今日・明日と、神戸で「全国学校事故・事件を語る会」の年1回の大集会(全国集会)が開かれます。当然ですが、おととしから事務局メンバーのひとりになった私は、この大集会に裏方として参加してきます。どんな様子だったかは、また後日、このブログで書こうと思います。
それで、この学校事故・事件の問題にも多少関連するのですが、例の大阪府・橋下知事と大阪維新の会が「君が代」起立条例を府議会で可決させようとしている件について、ひとつ、この場でご報告・ご紹介です。下記のホームページを見てください。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~hotline-osk/kiritu-zyourei-seimei.html
これは、「君が代」起立条例に反対するアピールを行った市民団体のホームページです。ここの賛同者のなかに、私の名前を見つけることができます。まずはそのことをご報告・ご紹介させていただきます。その上で、今、この問題について私の思うことを書きます。
当たり前の話かと思いますが、このブログを見ている方は、次のどちらの教員のほうが、子どもや保護者にとって信頼できる教員だと思いますか。私ならば間違いなく後者、(2)を選びます。
(1)教育委員会や上司の指示に忠実で、すべて言われたとおりに行動するが、子どもの命を守ることには消極的で、学校事故や事件の防止策を積極的にとろうとしない教員。
(2)教育委員会や上司の指示に時には逆らってでも、自分の専門的な知識・技能や見識に基づいて、子どもの命を守ることに積極的で、学校事故・事件の防止策もきちんと実施していこうとする教員。
この「君が代」起立条例は、(2)ではなく(1)のタイプの教員を増やそうというもの。なにしろこの条例、学校儀式で国旗掲揚・国歌斉唱をする際に、その場で立っていたか座っていたか、うたったかうたってないかみたいな、そういうことを基準にして、「自分たちの職務命令に従わなかった」という教員を「処分する」という根拠条例を作ろうとしているわけですから。
要は、それが教員の思想信条の自由の問題としてどうかというのではなく、教員が「職務命令に従うか従わないか」だけを問題にしているわけですね、この条例案。
そもそも、いくら公立学校現場の教員が「職務命令に従う義務」をもつとはいえ、そもそも法令違反の命令が上から出てきた場合は、それに従う義務は解除されると考えたり、むしろ、そういう法令違反の命令を止めさせる努力をするほうが大事だと考えるべきなのではないでしょうか。
なにしろ、日本国憲法には公務員の「憲法尊重擁護の義務」(99条)が、地方公務員には「法令遵守の義務」(32条)あるわけですからね。おまけに、『解説教育六法(2011年版)』の地方公務員法33条の「判例」部分には、「上司の命令であることを理由に、法規の範囲内においてこれに服従する義務があるのであって、これを逸脱した命令である限り、これに服従する義務はない」(大分地裁昭33・8・4)ということも指摘されていますしね。
とすれば、次のとおり大阪弁護士会が会長声明という形で、橋下知事や大阪維新の会の条例提出の動きに対して、憲法違反・法令違反の疑いが濃厚であることを指摘している点を、府知事や維新の会サイドはどう考えるのか、ということになりますよね。
http://www.osakaben.or.jp/web/03_speak/seimei/seimei110524-2.pdf
要するに、ここで今、問題になっているのは、部下にコンプライアンス(法令遵守)や職務命令を守る義務を説く上司側が、そもそも憲法違反・法令違反の職務命令を出すという危険性、それをどう考えるのか、ということです。
ちなみにこの問題、大阪市役所の「市民の声」のコーナーに、以前、大阪市内の青少年会館条例廃止が問題になっていた頃、似たような質問をして、大阪市総務局からのお返事を得たことがあります。下記にそのときのやりとりと、大阪市総務局側のお返事が載せてありますので、見てください。(2006年9月26日に質問して、10月26日に返答を得ています)
http://tsuyokun.blog.ocn.ne.jp/seisyonenkaikan/cat4923707/
ついでなので、そのときの大阪市総務局側からのお返事、それも引用しておきます。
<以下、大阪市総務局からの回答>
違法な職務命令については、当該職務命令に重大かつ明白な瑕疵がある場合には従う義務がないと考えております。もし、上司が違法な指示をしたときには、部下は意見を述べ上司の再考を促すことができます。しかしながら、通常の業務遂行においては、そのような事態は少ないと思われます。
本市では、コンプライアンスの観点から、違法な命令が発せられるといった事態に陥らないよう、普段からコンプライアンス意識を養い、法令の知識を習得し、また、いつでも上司と部下が相談できる風通しの良い職場づくりを心がけるなどの日常の取り組みが大切と考えております。
そこで、本市では本年9月から、職員のコンプライアンス意識の向上等を目指して「コンプライアンス研修」を実施しています。
<以上で引用おわり>
いかがですか?
府知事や維新の会が何かとせめたてる大阪市役所ですが、私は彼ら大阪市総務局側の回答のほうが、今の府知事や維新の会の主張よりも、よっぽど「まとも」だと思います。
だから到底、このような府知事や維新の会の動きに、私としてはとても納得することができません。というか、維新の会の地方議員のみなさんも特別職とはいえ地方公務員ですから、「憲法尊重義務」や「法令遵守義務」があるはず。自らの地域政党の代表があまりにも問題の多い発言をしたり、法令違反や憲法違反の疑いが濃厚な指示を出そうとしたときには、自らの法令上の義務に照らして、それを止めさせる努力をするべきではないでしょうか。
と同時に、今の私にはその一方で、「あなたたち、今、きちんと批判すべきこと批判する意見表明ができなくて、なんのための人権教育なの?」という思いもあります。
先の市民団体のホームページ上での意見表明、あれを見てください。あそこに大阪府内の大学等で「人権教育」や「子どもの人権」に関わる研究をしてきた人たち、何人まじってますか? 大阪府内の公立学校などで「人権教育」や「子どもの人権」に関わる実践をしてきた人たち、どのくらいいますか?
もちろん、自分たちがまさにターゲットとして狙われているということもあって、それだけに動きづらいということもあるのかもしれません。
でも、今、ここで、大阪府政の動きに対して、きちんと批判すべきことを批判して、おかしいことをおかしいという。そのことができないで、なんのための「人権教育」なのか?
私としてはそのことも、この場であわせて、伝えておきたいと思います。
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