できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

見当違いのことばかりのようにも思うのですが??

2012-07-22 21:42:22 | ニュース

おととい(7月20日)の夜、NHK大阪放送局制作のテレビ番組「かんさい熱視線 なぜ真実がわからない~大津市中学生自殺問題~」に、私はゲスト(コメンテーター)として出演しました。はじめてのテレビの生放送番組への出演、とても緊張しました。この番組出演の裏話的なことは別のブログに書いたので、ここではこれ以上書きません。
それより、私は「あなたたち首長や教育行政の責任者は、まったく、見当違いのことばかり議論しているのではないのか?」と思うことが、この大津市で起きた悲しい出来事を前に多々見られますので、今日はそのことを指摘しておきます。

まず、この嘉田滋賀県知事の「教委設置自治体判断で」という記事から。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120719-00000030-kyt-l25 
はっきりといいます。教育委員会を公選制にしようが、従来のまま首長の任命・議会の同意というシステムにしようが、地方教育行政を首長の下に置くシステムをとろうが、そういうことは、今回の大津の一件とは何も関係がない。
起きてほしくはないけれども、学校で子どもが亡くなる事態は今後も起きることかと思う。その子どもが亡くなる事態が生じたときに、学校及び教育行政がきちんと事実究明を行い、遺族に謝罪とともに経過の説明をする。そういうシステムをどのように確立するかという問題が今、このたびの大津の一件では問われているのです。
教育委員会を公選にすれば、あるいは、首長が直接、教育行政を担えば、学校や教育行政の「事実隠し」がなくなるなんて保障、どこにあるんですかね??? たとえば、武田さち子さんが書かれた『保育事故を繰り返さないために』(あけび書房、2010年)によりますと、首長部局の下にある公立保育所で事故が起きて、子どもが亡くなった場合にも、やっぱり「責任を回避するために事実調査をしない、調査した内容を被害者に伝えない、責任を否定する、というものが多くあります」(p.93)とのことです。これなどを読むと、今のまま被害者遺族への説明やその前提となる原因究明のシステムが確立されないまま、首長が今後、教育行政を担ったとしても、やはり従来の対応と同じことになりかねないのではないか、とすら思えてなりません。
「こういうことを言う前に、もっとまじめに被害者遺族の思いに誠実に向き合い、原因究明や遺族への説明のシステムを滋賀県及び大津市として確立すべきでは?? どさくさにまぎれて、教育行政のリストラ策を提案するのだけはやめてほしい」と、先の嘉田知事の発言に関する記事を見て思いました。

次に、大阪府教委の陰山英男教育委員長の次のコメントですが。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120720/lcl12072014520002-n1.htm
この陰山教育委員長のコメント、なんとか深刻ないじめ自殺事案が起きる前に、できるだけ被害を受けている子どもを守りたい、いじめている子どもと引き離したい、だから出席停止措置を・・・・という、そういう心情に発しているコメントであることは、私も理解しています。
ですが、「深刻な自殺事案が起きる前に」やるべきことをいくら論じたとしても、今回の大津の一件で見られたような学校・教育行政の深刻な事案発生後の対応の諸問題、たとえばきちんと調査をしないとか、遺族側への説明が不十分とかいったような問題は、一向に解決しません。大阪府教委として、深刻な事案の発生後どのように遺族に誠実に向き合い、事実経過を把握し原因を究明していくシステムをつくるのか。そこを本来、教育委員長として問題提起すべきだったのではないでしょうか。
ちなみに、文科省はこれまでに何度も学校での子どもの問題行動への対応に関して、出席停止措置の積極的な適用を各地の学校・教育行政に求めてきました。特にこの十年近くは、その傾向は強かったように思います。また、陰山英男氏が委員としてかかわっていた「教育再生会議」の第一次報告(2007年1月)でも、出席停止措置の活用は提案されていました。にもかかわらず、今回の大津の一件のようなことが起きたわけです。そのことについて、文科省や陰山氏など教育再生会議に関わった人々はどのように考えるのでしょうか。出席停止措置の運用のあり方を含め、この何年かの「いじめ」防止策の中身の検討作業も必要ではないのかな・・・と、率直に思いました。
あと、「教育再生会議」の第一次報告には、「学校は、いじめが起こった原因・背景を調査・検証し、是正を行う」という項目があります。これなどは積極的に活用すれば、いじめ自殺の遺族側が求めるような事実経過の説明、その前提となる原因究明の作業を行うシステムづくりにつながるはずなのですが、「どうして今まで、文科省や各地の教育行政などは、そのシステムづくりをやってこなかったの?」と思いますね。

私が思うに、これまでの「いじめ」防止策ではなぜ今回の大津の一件のようなケースが防ぎきれなかったのか。そのことを検証するためにも、「なぜこの子どもが追いつめられて、亡くなってしまったのか?」ということを、学校・教育行政が外部の有識者などの力を借りながら、徹底的に検証していく。その結果を、遺族へ、さらには社会的に発信していく。その上で、これまでの防止策を見直し、よりよいものへと充実させていく。亡くなった子どものまわりにいた子どもたちに対しても、おとなたちが起きた悲しい出来事をふまえて、誠実に変わっていこうとしている姿を見せていく。そういうことが、これからの「いじめ」防止のとりくみとして必要不可欠なことなのではないか、と思っています。だから、陰山教育委員長の気持ちもわからなくもないのですが、従来通りの防止策を強化するだけしか提案できないのであれば、「それって、どうなの? もう少しほかのことを考えてもいいのでは??」と思ってしまいました。

最後に、「これって、どうなの?」と疑問に思った首長の提案、それを紹介しておきます。
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201207200035.html
橋下市長が大阪市議会で、「IT端末のボタンを押せば簡単に先生や教育委員会にSOSが伝わるような、匿名の情報提供の環境づくりを考えるべきだ」という趣旨のことを述べたとか。
「匿名での電話相談」ならまだしも、その電話をかけてきた子どもと相談対応にあたるスタッフとのやりとりのなかで、いじめの被害にあった子どもをサポートして、適切に対処することが可能かと思います。実際、チャイルドラインなどの子どもの電話相談ではそのような対応をしているでしょう。
しかし、電子メールで来るのか、掲示板みたいなところに書き込むのかわかりませんが、ある程度の継続性をもって対処できるような「ネット空間での相談システム」ならさておき、単にSOSを伝えるだけの「情報提供」のシステムをつくって、どうするんですかね?? その匿名での発信をキャッチした教育行政などの担当者も、対応に苦慮するだけだと思うのですが・・・・。
おそらく、すでにインターネットを活用した相談システムをとっている団体などでも、きっと単発での対応というより、返信をていねいに出したりしながら、なんとかその被害にあっている子どもと継続的な関係をつくろうとしているのではないでしょうか・・・・。
「もう少し、子どもが匿名で相談できるシステムの設置などを提案するのなら、事前にしっかり、これまでの相談機関ではどういう対応をしているのか、情報を集めてから言えばいいのに」と、率直に思いました。
今日のところは、このあたりにて失礼します。





今度は大阪市長のリーダーシップが問われます。

2012-07-16 17:59:43 | ニュース

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120716-00000463-yom-soci
この記事にあるとおり、大阪市の西成区で、16日の早朝、中学2年生の女の子が亡くなりました。転落死なのか、自殺なのか。マンションの屋上の手すりを乗り越えたあとがあるそうですが・・・・。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120715-00000064-mai-soci
この記事にもあるとおり、昨日15日の午後にも、大阪市の東淀川区で中学3年生の男の子のマンションからの転落死という悲しい出来事がありました。

大津市での中学生の「いじめ」自殺事件のあとに起きた、大阪市内の中学生の悲しい出来事です。また、橋下大阪市長があれだけ、大津市教委の対応を罵倒したあとです。
このような大阪市内で起きた中学生の悲しい出来事に対して、市長としての彼はいったい、今後、どのような対応をするのでしょうか?

徹底的にこのふたりの中学生の死の背景に何があったのか、大阪市教委や当該の学校に対して調査を行い、遺族側に適切に説明するよう、市長として「要請」をこの際、するのでしょうか?
あるいは、「もう二度と、このような悲しい死を迎えてはならない」とアピールをして、市政改革プランの見直しを指示し、子どもの人権相談や子どもの安全・安心な暮らしづくり、セーフティネットの形成にかかわる予算の削減、施設の統廃合などをとりやめにする。そういう決断を市長として彼は行うのでしょうか? 
さらに、大阪市立の学校園や市教委の取り組み、あるいはこども青少年局の関連事業などを通じて、今後、積極的にいじめ防止や子どもの自殺防止に関するキャンペーンをはっていくなど、何か具体的な施策の提案を明日以降、市長としての彼はするのでしょうか?
こういったことを誰かに指摘される前に、自らのリーダーシップを発揮する形でするのでなければ、「先日の大津市教委を罵倒した発言、あれはいったいなんだったの?」と、市長としての彼の見識に疑問符がますますつくのではないでしょうか?
ひとまず、私のほうからは、このことを先に指摘しておきます。


いじめ問題への対応で首長が責任もってやるべきことは何か?

2012-07-14 21:39:29 | いま・むかし

またしばらく更新が途切れました。なかなか思うようにブログの更新の時間が取れず、申し訳ありません。

でも、そうしている間にも、大阪市議会では橋下市長(維新の会)・公明党市議団の協議により、学校活性化条例や市職員の政治活動を規制する条例などの修正合意ができたとか。下記の記事を参照してください。
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201207130032.html

一方、西成区などで行っている子どもの家事業を学童保育関連の事業に統合しようという市政改革プランに関連して、あるテレビ番組に出て批判的なコメントをした公立高校教員に対して、橋下市長は相変わらず、ツイッターで罵倒しています。その様子は、下記でわかります。
http://kiziosaka.seesaa.net/article/279998082.html

そして、例の大津市の中学生のいじめ自殺事件に関しても、橋下市長は「日本の教育行政の膿」等々、大津市教委を罵倒する発言を行っています。そのことは、下記でわかります。
http://kiziosaka.seesaa.net/article/280541038.html

しかし私は思うのですが、もしも今の大阪市内の公立学校で何か重大な事故・事件が生じたときに、橋下市長がほんとうに首長として責任ある対応をとるのかどうかは、たいへん怪しいところかと思っています。

これは私のうがった見方でしかないのですが、おそらく訴訟で大阪市あるいは大阪市教委の責任が問われるような事態が生じれば、彼は態度を豹変して、一点「守り」の態勢に入ったり、実際にあったことを「なかったこと」のように言ったり、学校や教育行政の非よりも亡くなった子どもやその保護者の非を大きく言いつのるのではないか。そのような懸念があります。

もしも本当に今の教育委員会の学校事故・事件後の被害者遺族対応のあり方に、彼が大阪の首長として疑念があるのであれば、まずは大阪市教委の教育委員及び市教委の事務当局に対して、「同様のケースが生じないように、万全の体制をとってほしい」と、速やかに要請をするべきでしょう。

また、「過去のケースをさかのぼって、学校や教育行政の対応に誤りがなかったのか、検証作業をするべきだ」と、大阪市の教育委員及び市教委の事務当局に要望するべきでしょう。

さらに、いじめ防止や子どもの自殺防止に向けて、首長としての彼は、大阪市教委及びこども青少年局、市民局等々、関連する部署に「いっそうの対応強化を」という要請をするべきでしょう。

でも、そういったことを、彼はこの数日でやったのでしょうか??? 

私の知る限りですが、大津市教委を罵倒はしたかもしれませんが、何か具体的に大阪市教委やこども青少年局に要請したという話は聞きませんよね。

もしも彼に本当に教育行政の膿を出し切ろうとか、子どものいじめ防止や自殺防止に努めようという気持ちがあるのなら、他市のことはさておき、自分が首長として責任をもってかかわれる大阪市において、やるべきことが多々あるはずです。

どうしてそこはしないのでしょうか? なぜ先に、他市の教育委員会を罵倒するのでしょうか? 筋違いの対応としか、私には思えないのですが。

私としては、この際、他市のことはどうでもいいから、まずは今すぐにでも、大阪市及び大阪市教委として、子どものいじめ防止、自殺防止や学校での事故・事件発生後の被害者遺族対応に関して、「できうる限りの対応策を考え、実行に移すよう関連部署に要請する」と、彼には首長としてのリーダーシップを発揮していただきたいものです。

先に述べた子どもの家事業に関する話も同じです。ほんとうに首長としての彼がすすめようとしている改革がまともであれば、先の公立高校教員も、テレビで彼の施策提案を批判するコメントはしないはずです。

にもかかわらず、そのような自分の施策提案の見直しなどは一切なく、職員の政治活動を規制する条例案をなんとかして大阪市議会で成立させようとしているわけですし、そのことにひっかけて、彼はこの公立高校教員を罵倒する。

もう、このような首長としての彼の対応、うんざりです。これでは、何も大阪市の子ども施策、よくならないでしょう。単に世の中で話題になっていることに対して自分のいらだちをぶつけたり、あるいは、自分に批判的な意見を投げかける人にたいして、感情的になっているだけのようにしか思えません。

ついでにいうと、教育行政基本条例や学校活性化条例、職員基本条例などの制定によって、子どもの自殺防止やいじめ防止が進むかというと、私は「直接的にはなんの関係もない」以上「期待はできない」というしかありません。

第一、これらの条例案のどこに、たとえば学校で深刻ないじめ自殺事案などが発生したときに、その背景などをきちんと調査して、遺族を含む関係者にきちんと報告をするという規定が盛り込まれているのか・・・・。私の知る限り、これら3条例には、そういう学校での事故事件発生時の対応についての条文は、きちんとした形では盛り込めていないように思います。

なにしろ、大阪市教育行政基本条例第6条の「点検・評価」も、基本的には教育振興基本計画の進捗状況に関する点検・評価を指しています。また、「開かれた教育行政」を規定した第5条1項も、これは学校選択制導入を促進することを狙いとしたもののように思われます。

しいていうなら、この教育行政基本条例が子どものいじめ防止や自殺防止、学校事故・事件発生後の被害者遺族への対応の充実につながるとしたら、第5条2項の「子どもの最善の利益の実現」を理由に、「市民の意向」を反映しろと、大阪市教委や大阪市立の学校園に対して、市民がこれらの対応の充実を積極的に求める動きが強まっていく。それに大阪市教委がなんとか応えなければ・・・・と動いたときくらいでしょうね。

しかし、これもかなり、教育行政基本条例を好意的に「こじつけ」た解釈。とすれば、「もともと、教育行政基本条例案をつくった人々、それに賛成票を投じた人には、子どものいじめ防止や自殺防止、学校事故・事件発生後の被害者遺族への対応の充実なんて観点はなかった」というしかないかと思います。とてもではないですが、こんな現状では、橋下市長が他市の教育委員会のことなど、批判できないのです。

<追記1>

もしも橋下市長が本気で子どものいじめ防止や自殺防止などに取り組む気があるのなら、子どもの家事業や教育相談事業のサテライトのような、子どもたちのセーフティネット機能をもった事業・施設などを縮小したり、廃止したりすることはできないはずです。そこは全く見直さないままで、他市の教育委員会を罵倒することには熱心だと言う段階で、彼がこの問題をどの程度のこととして受け止めているのかがわかります。

<追記2>

もしも本気で橋下市長が子どものいじめ自殺などが起きたときに、学校や教育行政がきちんと被害者遺族への対応をするべきだと考えているのであれば、たとえば兵庫県川西市の「子どもの人権オンブズパーソン条例」のように、市長直属の子どもの人権救済・擁護機関を常設でおく条例をつくる。その上で、そこに調査権限を持たせて、学校及び教育行政側と被害者遺族側のあいだに立って、公的第三者機関として機能するようにもっていく方法も考えられます。しかしこの間、彼の口からそのような意見が出たことはありません。

まあ、川西市子どもの人権オンブズパーソンのような公的第三者機関は、子どもの人権を擁護するためであれば、学校や教育行政に対してだけでなく、首長に対しても勧告・意見表明を出しますからね。首長として、本気で子どもの人権を守るまちづくりをすすめていくために、自分たちにとって一番「耳の痛いこと」をいう公的第三者機関を常設できるかどうか。そこをよく見極めれば、彼らのいじめ問題などへの対応の本気度がわかります。パブリック・コメントが多数集まってもそれを無視するがごとき発言を連発するような首長では、こういう公的第三者機関の常設など、ほど遠いでしょうね。

※なお、<追記2>を書くにあたって、表題を修正しました。


日本教育政策学会に出てみて感じたこと

2012-07-09 23:19:45 | 受験・学校

昨日、おとといと、東京学芸大学で開かれた日本教育政策学会に出席してきました。今年から発足した課題研究プロジェクト「構造改革下の自治体教育政策をめぐる動向―教育政策研究の課題と方向をさぐる―」の研究発表があるためです。

ちなみに、私もこの課題研究プロジェクトのメンバーのひとりです。今回はこの課題研究の発表では何も出番はありませんでしたが、来月に名古屋大学で開催予定の日本教育学会のほうで、この研究プロジェクトから私ともうひとり、北川邦一さん(元・大手前大学)が出て、ラウンドテーブルで話をする予定です。8月のラウンドテーブルでは、北川さんからは堺のことを中心に、大阪府内の各自治体の教育の動きを。私のほうからはこの数年の大阪府・大阪市の子ども施策の動向を話す予定です。

それで、昨日・おとといの日本教育政策学会ですが、ここの課題研究の発表では、まず、生田武志さん(ホームレス問題の授業づくり全国ネット代表理事)から、「西成特区構想」の子ども支援の影響についての話がありました。これは『週刊金曜日』901号(今年6月29日付け)に、生田さんが「笑えへん、橋下維新 特区構想の西成で何が起きているのか」という題の報告をまとめておられます。今回、生田さんからはその内容をもとにして、山王こどもセンターなどの「子どもの家」事業がなくなろうとしていることの問題性などを中心に話をしていただきました。橋下改革が子どもたちに何をもたらすのか、その象徴的な事例が生田さんの紹介しておられた「子どもの家」事業の扱いなのだろうと、私はあらためて感じました。

続いて、中嶋哲彦さん(名古屋大学)からは、「大阪府市における新自由主義的・権威主義的教育政策」という題での話がありました。こちらの話は、生田さんの話とはちがって、もう少し日本という国全体の教育政策と各自治体の教育政策の関係、また、今すすめられているネオリベラリズム(新自由主義)的な教育政策の特徴などを、大阪府・大阪市の教育改革に見ていこうとするもの。ここで印象的だったのは、同じ新自由主義的な改革といっても、学校教育の部門と社会福祉や社会教育・生涯学習の部門では、その進め方(特にスピード)に大きなちがいがあるのではないか、という中嶋さんの指摘。これはまさにそのとおりだ、と私は思いました。

おふたりの話のあとは、東京都の教育改革の動向と大阪府・市の動向を比べてみるかたちで、元・都立高校教員の立場からの話がありました。やっぱり、この十年近くのあいだに進んでいる東京都の改革で、子どもも教職員も相当、しんどい状況に追い込まれているのだなとあらためて感じました。そして、会場に居た人たちとのフリー討論に移りました。

ひさびさにこのような形で日本教育政策学会に出てみて、やはり、私としてはうれしかったです。先月の公教育計画学会のときもそうでしたけど、こうして大阪の置かれている問題に、教育政策論や教育制度論系の研究者が注目してくださることは、とてもありがたいことです。また、こうした場での研究者間の議論を、できるだけ子どもに近いところにいるおとなたち(たとえば保護者や教職員・保育士、子どもにかかわる市民活動などに携わっている人たちなど)に、どうすれば伝えていくことができるのか。それもひとつの課題なのではないかと思いました。

今回の学会では特に、たとえば生田さんからのお話のように、子どもにできるだけ近いところにいるおとなの眼で見えてきたこと=子どもに関する「臨床的」な話を、同じくたとえば中嶋さんからのお話のように、子どもに関する制度・政策的な研究の話に、うまく接続していくことの大切さ。そのことを実感しました。このことは、私が大学院生時代からずっと考えてきたことでもあります。今後の自分の研究や社会的な活動のあり方への示唆とやる気をえられたような学会参加になりました。ひとまず、今日のところはこのあたりで終えておきます。


fonte(全国不登校新聞)に寄稿しました。

2012-07-06 10:10:53 | ニュース

気付けば今日はもう7月6日。十日間ほど更新が途切れてしまいました。この間にも次々に大阪ではいろんなことが起きていますが、日々の仕事に追われ、なかなか時間がとれませんでした。

ただ、そんな状況のなかでも、下記のとおり、fonte(全国不登校新聞)の「時評」に大阪の子ども施策の状況についての原稿を書かせていただきました。一応、画像での形になりますが、下記のとおり貼り付けておきます。

Fonte