スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

霧島酒造杯女流王将戦&7索の場合

2021-10-23 19:05:09 | 将棋
 19日に指された第43期女流王将戦三番勝負第二局。
 里見香奈女流名人の先手で中飛車。後手の西山朋佳女流王将が三間飛車に振っての相振飛車。後に相向飛車になりました。後手が交換した角を打って局面を動かしにいく将棋に。厳密にいうと無理な動きで,押さえ込んで先手が完封を狙える将棋だったようです。
                                        
 後手が2一の飛車を浮いた局面。ここは☗4七玉が最善だったようです。ですがそれはなかなか難しそう。実戦は☗2六歩と突きました。
 後手が飛車を浮いた狙いは☖3四歩と合わせるため。これに対しては☗2五歩もありますが,☗同歩と取りました。ただこちらの展開になると,先手が優位を維持するのは簡単ではありませんでした。
 ☖同飛☗3五角☖同角☗3七銀☖5三角。角は4四に引く手もあるのですが☗3五歩☖同角となるのならどちらに引いても同じです。
                                        
 第2図になったら☗2三角☖2四飛☗3五金☖2三飛の角交換に進めるのが先手としては最善でした。ただこれは元の方針と異なるので,指しにくい順ではあるでしょう。
 実戦は☗2二角と打ちましたが,これで逆転しました。☖2四角☗1一角成で駒得にはなりますが☖3六飛が強手。☗同銀☖4六角は明らかな不利なので☗5七銀と辛抱。しかしこれにも☖3五飛☗3六香に☖4五桂がありました。
                                        
 ☗同歩☖同飛は歩がなくて先手が困ります。よって☗3五香ですが☖3七桂成☗同玉☖3五角で,次の☖3二香が厳しく先手玉が寄り筋に入りました。
 西山王将が勝って1勝1敗。第三局は来月4日に指される予定です。

 8萬の前に捨てた7索については,こうしたことが該当しません。
 5が捨てられているプレイヤーに対して8が捨てやすくなるということを説明したのと同じ理屈によって,4が捨てられている場合は7が捨てやすくなります。また,このときのフェニックスは,失点の回避より得点の獲得を目指しているのですから,たとえば5と5と6とか,5と6と6というような形で持っている場合は,ポンにもチーにも対応することができるように,しばらくその形のまま持ち続けるのが合理的です。したがってフェニックスが早い段階で5や6を捨てている場合も,7は捨てやすい牌であることになります。しかしフェニックスは4索も5索も6索も捨てているわけではありません。ですから7索はチーされる可能性がそれなりにある牌で,もし副露しているフェニックスの手を進めないことを重視するなら,捨てるべき牌ではないということになるでしょう。
 このことは瑞原以外のプレイヤーにも理解できる筈です。つまり,瑞原がフェニックスの副露に対してそんなにケアをしていないということは理解できた筈なのです。ですが近藤はそのことをおかしいとは感じなかったのです。つまり,近藤の第三種の認識cognitio tertii generisが働くagereために必要とされた第二種の認識cognitio secundi generisの蓄積は,単に瑞原というプレイヤーが,他のプレイヤーの副露を丹念にケアするプレイヤーであるということだけではなかったことになります。そして実際に蓄積されていたのは,この局の状況がどのようなものであるのかということだったのです。それによれば,フェニックスが得点を獲得して試合が終了するということは,3位のパイレーツにとって,最良ではありませんが,局の終了の仕方としてはよい部類に入るものでした。このために,もしもパイレーツがフェニックスの副露に対して一切のケアをしなかったとしても,あるいはもっと極端にいうと,フェニックスの手を進捗させるような打ち方をしたとしても,他のプレイヤーはそれを不自然とは感じないのです。だから近藤の第三種の認識も,パイレーツが7索を捨てた時点では働かなくて当然だといえるのです。
 この点はもう少し分かりやすく説明しましょう。
コメント
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