http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20110914-OYO1T00303.htm?from=newslist (維新内 2条例に異論…大阪府議団意見交換会:読売新聞(関西)ネット配信記事、2011年9月14日)
昨日、ツイッターで、読売新聞が上記の記事を配信していることを知りました。正直なところ、大阪維新の会の一部議員が極秘でつくった案で、内部でも異論が多々あるような条例案など、「そもそも、今度の府議会に出さずに、まずは撤回してほしい」というしかありません。このままでは、議会関係者や行政関係者だけでなく、大阪府民を混乱させるだけです。
「いったい、地域政党としてどういう運営をしているのか?」「事前の内部調整すらできない政党なのか?」と首をかしげてしまいますし、「大阪維新の会から出てくるほかの政策提案についても、もしかしたらこの程度のものなのではないか?」と言いたくなってしまいます。
さて、今日は大阪維新の会の出した「教育基本条例素案」の第1~4条の部分(目的及び基本理念)のところについて、私の思うところを書きます。これ以降の部分については、また別途、機会をあらためて書くつもりです。なお、「条例素案」については、前にも書きましたが、次のページを参照しています。
http://osakanet.web.fc2.com/kyoikujorei.html
まず、細かいところですが、誤植と思われるところがいくつかあります。これは条例素案がそうだったのか、それともこのホームページへの転載の際に生じたのかわかりませんが。たとえば第1条の3行目の「保管」は「補完」でしょうし、第3条2項の「自律支援」は「自立支援」ではないかと思われます。
次に、4つの条文について、全体を通して思ったことを書いておきます。
私が率直にこれを読んで思ったのは、第1条の目的のところに「国の法令が定める教育目標を大阪府(以下「府」という。)において十分に達成するべく」とあるように、地方分権の時代と言われるわりには、<大阪維新の会の求める教育改革は、大阪という地域の人々の実情を反映させた独自の施策を打ち出すのではなくて、「国の教育政策をそのまま、大阪府内に反映させること」が狙いなのだ>ということです。先ほどの指摘した誤植の「保管」がほんとうに「補完」ならば、まさに大阪維新の会は、国の教育政策を「補完」するためにこの条例をつくることになります。
また、第2条にある「基本理念」ですが、これ、そっくりそのまま、中央教育審議会(中教審)や文科省の各種文書か、現行の学習指導要領などに出てくるような文言ばかりです。
たとえば「自由とともに規範意識を重んじる」という第2条(1)や、「個人の権利とともに義務を重んじる」という(2)の文言ですが、これ、中教審がかつて出した答申「幼児期からの心の教育の在り方について」(1998年)の内容と重なるんですよね。また、(5)なんて、改正後の教育基本法第2条5項の言い直しのような印象です。
そして、(6)の部分、グローバルな社会での国際競争、これに迅速的確に対応する人材育成をしたいというのが条例の趣旨のようです。でも、それって、中教審答申「新しい時代の義務教育を創造する」(2005年)で、すでにこんな風に言われているんですよね。(以下、色を変えて表示します。)
我が国が、変動の激しいこれからの時代において、今後とも国際的な競争力を持つ活力ある国家として、また、世界に貢献する品格ある文化国家として発展するためには、国民一人一人が、そのような国家・社会の形成者として、それぞれの分野で存分に活躍することのできる基盤を、義務教育を通じて培う必要がある。(中略)
変革の時代であり、混迷の時代であり、また、国際競争の時代でもある今日、人材育成の基盤である義務教育の根幹は、これまでのどの時代よりも強靭なものであることが求められる。
教育を巡る様々な課題を克服し、国家戦略として世界最高水準の義務教育の実現に取り組むことは、我々の社会全体に課せられた次世代への責任である。
※参照ホームページ
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05102601/002.htm
このような形で、第2条にある「基本理念」の文言のひとつひとつを、文科省や中教審の出してる文書、現行の学習指導要領の中身などと照らし合わせれば、「やっぱり、この条例素案、国の教育政策を補完するためのものなのだ」ということが見えてくるように思います。
第3条については、あらためて言うまでもありません。1項の「等しく教育を受ける権利」については、日本国憲法にも改正後の教育基本法にも出てきます。ついでにいうなら、1項・2項ともに、どうせ条例で何か大阪府独自の施策を決めるなら、「大阪府の公立学校での教育は、インクルーシブ教育をすすめることを原則とする」とか、「障害のある子どもの地元学校への就学に関して、大阪府・府教委・各公立学校は最大限の支援を行う」ということくらい書いたらどうなのか、とすら言いたくなります。
さらに、この条例素案のあとのほうに出てくる51条・52条の内容は、かなり子どもの人権論のこれまでの議論からするとあぶない。場合によれば、51条・52条の中身やそれにもとづく現場での対応が、3条の理念を裏切る危険性がある。そういうことを全く考慮していません。おそらく、ほかの条文に書いてあることを実際に現場実践や施策に移したときに生じることのなかには、3条の子どもの「教育を受ける権利」の保障をかえって損なうこともでてくるのではないか、という気すらします。
そして第4条です。ここからすると、この条例が基本的に対象としているのは、大阪府内の公立学校のようです。でも、私立学校はどうするんですかね? 条例の対象外ですか? ということは、「こんな条例にもとづく教育は嫌いだ」という層は、「どうぞ私学へ行ってください」ということなのでしょうか?
このような形で、前文と第1~4条までの間でも、いろいろと検討してみれば、ほんとうに問題の多い条例素案です。「この人たち、大阪府の教育の特色を出すのではなくて、国の教育政策の下請けみたいなことがやりたいのか?」と言いたくなるような、そんな条例素案です。
大阪維新の会のなかで、この条例素案の中身に異論や疑問を持っている府会議員の方と、その支持者の方。どうぞ、この条例案を議会に出す前に撤回するよう、維新の会のなかでひとつ、大きく問題提起をしてください。また、その問題提起が受け入れられないなら、反対派の府会議員さんで新会派をつくって、できるだけ多くの仲間を連れて、維新の会を割って出てください。ぜひとも、よろしくお願いします。
※今日はここまでの文章にとどめます。今後も引き続きこの条例素案へのコメントを続けますが、明日以降は不定期更新になると思います。どうぞお許しください。