できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

文化的・芸術的生活への参加の権利

2007-06-30 07:49:54 | 学問

もう2週間以上もこっちのブログの更新、とまっていますね。もうひとつの日記帳ブログにも書いているとおり、このところ、めちゃくちゃ忙しいです。たぶん、夏休みに入る頃まではこんな状態かなぁ。

さて、あらためて「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」を読んでいくと、第31条(休息・余暇、遊び、文化的・芸術的生活への参加)に下記のような条文があります。日本政府訳を『解説教育六法(2007年版)』(三省堂)から引用すると、次のとおりです。

「締約国は、休息及び余暇についての児童の権利並びに児童がその年齢に適した遊び及びレクリエーションの活動を行い並びに文化的な生活及び芸術に自由に参加する権利を認める。」

「締約国は、児童が文化的及び芸術的な生活に十分に参加する権利を尊重しかつ促進するものとし、文化的及び芸術的な活動並びにレクリエーション及び余暇の活動のため適当かつ平等な機会の提供を奨励する。」

「奨励する」という言い方がかなり微妙なのですが、この条文からするならば、子どもが「文化的・芸術的な生活」や「遊び、レクリエーションの活動」に参加する権利を保障するために、締約国政府に対して、「適当かつ平等な機会の提供」に向けた取組みを行うことが求められているとも読めます。

だとするならば、子どもの学校教育・社会教育・児童福祉などの諸領域、特に学校内外の活動の場面において、この「休息・余暇、遊び、文化的・芸術的生活への参加」の権利保障がどれだけ充実しているのか。そこがこの条約の締約国でもある日本政府には問われる、ということになります。また、日本の地方自治体でもある大阪市においても、子どもの権利条約にいう「休息・余暇、遊び、文化的・芸術的生活への参加」の権利保障が、今まで以上により充実する方向にむけて、何をなすべきかが問われている、ということでしょう。

そこから考えるならば、大阪市は、たとえばこの春に青少年会館条例を廃止したり、去年は児童館・トモノス(勤労青少年ホーム)を廃止したりしています。大阪市はこれまで、このような青少年施策関連の拠点施設をいくつか廃止してきたわけですから、これらを廃止してもなお今までを上回るレベルで、子どもの権利条約にいう「休息・余暇、遊び、文化的・芸術的生活への参加」の権利保障をどのようにすすめるのか、そこをたずねてみたいと思いますね。

ましてや、「創造都市戦略」なるものを打ち出し、「アートとまちづくり」を融合させるような発想を大阪市側は求めているようですから、なおさら、子どもたちのアート、つまり「芸術的生活への参加」の権利保障をどうすすめるのか。「創造都市戦略」の具体化と子どもの権利保障の充実の両面から、大阪市にはたずねてみたいと思います。


学校外の施設・機関の充実

2007-06-13 12:36:35 | 受験・学校

新聞記事やネット配信の記事などでもすでに伝えられていますが、大阪市内のある公立中学校で、サッカー部顧問の教員がシュートをはずした生徒に全裸でランニングするような指導をしたとか。

学校のスポーツ部活動については、私ももうひとつのブログのほうで、学校の部活動中の事故・事件の話をしています。また、私だけに限らず、これまでも学校でのスポーツ部活動での指導のあり方については、指導中の教員によるハラスメントのこと、熱中症防止のことなどを含め、子どもの人権侵害につながる諸問題がくりかえし指摘されてきました。にもかかわらず、今回もまた大阪市内で起きてしまったわけで、相当に根の深い問題であるとも感じます。今後の大阪市教委の動き方を、注意深く見守る必要があります。

と同時に、いつまでたっても、スポーツ部活動などで似たような問題を起こす学校の様子を見ていると、「やっぱり、学校外にも、学校の部活とは別の形で、子どものスポーツ活動や文化活動などのできる場があったほうがいいんじゃないか?」と思ってしまいますね。もっとも、その学校外でのスポーツ活動・文化活動の指導者の質も当然、問われますが。

あるいは、「学校内で子どもが何か問題だと感じる出来事があったとき、学校外にいる相談機関の助けを求めることができる」という体制作りも、今後、ますます重要になってくると思いますね。

今後はもう少し、中学生以上の10代の人たちにとって、学校外での相談機関やスポーツ活動・文化活動の場の整備に力を入れてみてはいかがでしょうか。そのほうが、子どもの人権保障という観点から見た場合、今の学校の現状に即した対応のようにも思いますが。逆にいうと、人権教育の充実ということを大阪市教委が本気でいうのであれば、今回の件をふまえて、当該中学校の部活動指導のあり方の点検が必要でしょうし、それ以外の中学校に対しても、何らかの指導を行わなければいけないでしょう。そして、学校の内外で子どもの人権を守るシステム作りをする必要があるかと思いますが。


「なかま」がいるって、いいよね。

2007-06-11 20:44:00 | 新たな検討課題

正直なところ、大学での仕事とかけもちしながら、大阪市の青少年施策を考える取組み、たとえばこの春まで青少年会館条例の廃止に反対したり、条例廃止後の市内各地区での子どもや保護者の暮らしについて考えたりする取組みを続けるのは、相当にエネルギーのいることです。あるいは、このブログに何か書き込み、情報発信するだけでなく、この問題に関する講演会や学習会を引き受けたり、あるいは、ブログ以外にも雑誌に寄稿したり、研究論文をこの問題に関してまとめたりすること、政策提案に関する準備作業を行うことも、けっこう、たいへんだといえば大変です。

でも、やっぱり、「なかま」がいるって、いいですね。「なかま」のことをいろいろ思い浮かべると、いままで書いてきたような作業が、それほど「苦労」とは思わないんですよ。「ああ、あそこで、あの人たちもなんかやろうとしてる・・・・」ということを思うと、「もうちょっと、自分もなんか、やってみよ~」って思うんですよね。

たとえば「市民の会」で活動中のNPO関係の人や、転勤後も勤務時間外に今までかかわってきた旧青少年会館に出向いて子どもと接している市職員のことが、何か文章を書いていても思い浮かぶんですよ。あるいは、「きっと、新しい部局に移って、いろいろ苦労しているんだろうなあ」って思う市職員の人もいるし、地元でしつこく、子どもや保護者とかかわろうとしている運動関係者の人もいるでしょう。なんか、そういう人たちのことが、ブログを書いていても、雑誌の記事や研究論文を書いていても思い浮かぶんですよね。そして、これまで障がいのお子さんを旧青少年会館に通わせていたある一保護者の立場から、このブログを見られて、連絡を取ってこられた方がいたときには、「ああ、やっててよかった~」って思いましたね。

大阪市の青少年施策に関する私の意見や情報発信のとりくみは、ここのところ、本業の大学の仕事との兼ね合いで、なかなか遅々として進みません。特に、このブログの更新にまで手が回らないときも多々あります。ですが、私、「なかま」がどこかでこのブログを見ていると考えて、時々休みながらになるかと思いますが、情報発信を続けていくつもりです。これからも、みなさん、ぼちぼちとか進みませんが、どうかあたたかく見守っていてください。


新しいプロジェクト

2007-06-10 08:36:55 | 学問

「子どもの現実から学ぶ」ということ。ここに立ち返って、青少年会館条例廃止後の大阪市内の各地区の子ども・保護者の生活実態を把握しなおし、今、何が課題なのかを整理していくこと。

そういうことを当面の目標において、期間限定の新しい研究プロジェクトを立ち上げる計画を今、すすめています。

この研究プロジェクトは、もともと「青少年会館条例廃止後の各地区の状況を知りたいので、どこかの時点で、条例廃止後の青少年会館各館を訪問したいです」と私がいい続けてきたものを、「自分だけでまわらずに、ほかの視点からの検討があったほうがいい」と思って、何人かの仲間を募って、共同研究のプロジェクトにするもの。

また、「全市的な青少年施策充実」を求める取組みは一方で継続して行いながら、その脇で、条例廃止後の各地区にたち現われてくる個別具体的な子育て、教育の諸課題について、どういう考え方にたって、何に取り組み必要があるのかを考えていく。この作業を同時進行的にやれないか、ということも考えています。

今後、いろんな人の協力を得なければすすめられないことも出てくると思いますので、そのときは、どうぞよろしくお願いします。


社会教育施設における「不登校」対応充実の必要性

2007-06-05 23:42:23 | 受験・学校

「社会教育施設の体験活動プログラムの積極的な活用

 社会教育施設では、都市部の教育支援センターや小規模な教育支援センターでは提供しにくい野外体験活動プログラム等が実施されている場合が多いため、これらの体験活動プログラム等を実施する社会教育施設との積極的な連携が望まれること。」

この文章は、国立教育政策研究所生徒指導研究センター編『不登校への対応と学校の取組について―小学校・中学校編―(生徒指導資料第2集)』(ぎょうせい、2004年)に出てくる言葉です。また、この文章は、同書に「資料編」として掲載されている「不登校への対応の在り方について」(各都道府県・指定都市教育委員会教育長ほか宛2003年5月16日付け文部科学省初等中等教育局長通知)の一部です。ちなみに、ここでいう教育支援センターとは、今まで「適応指導教室」と呼んできたものをさすと考えてください。

この引用文と、その出典になっている本の内容からすると、最近の文部科学省の方針においては、社会教育施設は教育支援センターとの連携のもとで、「不登校」の子どもたちに対して、積極的に体験活動プログラムなどを提供する場として位置づけられていることがわかります。特に、野外活動体験など、教育支援センターがなかなかやれないような体験活動プログラムなどを、社会教育施設の側が実施することが求められていることがわかります。

とするならば、大阪市の青少年施策、特に「不登校」の子ども支援の諸施策においても、市外の野外活動センターなどを含めた社会教育施設において、積極的に体験活動プログラムを提供することが、文部科学省の実施しようとしている「不登校」関連施策の方針に沿っている、ということになります。

ちなみに、社会教育施設としての大阪市の旧青少年会館における「ほっとスペース事業」は、この文部科学省の「不登校」関連施策の方針にきわめて近い取組みを実施していたように思うのは、私だけでしょうか?