
洋菓子メーカーM社株主総会風景
江嵜企画代表・Ken
阪神「御影駅」下車改札を出て海側に出るとバレンタインデーを日本で初めて紹介した洋菓子メーカー「モロゾフ」発祥の地、神戸とバレンタイン発祥の地、イタリア中部のテルニ市との交流が1986年から始まったと記した記念碑が目に入る知る人ぞ知る小さな公園がある。
モロゾフの株主総会が4月25日(木)午前10時から六甲アイランドにある神戸ベイシエラトンホテルで開かれ楽しみにして出かけた。会場に着くなりいつものようにスケッチを開始、総会議長を務める社長さんを描き込んで仕上げた。
今期の売上295億円前年度比微減、ここ1~2年の業績は安定している。ただ、純利益は19.9億円と同15.5%減と厳しかった。減益の要因として人手不足、物流コスト上昇、人材確保や従業員の処遇改善の人件費増加が影響した。業績に左右されず安定配当を継続するとして中間50円、期末50円、年100円を据え置くなどと説明があった。株価は5,000円レベルを上にも下にもいかず現状推移している。
「対処すべき課題として、①販路戦略として1店舗当たりの売上高向上と利益改善、②商品・ブランド戦略として焼き菓子強化などに取り組む、③生産戦略として、各工場の生産品目の適正化を図る、④組織戦略として、スリムで強い将来組織構築を目指す。次世代人材育成と女性活躍施策を推進する」と説明があった。
一連の報告の後、会場に集まった株主との質疑応答の時間が用意されている。この日、数人の株主が質問した。冒頭、愛知県から来たと名乗る男性が手を挙げた。「他県の人間としての意見であるがある地元のメーカーが自社の考えのみに捉われ業績が悪化した。」と前置きして「当社も社外取り締役を2人、3人増やして外部からもっと多様な意見を取り入れたらどうか。」と提案した。「当社役員に社外から1名、監査役3名の内2人は社外である。幅広い見識のもと様々な提案をしてもらっている。」と答えた。2番目に「借り入れを増やし積極的に運営したらどうか」とある男性が提案した。「業績がいい時もある。悪い時もある。当社は海外店の新設、M&A推進ふくめ資金需要に対応している」と答えた。
3番目に筆者が手を上げ「御影のモロゾフ、神戸のモロゾフに親しみを感じている。100年先、50年先、あちらの世界からモロゾフさんは頑張っているなと言う姿を是非見たい。」と前置きして「当社はスリム化、次世代人材育成、女性の活用をうたっている。大卒必ずしも有能であると限らないが、特に将来のリーダー候補として有能な大学卒の入社状況を聞きたい」と質問した。
「当社は企業価値、ブランド価値向上に日々努めている。そのためには有能な人材確保は重要だと十分認識している。有能な大学卒を採りたい。ただ、正直なところ、この人は当社に入って欲しいと思う人は他社と2社、3社で既に内定している。他でまだ内定していない人は採りたくない人が多い。一方、女性の活用は引き続き積極的に進めている。現在全体の20%に達した。」と答えた。
複数の女性が質問した。「製造元表示にモロゾフ以外の名前が時に見られる。どうなっているのか」と聞いた。「直接製造している場所を明記するよう法律が変わった。当社のレシピ、味、配合原料など厳格に適用している。安心、安全を厳しく守れるよう対応している。」と答えた。
「株主優待券が多く出回っている。何か対策は出来ないのか。」と聞いた。「今年7月末の株主から優待制度を充実する。半年以上100株以上保有株主に従来一冊10枚を20枚に変更した。保有株数、保有年数により2,000円または3,000円相当の自社商品を選べる。オンライン優待割引を1年4回に変更する」などと答えた。
「宝塚でも優待券が使える店を作ってほしい」とある女性が提案した。「優待券を扱ってくれる店が宝塚にないため実現していない。申し訳ない。」と答えた。
株主総会のあと株主に送付された第89期報告書によれば「日本で初めてのバレンタイン広告が、従来言われていた年より1年早い1935年2月の英字新聞ジャパンアドバイザー紙に掲載されていたことが最近分かった。太平洋開戦前の1940年2月迄6年間継続掲載された」と出ていた。
相次ぐ百貨店閉鎖や目先では消費税引き上げなど厳しい環境が現状継続する。神戸のモロゾフ、地元御影のモロゾフが社長さんのリーダーシップよろしきを得て、末永く生き続けて行ってほしいと願いつつ会場を後にした。(了)