1975年12月21日のことでした。それが編曲されてこちらのアルバムにも入っています。このアルバムに含まれている楽曲は,中島みゆき自身が歌ったものであれほかの歌手に提供したものであれ,過去に作詞したり作曲したりしたものが,すべて瀬尾一三によってアレンジし直されています。したがってこのアルバムにとってのオリジナルな楽曲,つまり書き下ろされたものは存在しません。
 「かもめの歌」はパトリシア・カースが1993年に発売したアルバム内の楽曲として提供されたものです。カースはフランス語で歌っていますが,もとの詞はこのアルバムに収録されているのとは少し違っているとのこと。一方,「孤独の肖像1st.」は中島みゆき自身が歌ったもので,原曲は「それ以上言わないで」や「忘れてはいけない」,「ノスタルジア」や「肩に降る雨」も収録されている,1985年11月7日に発売された「miss.M」というアルバムに,「孤独の肖像」というタイトルで収録されています。
 原曲といいましたが,これは微妙な部分もあります。新たに収録されたもののタイトルが「孤独の肖像1st.」となっているように,この曲は本来は「時代」に収録されたものとして作詞作曲されたものだからです。ただそのように作ったものの,1985年当時の中島みゆきはそれをそのまま歌うだけの能力を持ち合わせていなかったので,自身で自分の能力に見合ったものに作り替えたそうです。ですから「孤独の肖像1st.」の方が原曲ないしはオリジナルといういい方も可能でしょう。
 僕は「孤独の肖像」より「孤独の肖像1st.」の方が好みに合っています。なのでこちらを選びました。

 スピノザは憤慨indignatioを正当か不当かという観点からは何もいっていませんが,僕が示してきたように,憤慨が憤慨を感じている当人にとって正当であると判断されやすい感情affectusであると解釈できそうなことはいっています。それは第四部付録第二四項です。
 「憤慨のごときは公平の外観を帯びているけれども,もし他人の行為について審判して自己もしくは他人の権利を擁護することが各人に許されるとしたら,人間は無法律で生活することになる」。
 この部分は大変に重要な,そしてある意味では驚くべきことをいっているように僕には思えます。しかしそのことは後回しにするとして,まず文章の冒頭部分に着目しましょう。そこでスピノザは,憤慨という感情が公平という外観を帯びているといっています。これは憤慨を感じている人の外側からその感情を対象化して評しているといえるでしょう。そこでこれを憤慨を感じている当人の内面から記述すれば,憤慨を感じている人はそれが公平であると感じているということになります。この部分はこの項の途中から最後までで,その直前においてスピノザは,他人に対して向けられた悲しみtristitiaの感情,すなわち第三部諸感情の定義七により他人に対する憎しみodiumについて,それは正義justitiaや公平などの正反対であるといっています。したがって憤慨は公平の正反対でなければならず,実際にはそれは不公平な感情,あるいは不公平を齎す感情であるのです。
 公平な外観,あるいは内面的にみた場合の公平の肯定が,憤慨の正当化に容易に結びつくことはとくに説明するまでもないでしょう。公平であることと不公平であることを比較して,どちらがより正当でどちらがより不当であるかを判断しなければならないのであれば,だれでも公平が正当で不公平が不当であると判断するであろうからです。なおかつこれは正義と不正injustitiaとも結びつけられているのです。正義であることは正当であり,不正であることが不当であるというのは,認識cognitioとして直結するというより,単に語をいい換えただけであるといってもいいくらいではないでしょうか。よってスピノザは,憤慨は正当化されやすいという意味のことをいっていると僕は解します。

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