遊び人親子の日記

親子で綴る気まぐれ日記です。

リアル・シンデレラ

2011年06月20日 11時05分56秒 | 読書

        リアル・シンデレラ      姫野カオルコ(著)2010年3月発行


  『シンデレラ』・・・この題名の文字に、つい敬遠を決め込んでしまい
  ようやく出版から一年以上経過して読んだところです。
  読んでみたら、『これのどこがシンデレラ?・・・』、逆説的な題名でした。
  主題もユニーク、構成も巧みで、思わず頁をめくるスピードが早くなり
  いつのまにか夢中になって読んでいました。
  最後には、言い知れぬ感動に襲われ、じわ~っと涙が滲んだ。
  こんなことなら去年発行後すぐに読んでおけばよかったなぁ
 
  
  内容(「BOOK」データベースより)
  童話「シンデレラ」について調べていたライターが紹介された女性、倉島泉。
  長野県諏訪温泉郷の小さな旅館の子として生まれた彼女は、母親に冷遇され、
  妹の陰で育ったが、町には信州屈指の名家、片桐様の別荘があり、
  ふとした縁で、松本城下の本宅に下宿することになる。
  そこで当主の一人息子との縁談がもちあがり…。
  多くの証言から浮かび上がってきた彼女の人生とは?
  不況日本に暮らす現代人にこそ知ってほしい、
  新たなるドキュメント・フィクション。

  本書のなかには、主人公「泉(せん)」を始め多くの女性が登場し、
  それぞれが丁寧に描かれているのだが、それらの「泉」以外の女性を
  こう語っている部分があって、それがなるほど確かに、、、なのだ。
  例えば、「泉」の妹「深芳」、病弱で美しく聡明ゆえに両親に溺愛され
  地元でも評判の娘なのだが、そんな娘をこう評す場面もある。
  ━《ガールのスタンダード》。
  矢作は深芳をこう表現した。的確である。
  「ふつうの女の子」という表現はしなかった。
  「凡庸」「平凡」「どこにでもいる」というような語も使わなかった。
  《ミニ世界の偉いお爺さんにウケるタイプ》。
  南条玲香は深芳をこう表現した。
  登代と長く話したあとでは言い得て妙だとわかる。
  彼女らは脅かさないのである。脅かさず、満足させるのである。父性を。━
  
  「泉」とは見た目も性格も対称的な女性一般に通用するワード
  《ガールのスタンダード》・・・ほんとに言いえて妙な言葉ではないか!

  両親からの差別的扱い、さまざまなイジメ、周囲からの中傷、、、
  私だったら、これだけのことが重なればグレるか死ぬかしてしまう
  だろうと思われる環境のなか、「泉」は、自分の周りの人の幸福を考え、
  願って生きる、という生き方を選んでいくのだ。
  しかし、そういう生き方を選び、たった一人試行錯誤の日々を過ごしながら、
  子供の頃に逃げ込んでいたダンボールで作った泉の秘密基地、
  そこに真っ先に運び込んだのが、山のようなちり紙、綺麗な写真、、、
  その理由を語るシーンはズシンと重く、彼女の告白を涙なしには読めない。
  
  そして、後々全て叶ったと語った「泉」の秘密の“三つの願い”は、
  「妹が丈夫になりますように」
  「大きくなったらお母さんとお父さんと離れて暮らせますように」
  そして三つ目が
  「自分の周りにいる自分じゃない人にいいことがあったら、自分もうれしく
  なれるようにしてください」
  だったのだ。
  
  つらい環境に育った「泉」が、自分の生き方を考えに考えた結果が、
  周りの人の幸せを自分の幸せと思うこと、で、
  彼女は幼い頃から孤独のなかで耐えて、考えて、実践していく。
  本当のシンデレラって、どんな女性のどんな人生なのか?
  著者だしたの答えが、「泉」のなかに描かれていて、
  これも、一つのシンデレラなのかもしれない。
  
  人はつい、自分の不運、不幸は親のせい、誰かのせい、世の中が悪い、、、と
  自分の周りのせいにしがち。
  そして今は、「幸せ」の価値が、外からの評価、他人の評価で決まるかのように
  カン違いしてしまっている時代。
  自分にとっての真の「幸せ」とは何なのか?
  自分の幸せのためには、どう生きていけばいいのか?
  あらためてリアルに考えさせられました。
  
  じんわり感動の一冊です。

   わがまま母
  
  
コメント
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