スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

竜王戦&決定的な差

2021-10-26 19:04:48 | 将棋
 22日と23日に仁和寺で指された第34期竜王戦七番勝負第二局。
 豊島将之竜王の先手で相掛かり。先手が角の動きで手損をしている間に,後手の藤井聡太三冠が銀を繰り出していく将棋。先手がその銀を目標にしたのですが,後手が強気に対応しました。先手は龍を作ることができる局面になったのですが,それを断念。代替案として9筋を攻めましたが,それも後手に逆襲され,封じ手の時点では先手が非勢に陥っていたようです。
                                        
 後手が7三の桂馬を跳ねた局面。この手では☖7七歩成が最善とAIは指摘していましたが,後手はそれでは清算を持つことができなかったとのことです。
 先手は☗2五飛と引きました。これはいろいろと狙いを秘めている手。後手としても怖いところがあるように思うのですが,☖9七桂不成と踏み込んだのが勝因となりました。この局面はこの手以外では後手が優位を保つのは難しかったようで,後手にとって一局を通して最難関の局面であったと思うのですが,あっさりと突破しました。
 先手は銀を取るのではなく☗2四歩と打ちました。これも飛車を引いた狙いのひとつ。後手は☖8九桂成と桂馬を取って☗2三歩成に一旦は☖同金☗同飛成。ここで手番を生かして☖4五桂と打ちました。先手は☗4八王と早逃げしましたが☖9九成桂で悠々と駒を補充。
                                        
 第2図となっては先手からは有効な攻めがなく,後手の勝勢となっています。
 藤井三冠が連勝。第三局は30日と31日に指される予定です。

 差し込みは極端な例といえますが,そうした戦術まで含めて,パイレーツはフェニックスに対して協力的に打つ余地があるのです。ですから,8萬はそのようには他のプレイヤーから見えないという一面がありますが,7索のように,明らかにフェニックスの副露に対して一切のケアをしていない牌をパイレーツが捨てたとしても,他のプレイヤーからそれが不自然であるというようには認識されません。だからこのときには第三種の認識cognitio tertii generisは働きませんし,第二種の認識cognitio secundi generisによってもそれが不自然であるとは認識されないのです。実際はパイレーツの手は,この時点ですでに大量の得点を見込めそうな手になっていたのですが,そのことを他のプレイヤーが気が付く材料にはならないのです。7索を捨てたことと4索を捨てたこと,すなわちフェニックスの副露にケアをしなかったことと,アベマズの副露に対してケアをしなかったということとの間には,それほど決定的な差があるといえるのです。
 ですから,パイレーツがもしも4索を引いてこないで,アベマズに対して危険ではないような牌ばかりを引いてきていたとしたら,それを捨ててもほかのプレイヤーは不自然であると認識しないのですから,パイレーツの手が大量得点を見込めるような形になっているということは,おそらくほかのプレイヤーには気付かれることがなかったろうと推測されます。これは麻雀が不確定な要素を含んでいるということの一例であり,他のプレイヤーの手のことに気付くことができるかできないのかということも,引いてくる牌がどんな牌であるのかということと関係してくるのです。どんなに強いプレイヤーであっても,相手のチャンスや自身の危険に気が付くことができないような場合も生じ得るのが麻雀というゲームなのです。
 ここまでの説明から,パイレーツが7索や8萬を捨てたときに,近藤に第三種の認識が働かなかったとしても,それはおかしなことではないということ,いい換えれば,パイレーツが4索を捨てたときに初めて第三種の認識が働いたのが当然であるということは分かりました。すなわち,それに関して近藤が著書で述べている事柄には,何の矛盾もありません。
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