できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

あらためて学校保健安全法のことを

2013-07-29 23:11:55 | ニュース
晩ごはんまで時間があったので、今夜のNHKニュースウォッチ9を見ました。
そこでは、この間、いろんな形で私がかかわってきた、京都の小学校でのプール事故の話が出てました。
確か、ちらっとだけですが、最後のほうで、私が先月やった講演会の場面も出てましたね。
演題に貼ってあった垂れ幕に「住友・・・」って名前でてましたので。
※なお、この事故で立ち上がった第三者調査委員会の件について、いろいろコメントしたいことがあります。そのことについては、また別の日に書くことにします。

それはさておき。番組を見ていて、ふと気づきました。
最後のところでNHKが文科省に事故防止のことで質問をして、「重大事故が起きるたびに自治体から情報を集めて、注意喚起をしている」という返答を得たって言ってました。
そのときにふと、<「学校保健安全法の趣旨に照らしてみて、注意喚起程度の今の文科省の対応でいいのか?」とマスコミが問いかけたら、文科省、どう反応するのかな?>って思ったんですよね。
なにしろ学校保健安全法の第3条には、次のような条文があります。

(国及び地方公共団体の責務)
第三条  国及び地方公共団体は、相互に連携を図り、各学校において保健及び安全に係る取組が確実かつ効果的に実施されるようにするため、学校における保健及び安全に関する最新の知見及び事例を踏まえつつ、財政上の措置その他の必要な施策を講ずるものとする。
2  国は、各学校における安全に係る取組を総合的かつ効果的に推進するため、学校安全の推進に関する計画の策定その他所要の措置を講ずるものとする。
3  地方公共団体は、国が講ずる前項の措置に準じた措置を講ずるように努めなければならない。

学校で起きた悲しい事故・事件のひとつひとつが、この法律でいう「最新の知見及び事例」だと考えたら、文科省、「注意喚起」程度のことでは済まされないって思うんですけどね。また、第三者委員会立ち上げて子どもが亡くなった事例の検証作業をきっちり行っていくのも、この学校保健安全法の趣旨からも導きだせると思うんですが・・・。

あと、学校保健安全法の26条以降の「第三章 学校安全」には、こんな条文が。

(学校安全に関する学校の設置者の責務)
第二十六条  学校の設置者は、児童生徒等の安全の確保を図るため、その設置する学校において、事故、加害行為、災害等(以下この条及び第二十九条第三項において「事故等」という。)により児童生徒等に生ずる危険を防止し、及び事故等により児童生徒等に危険又は危害が現に生じた場合(同条第一項及び第二項において「危険等発生時」という。)において適切に対処することができるよう、当該学校の施設及び設備並びに管理運営体制の整備充実その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(学校安全計画の策定等)
第二十七条  学校においては、児童生徒等の安全の確保を図るため、当該学校の施設及び設備の安全点検、児童生徒等に対する通学を含めた学校生活その他の日常生活における安全に関する指導、職員の研修その他学校における安全に関する事項について計画を策定し、これを実施しなければならない。
(学校環境の安全の確保)
第二十八条  校長は、当該学校の施設又は設備について、児童生徒等の安全の確保を図る上で支障となる事項があると認めた場合には、遅滞なく、その改善を図るために必要な措置を講じ、又は当該措置を講ずることができないときは、当該学校の設置者に対し、その旨を申し出るものとする。
(危険等発生時対処要領の作成等)
第二十九条  学校においては、児童生徒等の安全の確保を図るため、当該学校の実情に応じて、危険等発生時において当該学校の職員がとるべき措置の具体的内容及び手順を定めた対処要領(次項において「危険等発生時対処要領」という。)を作成するものとする。
2  校長は、危険等発生時対処要領の職員に対する周知、訓練の実施その他の危険等発生時において職員が適切に対処するために必要な措置を講ずるものとする。
3  学校においては、事故等により児童生徒等に危害が生じた場合において、当該児童生徒等及び当該事故等により心理的外傷その他の心身の健康に対する影響を受けた児童生徒等その他の関係者の心身の健康を回復させるため、これらの者に対して必要な支援を行うものとする。この場合においては、第十条の規定を準用する。
(地域の関係機関等との連携)
第三十条  学校においては、児童生徒等の安全の確保を図るため、児童生徒等の保護者との連携を図るとともに、当該学校が所在する地域の実情に応じて、当該地域を管轄する警察署その他の関係機関、地域の安全を確保するための活動を行う団体その他の関係団体、当該地域の住民その他の関係者との連携を図るよう努めるものとする。
これ読んだら、なおさら、過去の事故の検証結果に学んで、再発防止策などをきっちりつくらなくちゃいけない・・・ってことになりますよね。

ということで、この書き込みを見ているご遺族と支援者のみなさん、マスコミ関係者の方、学校の教職員や教育行政関係者の方、そして教育学や他の領域の研究者のみなさん、あらためて学校保健安全法の中身の確認をしてください。

あ、そうそう、忘れそうだからついでに。
学校保健法26条にいう「加害行為」について、文科省の公式見解では「児童生徒間の暴力」を含んでいます。だから暴力系のいじめについては、この学校保健安全法で防ぐ対象といってもいいわけです。ですがこの「加害行為」に、「体罰」は含まれているのかどうか・・・。そもそも学校教育法で禁止しているから書いていないのでしょうけど、現実に子どもへの「加害行為」として「体罰」が起きているわけですからねぇ・・・。

※フェイスブックにもほぼ同内容のことを書きこんでいますが、若干、こちらのほうは手直ししています。



昨日は反体罰NPO・研究者連絡会の大阪集会でした。

2013-07-08 19:35:17 | 受験・学校
<以下は反体罰NPO・研究者連絡会のフェイスブックページに、西の共同代表として私(住友剛・京都精華大学)が書きこんだことを転載したものです>

おかげさまをもちまして、昨日(7月7日)、無事に反体罰NPO・研究者連絡会の大阪集会を終えることができました。
参加されたみなさん、集会準備に携わっていただいたみなさん、ほんとうにありがとうございました。
ちなみに、参加者は約50人で、用意していた部屋が(もともと小さめでしたが)満杯になりました。また、終了後の懇親会にも、私たち集会を準備をしたメンバー以外に残った方が参加されました。
今回の集会では、時間は限られていましたが、研究者(教育学・児童福祉学・社会学)、弁護士、NPO、スクールソーシャルワーカー、そして退職教員(校長)からの報告を通じて、「体罰」を支える意識や社会の仕組みの問題を、学校・家庭・地域社会のさまざまな面から、集中的に考えることができたように思います。
そして、報告や質疑応答(短い時間でしたが)を通じて、「子ども観の転換」や「指導の問い直し」の重要性、また、こうした転換・問い直しを支えるためのおとなの側の条件の問題など、さまざまな課題が見えたように思います。
そして、集会参加者のアンケートや懇親会の席で出た意見としては、「今後も継続してほしい」「(名古屋や熊本など)他都市での開催を期待」という声もでております。
私としては、こうした参加者の声などをふまえつつ、ひきつづき、大阪に限定せず、広く西日本のエリアでこの会の活動が継続できるように、いろんな取り組みを考えていきたいと思っています。
今後とも、みなさんのご協力・ご支援をよろしくお願いします。