できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

2042冊目:泥憲和『安部首相から「日本」を取り戻せ!!』かもがわ出版

2014-11-28 22:22:17 | 本と雑誌
2042冊目はこの本。
泥憲和『安部首相から「日本」を取り戻せ!! 護憲派・泥の軍事政治戦略』かもがわ出版、2014年

元・自衛官で護憲派の著者が、安倍政権の集団的自衛権容認や従軍慰安婦問題への対応などを徹底的に批判した本。
基本的には「同感だなあ」と思う部分ばかりだし、憲法9条が日本を守ってきたこと、憲法9条を活かした外交・防衛政策のあり方を提案しようとする姿勢には好感がもてた。
あと、この本で展開されている著者の憲法9条解釈からは、日本国憲法制定時の「芦田修正」を思い出した。

安倍首相から「日本」を取り戻せ! !

2041冊目:内田樹『内田樹の大市民講座』朝日新聞出版

2014-11-28 22:14:08 | 本と雑誌
2041冊目はこの本。
内田樹『内田樹の大市民講座』朝日新聞出版、2014年。

今月末で今までブログを運営していたOCNのサービスが終了されるので、今後はこちらのgooブログがメインになる形で情報発信を続けます。今までOCNで行っていた「本の紹介」も、こちらのブログで、このようなスタイルで継続します。なお、タイトルにある冊数は、前のブログ開設時から続けている「本の紹介」の冊数です。

さて、この内田樹さんの本ですが、アエラに連載されていたものをまとめたもの。
政治、経済、社会、文化、そして教育のその時々の動きに対して、内田さんが900字程度の文章で何年か連載されていたんですね。
民主党政権や自公政権への批判、あるいは日本維新の会や大阪での橋下市長らの動き等々への批判など。
内容的にはあまり違和感がなく、すっと読めました。
ただ、こういうまっとうな議論をメディアでする人が、ほんとうに少なくなりましたね。

内田樹の大市民講座

2040冊目:宮田律『イスラム 中国への抵抗論理』(イースト新書)

2014-11-26 16:09:26 | 本と雑誌
2040冊目はこの本。
宮田律『イスラム 中国への抵抗論理』(イースト新書、2014年)

中国のウイグル人の問題を中心に、中央アジアの政治・社会情勢について論じた本。
テーマは興味深いものだが、もう少し整理して本にまとめることができたのでは・・・と思った。きっと章立てを入れ替え、構成を練り直したら、もっとクリアに中央アジア情勢が描けそう。

イスラム 中国への抵抗論理 (イースト新書)

2039冊目:松尾匡『ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼』PHP新書

2014-11-22 13:25:00 | 本と雑誌
2039冊目はこの本。
松尾匡『ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼 巨人たちは経済政策の混迷を解く鍵をすでに知っていた』
(PHP新書、2014年)

現代経済学の学説史的な見取り図をアタマに描くのには、まさにうってつけの本かな、と思った。
なにしろ、ハイエク、フリードマンら新自由主義につながる経済学者の学説の変遷を、ケインズ派と何がちがうかという点からおさえて整理しようとしてくれているので。
ただ・・・。
この本の後半、著者がインフレ目標論やベーシックインカム論を肯定的に書いているあたりは、「そんなにうまいこといくのかな?」という疑問しか出てこなかった。
それこそインフレ目標論なんて「政府の経済政策や中央銀行の金融政策への信頼」が前提にあってはじめて成り立つのだろうけど、でも、それが大きく揺らいでいるときには、やっぱりうまくいかないのでは?
「政府は数%のインフレが来ると言っているけど、ほんとうに実現できるの?」と思われてしまえば、やはりそこにはリスクをとることを躊躇する国民の心情が生まれ、期待したとおりの経済の安定化や成長は見込めなくなるのでは・・・??
こういう「政府や中央銀行への信頼、信任」という問題を著者がどう考えているのか、聴いてみたいところです。

ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼 (PHP新書)

2038冊目:名越康文『どうせ死ぬのになぜ生きるのか』PHP新書

2014-11-22 13:11:42 | 本と雑誌
2038冊目はこの本。
名越康文『どうせ死ぬのになぜ生きるのか 晴れやかな日々を送るための仏教心理学講義』
(PHP新書、2014年)

ついこの前まで隣の研究室に居た名越康文さんの新著。
(名越さん、2013年度まで、うちの大学の客員教授として集中講義等々に来ていただいていたので)
この本を読んで、「ああ、そうなんだ」と、自分のしてきたことの持つ意味にひとつ、気付きました。
具体的には第3章のところで、日常生活のなかで掃除やアイロンがけなど、何気ない家事に没頭することが持つ「行」としての意味を名越さんが解説しているあたり。
私はわりと掃除や後片付けが好きで、それをするとなぜかスッキリした気分で次の仕事に移れるのですが、そのことの持つ意味をこの本から教えていただいた気がします。

どうせ死ぬのになぜ生きるのか (PHP新書)

2037冊目:植村修一『不祥事は、誰が起こすのか』日本経済新聞出版社

2014-11-22 13:04:12 | 本と雑誌
2037冊目はこの本。
植村修一『不祥事は、誰が起こすのか』(日本経済新聞出版社、2014年)

タイトルと本の帯にひかれて書店で購入したが、やや期待外れ。
いろんな企業不祥事や事故・事件等で設置された第三者調査委員会の報告書を読んで、その内容をふまえて何かリスク管理等々について論じようとしてきたことはわかるのだが・・・。
筆者のなかで課題意識が十分に整理されないまま、いろんな事例が羅列されているような印象。それだけに、報告書からわかる個々の事例については面白いのだけど、この本全体として「で、何が言いたいの?」というような印象を受けた。


不祥事は、誰が起こすのか (日経プレミアシリーズ)

2036冊目:高木慶子『悲しみの乗り越え方』(角川oneテーマ21)

2014-11-17 22:14:35 | 本と雑誌
2036冊目はこの本。
高木慶子『悲しみの乗り越え方(角川oneテーマ21)』(角川書店、2011年)

内容的には他の本で書いてあることと重複している感じなので、特にコメントはない。

プロバイダがブログサービスを終えるということで、そろそろ前のOCNブログが閉鎖される頃。もういい加減、こっちのgooブログでの操作に慣れないと・・・。

悲しみの乗り越え方 (角川oneテーマ21)

「体罰をみんなで考えるネットワーク」設立記念シンポジウムのお知らせ

2014-11-17 13:40:59 | 私の「仲間」たちへ
もう年明けの話になりますが・・・。
このたび、「体罰をみんなで考えるネットワーク」の設立記念シンポジウムを、来年1月11日(日)14時40分~17時、龍谷大学梅田キャンパスにて行います。
詳しいことは別添の画像を参照してください。

2035冊目:結城昌治『軍旗はためく下に』中公文庫

2014-11-13 21:53:09 | 本と雑誌
2035冊目はこの本。
結城昌治『軍旗はためく下に』(中公文庫、2006年=初版1973年)

アジア太平洋戦争末期の戦場で陸軍刑法に基づいて裁かれ、処刑された兵士たちについて綴る・・・というスタイルでの小説。
そのモデルになった事件がいくつか著者のところに情報としてあったのだろうから、フィクションとはいえ、「こういうことはきっと戦場では起きていたのだろうな」という想像をかりたてる作品になっている。

軍旗はためく下に (中央文庫BIBLIO)

2034冊目:庄井良信『いのちのケアと育み 臨床教育学のまなざし』(かもがわ出版)

2014-11-13 16:57:32 | 本と雑誌
2034冊目はこの本。
庄井良信『いのちのケアと育み 臨床教育学のまなざし』(かもがわ出版、2014年)

この本も、基本的には好意的な印象をもって読み終えた。
特に「6 ケアし合うかかわり合い」の部分で、心理学者のワロンの指摘などを紹介しながら、「泣くという行為は人間にとって、他者との絆を生み出すための大切ないとなみだ」(p.90)などと書くあたりは、私が普段「応答的なかかわり」と講演などで言ってきたことと重なるので、とても共感して読んだ。
ただ・・・。ワロンのどの本でこういうことを言っていたのか、ここで出典を明記してほしいところ。参考文献や出典を巻末で一括して表記しているのだけど、そこにもワロンの本は出ていなかったし・・・。

いのちのケアと育み

2033冊目:田坂広志『知性を磨く―「スーパージェネラリスト」の時代』(光文社新書)

2014-11-13 16:53:06 | 本と雑誌

2033冊目はこの本。
田坂広志『知性を磨くー「スーパージェネラリスト」の時代』(光文社新書、2014年)

タイトルにひかれて読んだし、第1章のタイトルでもある「なぜ、高学歴の人物が、深い知性を感じさせないのか?」という言葉が新書の帯にも書いてあって、とても興味深く読んだ。
ただ、全体的に詩的な表現が多くて、今の専門的な学問・研究のあり方を実証的に考察して論じているのかな・・・と思って読むと、ちょっと肩すかしな感じもした。
言わんとすることはよくわかるのだけど・・・。

知性を磨く― 「スーパージェネラリスト」の時代 (光文社新書)


2032冊目:教育科学研究会編『いじめと向き合う』(旬報社)

2014-11-13 16:47:59 | 本と雑誌
2032冊目はこの本。
教育科学研究会編『いじめと向き合う』(旬報社、2013年)

基本的に、いわゆる「厳罰主義」的ないじめ対応の路線に批判的な立場から書かれている点や、子どもどうしの関係のつくりかえを教職員がどう支援していくかを実践を踏まえて論じようとしている点で、私も納得できる部分がたたあった。
ただ、子どもの人権救済活動とか、オンブズパーソン制度とか、学校外の居場所づくりや相談活動等々、学校の外で行われている多様ないじめ被害を受けた子どもへの支援についても、この本でもう少し触れてほしかったところ。
学校の中での対応だけですべて議論をまとめてしまうのにも、無理があるように思うのだが。

いじめと向きあう

2030冊目:鈴木哲夫『ブレる日本政治 とてつもなく美しくない国へ』(ベスト新書)

2014-11-08 23:37:26 | 本と雑誌
2030冊目はこの本。
鈴木哲夫『ブレる日本政治 とてつもなく美しくない国へ』(ベスト新書、2014年)

タイトルにひかれて買ったのだけど・・・。
確かに今の安倍第二次政権の政策や外交等々について批判的に言及しているのだけど、「詰めが甘い」というか、「肝心のところで批判しきれていない」というのか・・・。
全体的に自民・民主の両党の政治家に期待しつつ、でも安倍第二次政権の政策には疑問符がある、みたいな感じの論じ方なので。
もっと徹底的に「ダメなものはダメ」と言い切ったほうがいいようにも思うのだけど。

ブレる日本政治 (ベスト新書)

2029冊目:美馬達哉『リスク化される身体 現代医学と統治のテクノロジー』(青土社)

2014-11-07 10:00:51 | 本と雑誌

2029冊目はこの本。
美馬達哉『リスク化される身体 現代医学と統治のテクノロジー』(青土社、2012年)

医療社会学の本ではあるけれども、リスクマネジメント論やリスク社会論の前提にある「リスク」という概念の問い直しから議論を出発させているので、学校事故・事件関連での「リスク」論への批判とも内容が通じる部分があって、とても興味深い一冊。
そもそも「リスク」かということ自体が、その社会・文化の支配的な価値意識との関連のなかで浮上すること。「リスク」をコントロールしようとする技術が新たな「リスク」を生み出す危険性。あらゆる「リスク」の未然防止をしようとすると監視社会的になるとか、甚大な「リスク」がある事態を想定しての対応、「危機管理」的な対応は、だんだん「戦争指導」に近づくこと。そして原発事故のような破局的な事態を想定して「リスク」予測をする議論は、だんだんSF小説的なストーリーに近づく、等々。
おそらくこの本で指摘されている「リスク管理」に関する諸課題が、学校事故・事件関連のことでも指摘できそう。そういう諸課題に気付くことなく、安易に「学校のリスクマネジメント」とか言うている学校事故・事件問題の研究者は、もはやダメだろうなあ・・・。

リスク化される身体 現代医学と統治のテクノロジー