できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

日本教育学会のラウンドテーブル

2012-08-25 09:05:47 | 受験・学校

昨日、今日、明日と3日間にわたって、名古屋大学で日本教育学会が開催されています。その1日目である昨日、ラウンドテーブル「大阪府・市の教育政策動向をどうとらえるか」で、私は「大阪府・市の教育政策の動向と子どもの権利保障」というテーマで報告をしました。報告内容及びその後の討議のなかで話した内容は、だいたい、次のとおりです。

私の印象では、先行研究での大阪府・市の教育政策に関する議論は、国旗・国歌の問題や教育行政・職員・学校の3つの基本条例(教育3条例)、学校選択制や学力テストの結果公開、公立高校の学区再編など、学校に関するものが中心であったように思います。このような先行研究の議論から少し視点をずらし、「子どもの権利保障」という視点に立ってみて、さて、どのような議論ができるかを考えてみよう、というのが、今回の報告の趣旨でした。

たとえば「市政改革プラン」で出てきたような市民交流施設、社会教育・生涯学習施設の統廃合や、保育・子育て支援関連の諸事業の縮小、こども相談センターのサテライト(かつての「ほっとスペース」)の事業縮小、そして「子どもの家事業」のこと、等々。こうしたことが、「子どもの権利保障」という観点に立った場合、学校にまつわる諸政策に加えて、大阪の教育政策を論じるときには付け加わります。学校が教育3条例や学力テストの問題などでさまざまな矛盾を抱えるようになっていきますが、そこへ、学校外や就学前の子どもの育つ環境の変化から生まれる矛盾が付け加わるわけですよね。そのなかで、子どもに二重三重のしわよせがやってくることになります。

また、大阪市の教育行政基本条例を見ると、ところどころに「子どもの最善の利益」や「子どもの意見の尊重」といったような、一見、子どもの権利条約の趣旨を尊重したかのような文言が入っています。これは大阪府の教育行政基本条例にはない特徴かと思います。ですが、子どもの意見を聞くことが教員管理につながるとか(たとえば、教員評価や授業評価アンケートをするなど)、「子どもの最善の利益」を「グローバル社会を生き抜く学力形成だ」」と理解する立場に立つとか、そういう理解が大阪市の教育行政基本条例には可能になっているわけです。

そして、大阪市の教育行政基本条例には家庭教育振興に関する条文(8条2項)がありますし、平松氏長期に子どもの虐待防止に関する条例をつくって、子育て支援の充実に向けて動いていますが、その一方で大阪維新の会・市議団は5月に例の「家庭教育支援条例案」をつくって、批判を受けて撤回したとか。また、社会教育や生涯学習に関する条文も大阪市の教育行政基本条例にはありますが(8条3項)、これも先に述べたように、市民利用施設や社会教育・生涯学習施設の統廃合が「市政改革プラン」で打ち出されています。要するに、教育政策それ自体が矛盾だらけなのですね。

ちなみに、橋下知事就任直後にも大阪府は「財政再建プラン案」で府立青少年会館や国際児童文学館の廃止・他施設との統合や、渡日の子ども支援などの予算の削減を行ったこと。また、大阪府には子ども条例があること。そして、大阪府内には箕面市や豊中市、泉南市のように、子ども条例を制定したり、準備段階に入っている自治体もあるので、潜在的には子どもの権利保障を推進しようという力はあること。あるいは、子どもの権利保障を充実してほしいという観点に立って大阪府・市に対してさまざまな働きかけをするなど、市民レベルでの取り組みもあること。こういうことを話をしました。

うまく伝えられたかどうかわかりませんが、こんな感じで、昨日の報告を行いました。自分としては、この数年の大阪府・市の教育政策の動向、というか「橋下教育改革をどう見るか?」ということについての私の整理・まとめが、ラウンドテーブルでの報告でできたように思いました。ひとまず、このブログでお知らせしておきます。


豊中市で「子ども健やか育み条例(素案)」への意見募集はじまりました。

2012-08-21 06:51:19 | ニュース

http://www.city.toyonaka.osaka.jp/top/kakubu/kodomomirai/kodomoseisaku/kodomosukoyakahagukumijourei/ikenkoubo.html  (豊中市:(仮称)豊中市子ども健やか育み条例(素案)への意見募集について)
大阪市が教育行政・学校活性化・職員基本の3条例をつくったり、市職員の政治的活動を規制する条例をつくったりしているその一方で、豊中市は「子ども健やか育み条例」を制定すべく、上記のとおりパブリック・コメントの募集に移りました。
なんだか、同じ大阪府内なのに、子どもの人権を守り、子どもの生活基盤をささえていこうとする取り組みが、自治体間でずいぶんちがってきましたね。
こういう条例案、大阪維新の会として、あるいは維新の会の代表たる橋下市長として、作る気はないんですかね、大阪市に?? あるいは、今は「都構想」実現によって、大阪市を解体することが大事で、解体後の大阪「市内」の子どもがどうなっても、自分たちはあずかりしらないということでしょうか。いずれにせよ、子どもの最善の利益は考慮されていない、ということだけは確かですね。


本来、子どもにとって必要な条例はこちらでは??

2012-08-18 21:30:39 | ニュース

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201208170048.html (いじめ問題を早期に解決へ、第三者機関の新設検討、滋賀県:朝日新聞デジタル(関西)、2012年8月17日付け)

教育行政基本条例や学校活性化条例、あるいは職員基本条例や、職員の政治的行為を規制するための条例などよりも、いま、子どもたちにとって必要な条例は、こうした子どもの人権を守るための公的第三者機関を設置するための条例なのではないか??

ということで、今日はそのことをまず、お知らせしておきます。
ちなみに、前から何度も書いているかと思いますが、兵庫県川西市の子どもの人権オンブズパーソンは、私の前の職場です。

子どものいじめ問題の深刻さを憂い、「子どもが笑う大阪」になる道筋を本当に考えている首長であれば、いま、中央政界に向けて情報発信するよりも、こっちの条例の制定などを真剣に考えるんじゃないですかね??


まあ、どれだけ大阪市内や大阪府内に集中豪雨があっても、我、関せずのようなことをツイッターで書きこんでいる首長さんたちには、こういうことを考えるのはちょっと無理かな・・・・。



このままでは市民の集会などがやりづらくなる。

2012-08-17 08:14:48 | 受験・学校

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201208150021.html (大阪市教委、教研集会に校舎貸さず、市教組は市を提訴:朝日新聞(関西)ネット配信記事、2012年8月15日)
http://mainichi.jp/area/news/20120814ddn013100050000c.html (大阪市:市民交流センター14年度廃止、学びと安心の場「なくさないで」「格差」広がる社会にこそ必要:毎日新聞(大阪)ネット配信記事、2012年8月14日)

久しぶりの更新になります。本業が夏休みに入って、どっとこの間の疲れが出たので、回復するまでこちらのブログの更新を控えていました。お盆休みもあけたことだし、そろそろ、ぼちぼちですが、こちらのブログ更新も再開します。
さて、上記2つの記事ですが・・・。いよいよ、本格的に、大阪市内のさまざまな社会運動への「抑圧」がはじまったな、という印象です。
教組には教研集会のために校舎等を貸さない、また、大阪の解放運動その他人権にかかわるさまざまな取り組みが使ってきた市民交流センターは、2年先には廃止する。
こうしたことによって、少なくとも、市民から大阪市の施策、あるいは行政のあり方に関する異議申し立てを行うために、学習会やさまざまな集会をやろうと思っても、そのためにつかえる場所の確保が難しくなります。
この間の議論のなかでは、教育行政や学校活性化、職員の3基本条例や、市職員の政治活動の規制に関する条例などがとかく注目されがちなのですが、「市民の異議申し立て」という観点から見た場合、市民交流センターのような公共施設の統廃合が持つ意味も無視できません。これはただ単に行政の「ムダ」を省くという「大義名分」に加えて、「市民の異議申し立て」をやりづらくするという、もうひとつのねらいがあるようにも思えてなりません。
ひとまず、今日のところは、このあたりで更新を終えておきます。


大津市・大津市教委は、ほんとうに第三者委による検証をする気があるのか???

2012-08-11 00:01:00 | ニュース

http://mainichi.jp/area/shiga/news/20120810ddlk25040450000c.html (大津・中2自殺:いじめ対策検討委設置、市教委、再発防止に注力:毎日新聞(滋賀)ネット配信記事 2012年8月10日付け)

この間の行きがかり上、こちらで大津市の中学生自殺問題についても書きますが・・・・。

「いったい、大津市教委って、なにがしたいの?」と、この記事を読んで思ってしまいました。

そもそも、こうした検討委員会って、本来であれば市教委の判断で、去年、子どもの自殺事案が発生した直後に作るべきなのではないでしょうか。それをわざわざ、今頃になってつくるのはどうしてなんでしょうか?? 第三者委員会が近々立ち上がりますが、「第三者委員会からいろいろ指摘され、文句言われる前に、こっちから先に再発防止策などをつくっておこう」という魂胆なのでしょうか?? どうして、第三者委員会の活動に市教委として積極的に協力し、その第三者委員会が出す結論や再発防止策の提案に沿って、今後の再発防止策をつくっていこうという話にはならないのでしょうか?? 大津市教委の意図が理解できませんね。

それから、子どもが亡くなるに至る事実経過の検証と切り分けて、再発防止策だけを独立させて検討させることなんて、本当に可能なのでしょうか?? もしも第三者委員会が検証した事実経過やそれをふまえてでてきた再発防止策の提案と、この教育行政内部の検討作業の結果でてきた再発防止策とが、大きく食い違っていたとしましょう。そのときに、大恥をかくのは、大津市教委だと思うのですが、そういうことをいま、市教委として考えられないのでしょうか?? 

さらに、非公開で、教育行政の幹部が月2回集まる会議ですか・・・・。第三者委員会の調査に対する「想定問答集」でもつくるのでしょうか?? あるいは、従来、子どもの自殺事案などが起きたときに、各地の教育行政がよくつくっているような検討委員会を、大津市教委としてこのケースでもやりたいのでしょうか?? そういう過去の教育行政のつくる検討委員会が出した再発防止策などについて、遺族側がこれまでさまざまな形で疑問や不満をもってきたことを、大津市教委はわかっているのでしょうか??

そして、こうした非公開の教育行政内部の会議に、弁護士や教員が協力するとか。どんな立場で、誰が協力するんですかね?? 第三者委員会が動き始めようとしているときに??

このような次第で、いろんな意味で、「いったい、第三者委員会発足を前に、なにがしたいの、大津市教委??」と思うような動き方です。大津市及び大津市教委は、本気で第三者委員会をたちあげ、まじめに調査・検証ををすすめようとする気があるのかどうか、こういうことから疑問を抱いてしまいました。

最後にひとこと。

子どもが死にいたるまでの事実経過の検証と原因の究明作業をふまえないで、大津市教委、どんな形でいじめ自殺の再発防止策つくるんですかね??

その検証作業のための第三者委員会の設置なのに、それと切り分けた別の会議つくって、何がしたいんですか、大津市教委は?? 


大阪市の「校長公募」に思うこと。

2012-08-10 07:02:46 | いま・むかし

http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120807-OYO1T00862.htm?from=newslist (小中学校長50人を公募、大阪市:読売新聞(関西発)ネット配信記事、2012年8月7日付け)

今日から徐々にですが、こちらのブログでの記事更新を再開していきます。ようやく本業も落ち着いてきたのですが、出かける用事がいろいろ入ったり、大津の事件関連でいろいろと問い合わせ、取材などが相次いでいて、なかなか思うようにブログの更新まで手がまわりません。このような状況なので、しばらく不定期更新になります。
さて、今日はこの「校長公募」の記事をとりあげました。いよいよ、学校活性化条例が制定されたことにともなって、これに関連するさまざまな取り組みがはじまります。というか、大阪市の従来の公教育が「解体」されていく、そういうことがはじまるわけですが。
私はいつもこの手の「公募」に対して率直に抱く疑問があります。それは次のことです。
(1)「民間のノウハウを活かして」というけど、「民間」にもいろいろあるし、そのノウハウが学校の運営に活かされて、ほんとうに学校がうまくいくのかどうかわからない。何を根拠にそういうのか?
(2)仮に「学校にもうまく適用可能な民間のノウハウ」があるとしても、「公募」でそのノウハウの持ち主が集まってきて、必要なすべての校長の枠が埋まるとは限らない。どうして「公募」でならうまく、必要な人数の校長が集まると考えるのか?
(3)仮に「学校にもうまく適用可能な民間のノウハウ」があって、「公募で必要な人数の校長があつまる」としても、その集まった校長のひとりひとりが、実際にある学校で受け入れられ、定着するかどうかはわからない。どうしてというか、何を根拠に「公募」校長ならみんな、各学校でうまくいくと想定できているのか?
(4)仮に「学校にもうまく適用可能な民間のノウハウ」があって、「公募で必要な人数の校長があつまる」ことになって、「その公募校長が各学校にうまくなじんだ」としても、「その学校で実施された教育が、ほんとうに子どもや保護者、地域住民にとってプラスの結果を招くものなのかどうか」はわからない。いったい、何を根拠に、うまくいくと想定しているのか??
逆にいえば、この「校長公募」の裏には、<その公募をやろうとする側の抱く「民間のノウハウ」と、そこに集まってくるであろう公募校長への資質・能力などへの、自分にとって都合のいい想定>と、<学校の管理職や教育行政が指示・命令を出せば、教職員はなんでも都合よく動いてくれるという身勝手な想定>と、<校長公募などを通じて一連の学校改革がすすめば、子どもや保護者、地域住民は喜んでくれるという、根拠のない想定>の3つ、これが重なって存在しているように思われます。
でも、こんな甘い想定ばっかり積み重ねた取組みで、「ほんとうにこんなこと、うまくいくんですかねぇ?」としか、私には思えません。

現実に大阪市内の公立小学校を何校かまわる調査をしたときに、ある学校で聞いた話です。夏休みのこのお盆あたりの時期になると、校長・教頭の管理職ふたりは、手分けをして校区内の町会の盆踊りをまわるそうです。だから、校長・教頭のおふたりにはこの時期、休みがないとか。そうまでして、学校と校区内の住民とのつながりをつくって、何かあると学校を頼ってくれる、あるいは学校を支えてくれるような関係を維持しようと、校長・教頭はがんばって動いているわけですね。そしてそういう基盤があって、学校と家庭・地域社会の連携もなりたつのではないかと思うのですが。
しかし、こんな泥臭い、地道な営みを、はたして上から落下傘のように降りてくる「公募校長」はするのかどうか。
この「公募校長」たちが就任後、毎年、夏休みになると、自分は涼しい校長室に居て、部下たる教職員に「民間のノウハウではこうだ!」とあれこれ自分勝手な指示・命令をだし、その結果、子どもや保護者、地域住民は迷惑を被るし、教職員もせっかくのリフレッシュの機会を台無しにされる・・・・なんてことのないように願いたいですね。
ましてや、どこかの市長やそのまねをする区長のように、涼しい部屋からツイッターで教職員にあれこれ指示を出すような、そういう「公募校長」が出てこないことを願います。
「民間のノウハウ」をもって「公募区長」になった方には、下記のとおり、さっそく、ツイッターでいろんな問題を起こしている方もいますからねぇ。「民間のノウハウ」をどう見るかという問題もあるだろうし、「公募」で集まる人材も、集まる側の質の問題や、選ぶ側の見る目の問題があると、結局こうなるんだなぁと、下記の記事を見ていると思いますね。

http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120809-OYO1T00721.htm?from=main1 (ツイッター発言の淀川区長、橋下市長「処分」も:読売新聞(関西発)ネット配信記事、2012年8月9日)

まあ、ツイッター上での発言を含め、選挙で当選した橋下市長が言っていること、特に教育に関して言っているも、たいがい、どうにかしてますけど・・・・。このことは、またいずれ、このブログで書くことにします。


約2週間ほど、更新が途切れました&「やぶへびかい」の告知

2012-08-04 07:05:57 | いま・むかし

この2週間ほど、こちらのブログ、更新が途切れました。ほんとうに申し訳ないです。とうとう可決してしまった大阪市の「学校活性化条例」のこと、大津市の中学生自殺問題のこと、その他いろいろ書きたいことは山ほどあったのですが、本業のほうが忙しくてなかなかこちらまで手がまわりませんでした。夏休みにようやく本業が入りましたので、徐々に生活を切り替えて、こちらのブログでも何か発信できるようにしていきたいと思います。
さて、今日のところはひとまず、午後からのイベント「やぶへびかい」の告知だけさせていただきます。詳しくはこちらのブログをどうぞ。
http://ameblo.jp/yabuhebikai/entry-11310902591.html
落語家の笑福亭竹林さん、ドキュメンタリー映画の監督の刀川達也さん、そして私。
この3人の「子育て」をめぐるトークイベントが、この「やぶへびかい」です。
また、3人のトークだけでなく、竹林さんの落語も予定されていると聞きます。
あと、刀川さんは児童養護施設の子どもとスタッフの関係を追い続けた映画「隣る人」の監督でもあります。そして、終了後は懇親会もあるのだそうです。雰囲気的には「夏の夕涼みの会」みたいにしたいそうで、私、浴衣を着て竹林さん、刀川さんと話をするそうです。
・・・・とまあ、ここまでは書けるのですが、実は「でたとこ勝負でいきましょ」という竹林さんの意向もあって、あんまり細かいこと決まってません。「実際に会場に来てください」ということですね。ひとまず、イベントの告知でした。

ひとまず、