スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

加古川青流戦&あのこと

2016-10-31 18:59:33 | 将棋
 鶴林寺で昨日の午前に指された第6回加古川青流戦三番勝負第二局。
 井出隼平四段の先手。相矢倉で早くに2筋を突いて早囲いを目指したのに対して石川優太奨励会三段が2枚銀の急戦で対抗。先手の序盤作戦が失敗で明らかに後手が優位に立ちましたが,先手が2筋の一点突破を目指してこれを成功させ,勝負形になりました。
                                     
 先手が7三のと金を寄った局面。後手は△7七桂成▲同王としてから△6二歩と打ちました。先手が王で取ったのは入玉を視野に入れていたからかもしれません。対して後手がと金を消しにいったのは苦し紛れに思えなくもなく,ここは先手の方がいいのではないでしょうか。
 先手は▲1六桂△3五角と追ってから▲5三金と打ちました。これはあまりよくなかったのではないかと思えます。
 △7四飛の王手に▲7五歩△同飛▲7六金△7四飛▲7五歩△3四飛と進展。ここも金は上がらず歩を打って△7四飛に▲5二との方がよかった可能性があると思います。
 ▲5二とに△2三玉の早逃げ。そこで先手も▲8八王と引いているのですが,これはそれまでの方針と一貫していないように思えます。少し差が詰まっているか,もう先手が勝つのは大変なところまで至っているかもしれません。
 △4七銀成は先手の飛車を捕まえにいこうという手。先手は▲7八金と寄って角交換を目指しました。後手は当然ながら拒否して△5七歩成。おそらく▲同歩では△2七銀で厳しいとみて▲同角△同成銀▲同歩と進めたと思われますが△1四玉とさらに早逃げされた局面は後手玉が寄せ難く,はっきり後手が優勢になっていると思われます。
                                     
 石川三段が勝って1勝1敗。第三局は引き続いて昨日の午後に指されました。

 スピノザが何をファン・ローンJoanis van Loonに秘匿しようとしていたかを解釈する最大の手掛かりは,蒼ざめて身震いを起こしたスピノザが落ち着いた直後に,ローンに発した一言の中にあります。それは,かれらがあのことをこれほど痛切に感じているとは思ってもみなかった,というものです。ローンはそれを直前の身体的異変に対するスピノザの弁解と解しています。おそらくそれは正しいといえるでしょう。
 『スピノザの生涯と精神』には,スピノザのことばの中にある「あのこと」というのは破門のことであるという注釈が訳者の渡辺義雄によって付せられています。この注釈は間違いとはいえないでしょう。ただ,破門された側がそのことを痛切に感じるというなら自然ですが,破門した側がそれを痛切に感じるというのはいかにも不自然なところがあります。これについては後で僕の解釈を詳しく説明しますが,スピノザが言っている「あのこと」というのは,単に破門のことを指すというより,その前後の状況を含めたより広い意味での破門を意味していると考えておくのが妥当でしょう。
 それから,このスピノザのことばというのは,単にスピノザが自身の感想を述べたというよりは,思想的な理由によって自分を破門し,また暗殺未遂という事件まで起こしたかつての同胞のユダヤ人に対する非難が込められていると僕は思います。ですから,もしかしたらそれはスピノザが発するには相応しくないような表現なのかもしれませんが,かれらがあのことを痛切に感じているというより,あいつらがあのことを痛切に感じている,というように訳してしまった方が,ニュアンスとしてはよく伝わるのではないかと思います。『破門の哲学』では,自分を刺した相手のことをスピノザが指示することばとして,あの若僧,という表現が与えられています。これもスピノザが使用することばを日本語に訳す場合には相応しくない語句かもしれません。ですがどういう訳がスピノザの真意を読者に伝えるのかという観点からいえば,別々の部分ですが,清水の方が渡辺よりも適切な訳し方をしているように僕には思えます。
 「あのこと」の意味合いをもう少し考えましょう。
コメント
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