できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学人文学部・住友剛のブログ。
関西圏に関することを中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

2141冊目:小川利夫・高橋正教編著『教育福祉論入門』

2015-07-27 10:48:43 | 本と雑誌

2141冊目はこの本。

小川利夫・高橋正教編著『教育福祉論入門』(光生館、2001年)

先ほど紹介した1972年の『教育と福祉の権利』とは別に、先日の学校福祉研究会で紹介した文献。

小川利夫らの「学習権論」的教育福祉論のグループの「その後」が分かる1冊。

この本だと、1970年代の「学習権論」的教育福祉論に比べると、やや小川利夫らが提起した<貧困・差別・発達>という3つの視点から子どもの育ちを捉えるという枠組みが弱まった印象を受ける。

ただ逆に、たとえば高齢者福祉と生涯学習、学童保育といったような、「教育と福祉」の関係について別の切り口からアプローチを試みている側面もある。

教育福祉論入門


2140冊目:小川利夫・永井憲一・平原春好編『教育と福祉の権利』

2015-07-27 10:42:56 | 本と雑誌

2140冊目はこの本。

小川利夫・永井憲一・平原春好編『教育と福祉の権利(教育法学叢書2)』(勁草書房、1972年)

先週土曜日(2015年7月25日)から始まった「学校福祉研究会」の第1回研究会で、私から参加者に紹介した文献がこの本。

1970年代の「学習権論」的教育福祉論の代表的な文献で、教育学の世界ではもうこの頃から、いま「子どもの貧困」について話題になるような<貧困の世代間継承>や<義務教育費の無償化の徹底><教育費の家庭負担の問題>などの諸問題について、養護施設の子どもの問題や夜間中学の問題などをふまえて論じていた人がいたことがわかる。スクールソーシャルワーカーや子どもの貧困問題に関心のある人々には「必読」の古典だと思う。

教育と福祉の権利 (1972年) (教育法学叢書〈2〉)


「学校福祉研究会」はじまりました。

2015-07-27 09:29:42 | 学問

おととい(2015年7月25日(土))、京都精華大学において、学校福祉研究会の第1回の集まりを無事に終えることができました。
参加されたみなさんは16人。関東や愛知県、静岡県、宮城県・福島県など、かなり遠方から参加された方も居られました。専攻領域等についても教育学、児童福祉学、社会学等々幅広い形になりました。
さて、昨日のテーマは「小川利夫らの教育福祉論からいま、何を学ぶか?」で、私(住友剛・京都精華大学)が報告を行いました。
この報告では、1970年代の国民の学習権(教育権)論をベースにした小川利夫らの教育福祉論が、当時の子どもたちの生活と育ちのありように見られた<貧困・差別・発達>の諸現象に注目し、「貧困の世代間継承」を問題にしていたこと。また、児童養護施設に暮らす子どもや障害のある子ども、非行傾向のある子どもの課題や、教育費の家庭負担や義務教育の無償化の問題等々、当時の学習権論をベースとした教育福祉論には、今の子どもたちの課題につながるような議論も数多く見られたことなどを紹介しました。そして、小川利夫らの教育福祉論をふまえて、これからこの研究会として何を課題にして取り組んでいくのか等々についても、活発な議論が行われました。
研究会終了後は京都の街中に繰り出して、四条烏丸あたりの町屋を改装した「おばんざい」の店で懇親会を行い、遅くまで交流を深めました。


体罰をみんなで考えるネットワーク夏のつどい2015、無事におわりました。

2015-07-27 09:25:03 | 私の「仲間」たちへ

昨日(2015年7月26日)、龍谷大学梅田キャンパスにて、体罰をみんなで考えるネットワーク・夏のつどいを行いました。ネットワーク代表としての私の思いなどを、先ほどフェイスブックに書きました。それをこちらにも転載します。

<以下、転載部分>

昨日の「体罰をみんなで考えるネットワーク・夏のつどい2015」には、約40人の方に集まっていただきました。常連さんに新しい方等々、部屋がいっぱいになる感じで、とてもうれしく思いました。また、関東から来られた方も何人か会場に居られました。このネットワークに集うみなさんの熱意と、体罰を中心とした子どもの人権に関する諸課題への関心の高まりを実感しました。
また、昨夜の懇親会でもお話しましたが、代表の私としては、当面のこのネットワークの役割は「灯台・港・海図づくり」だと思っております。
つまり、「あそこに行けば、体罰を中心とした子どもの人権に関する諸課題について、話ができる人がいる」ということを示し続ける、ということ(これが「灯台」の役割)。
また、港に船が入って、今まで載せてきた人や荷物をおろしたり、人や荷物を新たに積んで出港するように、「このネットワークにいろんな立場の人が集まって、集まった人どうしでまた新たな動きが起きて・・・」という動きが生じればいいな、ということ(これが「港」の役割)。
そして、「どこへ行けば、誰が、どのような活動に取り組んでいるのか」「どこで誰が、どのような課題に直面して苦労しているのか」等々、体罰を中心とした子どもの人権に関する諸課題と、これに関するさまざまな取組みの現状が、ここに来ればある程度、把握できること(これが「海図づくり」の役割)。
この「灯台・港・海図づくり」の3点に、当面、代表の私としては「灯台守」的な立場からこだわりつづけようかな、と思っております。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、昨日の内容ですが、大学教育、特に教員養成課程における体罰問題の議論のしかたについて、加藤さん(高知大学)の基調講演と、加藤さん・石上さん(大手前大学)・田村さん(龍谷大学)によるパネルディスカッションを行いました。また、昨日は会場に集まったみなさんからも、たくさんのご意見をいただきました。なにしろ、大学教員や子どもの人権にかかわる諸団体の方々、保護者だけでなく、いま大學の教職課程で学ぶ学生からも意見が出ましたので。また、それゆえのうれしい悲鳴と申しますか、昨日はほんとうにいろんな方向からご意見などがでたので、それを最後に整理してしめくくるだけで精一杯でした。
それでもなお、当日の議論をふまえて、私が最後の「まとめ」で話したことを整理しますと、次の5点になります。これらはいずれも大学教育において体罰問題を考える上での今後の課題でもありますが、同時に大学外においても課題でしょうし、教員の現職研修などにおいても重要な課題であろうと思われます。
(1)さまざまな形でゆさぶってもなお、一部の学生たちに根強く残る体罰を正当化する意見に対して、その論拠をどのように考えるのか(思想的、文化論的、教育論的、制度論的等々)。
(2)体罰を肯定する意識で固まっているような「認知の固い人」に対して、どのような対応が可能か。
(3)知らず知らず、「力」で人に言うことをきかせることを学んでしまって、それを「当たり前」のように受け止めている人々の認識を、どのように問い直していくのか。
(4)上記のような課題に取り組むにあたって、「これってなにかおかしいのでは?」といえるような市民性、シティズンシップの育成が必要だと思われるが、その育成をどのようにすすめるのか?
(5)実際に体罰を「してしまいそうになる」くらい対応に困っている人々に対して、どのようなサポートが可能か。あるいは、体罰が起きてしまったあとに、どのような対応が可能か。
この5点をふまえて、次にどのような議論のテーマを設定し、次回10月17日(土)に予定されている秋のつどいの準備をすすめていくのか。このことについて、早急に世話人会で検討して、みなさんに次回のご案内をさせていただきたいと思います。
最後になりましたが、いつもこのネットワークの会合に毎回のように足を運んでくださるみなさん、こちらから何も言わなくても会場設営等をお手伝いしてくださるみなさん、そして、チラシ準備からはじまってさまざまな形で広報に協力してくださる方々等、このネットワークがいろんなみなさんの地道な努力に支えられていることを、昨日もあらためて実感しました。この場をお借りしまして、あらためてお礼申し上げます。今後とも引き続き、運営へのご協力をよろしくお願いします。

<以上、転載おわり>


2139冊目:安田浩一『ネット私刑(リンチ)』

2015-07-26 10:50:34 | 本と雑誌

2139冊目はこの本。

安田浩一『ネット私刑(リンチ)』(扶桑社新書、2015年)

インターネット上、特にSNSや掲示板などでは、誰かの書き込んだことに対して批判・非難が殺到し、いわゆる「炎上」という現象を起こすことがある。その「炎上」という現象は、見方を変えれば、その発言者に対する「私刑(リンチ)」ともとれる。また、その「私刑」の手段のなかには、誰かが知り得た個人情報などをSNSで拡散し、あえてバッシングを呼びかけるというものもある。そういう現象について、実際に被害を受けた人たちへの取材を通して書かれたのが、この本である。

ネット私刑(リンチ) (扶桑社新書)


2138冊目:笠原十九司『海軍の日中戦争』

2015-07-26 10:39:52 | 本と雑誌

2138冊目はこの本。

笠原十九司『海軍の日中戦争 アジア太平洋戦争への自滅のシナリオ』(平凡社、2015年)

とかくアジア太平洋戦争当時のことでいうと陸軍の問題が指摘されるのだが、日中戦争からアジア太平洋戦争へという戦争の拡大を招いた背景には、日本海軍の動きがあったのではないか・・・という主張の本。この本を読むと、海軍が日中戦争の戦線を華北から揚子江流域の都市部へと拡大したこと、その拡大をきっかけにして陸上攻撃機による渡洋爆撃を行ったこと。さらにはこのような渡洋爆撃が海軍航空隊の拡張を呼び寄せ、それがアジア太平洋戦争当初の航空戦の準備につながったこと。こういうことがわかる。

海軍の日中戦争: アジア太平洋戦争への自滅のシナリオ


2137冊目:NHKスペシャル取材班編著『日本人はなぜ戦争へと向かったのか メディアと民衆・指導者編』

2015-07-26 10:29:54 | 本と雑誌

2137冊目はこの本。

NHKスペシャル取材班編著『日本人はなぜ戦争へと向かったのか メディアと民衆・指導者編』(新潮文庫、2015年)

2136冊目の本と同じく、テレビ番組(NHKスペシャル)の内容を活字化し、さらに文庫にしたもの。1930~40年代の日本では対外的な強硬策をメディアが発信し、それにあおられた国民の声におされて、指導者層が「対米戦回避」を強く訴えることができなくなっていた。そのことがわかる本である。

日本人はなぜ戦争へと向かったのか: メディアと民衆・指導者編 (新潮文庫)


2136冊目:NHKスペシャル取材班編著『日本人はなぜ戦争へと向かったのか 外交・陸軍編』

2015-07-26 10:23:57 | 本と雑誌

2136冊目はこの本。

NHKスペシャル取材班編著『日本人はなぜ戦争へと向かったのか 外交・陸軍編』(新潮文庫、2015年)

何年か前にテレビ番組(NHKスペシャル)として放送された内容を活字化し、さらに文庫にしたもの。1930年代~40年代前半の日本の外交が、実は国内の世論におされて国際的な孤立への道を歩んでいったこと。また、陸軍内部での派閥抗争が組織としての統制を難しくして、より戦争を拡大する方向に向かわせしめたこと。こういったことがわかる。

日本人はなぜ戦争へと向かったのか: 外交・陸軍編 (新潮文庫)


2135冊目:金森修『科学の危機』

2015-07-12 22:45:31 | 本と雑誌

2135冊目はこの本。

金森修『科学の危機』集英社新書、2015年。

学校事故・事件や学校災害の問題、特に発生後の調査・検証のあり方の問題に関わるようになって以来、最近「教育学」や子どもに関する諸科学のあり方に強い関心を抱くようになってきた。そんな自分にとって、とても参考になったのが、この本。

科学の危機 (集英社新書)


2134冊目:本橋哲也編『格闘する思想』

2015-07-12 08:19:33 | 本と雑誌

2134冊目はこの本。

本橋哲也編『格闘する思想』平凡社新書、2010年。

他の人と本橋氏との対談部分には違和感はさほどなかったのだが、本田由紀氏との対談部分は、冒頭でひっかかった。教育社会学がデータにもとづいて、教育の現状はこうだとものをいい、教育学があるべき教育を規範的に追究したり、有効な教育手法を開発したりすると本田氏はいう。しかし、本田氏のいう「教育学」で有効な教育手法を開発する人びととて、学力テストや授業観察その他の結果にもとづいて、「教育の現状はこうだ」とものをいう。また、教育社会学者とて、データにもとづいて教育の現状はこうだと指摘した上で、「今後、あるべき教育の姿はこうだ」ということもある。そして「あるべき教育を規範的に追究する」教育学も、やはり、教育社会学などが提起した教育の現状分析をふまえてものを語っているところもあれば、過去の教育に関する文献(これもまた事実のひとつであり、データでもある)の検証をふまえてものを語っているところもある。このように考えるならば、本田氏のいうように、「教育学・教育社会学、そんなに両者は明確に分けられるのか?」と私などは思ってしまう。だから、「この人、ほんとうに教育学のこと、よくわかっているの?」と思ってしまった。でも、「教育社会学者」には意外とこの手の発想をする人、多いように思われる。要するに「私ら教育社会学者を、そこらへんの教育学の人たちと同類にしないで」と、彼女らはいいたいだけなのではないか。それってでも、教育学の人々に対する誤解と偏見にもとづいているのではないのかな?

格闘する思想 - 萱野 稔人 海妻 径子 廣瀬 純 本田 由紀 白石 嘉治 岡 真理 西山 雄二 (平凡社新書)


2133冊目:立花隆編『南原繁の言葉 8月15日・憲法・学問の自由』

2015-07-12 08:13:46 | 本と雑誌

2133冊目はこの本。

立花隆編『南原繁の言葉 8月15日・憲法・学問の自由』(東京大学出版会、2007年)

少し古い本。敗戦後60年の節目の時期に東大で行われた、南原繁元東大総長(政治学者)の思想などを考えるイベントの記録をまとめた本。当時の一流の知識人であり、東大総長でもあった人が1945年の敗戦をどのようにとらえ、日本という国家の再建をどのような発想から考えたのかよくわかる。

南原繁の言葉―8月15日・憲法・学問の自由


2132冊目:河原和之『スペシャリスト直伝!中学校社会科授業成功の極意』

2015-07-12 08:01:00 | 本と雑誌

2132冊目はこの本。

河原和之『スペシャリスト直伝!中学校社会科授業成功の極意』明治図書、2014年。

それにしても最近の明治図書から出る教育書って、なぜタイトルや本の帯、表紙がこうもおおげさなのか・・・(ちなみにこの本の表紙には、「100万人が受けたい社会科授業のポイントはこれだ!」とある)。中身はいたってまともというのか、中学校のベテラン社会科教師が、自分の授業実践や教材研究をふりかえって、「こういう点に着目して授業を組み立ててみれば?」と言っているものである。だからもっと落ち着いたタイトルや本の帯、表紙でもよかったと思うのだが・・・。

スペシャリスト直伝! 中学校社会科授業成功の極意


2131冊目:鳴海丈『「萌え」の起源』

2015-07-12 07:53:40 | 本と雑誌

2131冊目はこの本。

鳴海丈『「萌え」の起源』PHP新書、2009年。

タイトルにひかれて買ったけど、アニメやマンガ・コミックのキャラなど「萌え」文化そのもののルーツというよりは、アニメやマンガ・コミック作品のストーリーやキャラ創作自体のヒント、ルーツを過去の文学作品や映画などに求めていこうとした本のように思う。まあそういった意味では「萌え」文化とは全く無関係ではないのだけど、どちらかというとマンガ史や映画史的な内容を扱った本のように思う。

「萌え」の起源 (PHP新書 628)


2130冊目:櫻井孝昌『日本が好きすぎる中国人女子』

2015-07-12 07:47:07 | 本と雑誌

2130冊目はこの本。

櫻井孝昌『日本が好きすぎる中国人女子』PHP新書、2013年

アニメや「萌え」などの日本のオタク文化を、特に中国に的を絞る形で、アジア諸国の若者が積極的に評価して、受け入れていることを紹介した本。これを読むと中国の若者たちは「反日」どころか、オタク文化を介して日本に対して強い親しみを抱いていることがわかる。オタク文化論の本であると同時に、ソフトパワー外交を考える本としても読める。「中国の脅威」をあおるような安保政策で頭ががちがちな人は一度、これを読むほうがいい。

日本が好きすぎる中国人女子 (PHP新書)


2129冊目:安富歩『満州暴走 隠された構造』

2015-07-12 07:38:10 | 本と雑誌

2129冊目はこの本。

安富歩『満州暴走 隠された構造 大豆・満鉄・総力戦』(角川新書、2015年)

国際商品化した大豆の生産地としての満州と、その大豆生産の拡大が輸送ルートとしての馬車・鉄道の拡大を招き、さらに輸送ルートの拡大が大豆生産のさらなる拡大を招く・・・。そしてその馬車・鉄道の拡大は都市の急速な発展を招き、鉄道を含む旧・満州の諸利権の争奪戦を生みだし、その結果を手にした日本からの人口の流入を促し、植民地化を加速していく・・・。

ひとつひとつの部分的な合理性の追求の動きも、それがある一定のレベルを越えて集積していくと、非合理を生みだし、制御不能になる・・・という構図かと。こういう構図は、おそらく旧・満州国だけでなく、日本社会のいろんなところに見られる。

満洲暴走 隠された構造 大豆・満鉄・総力戦 (角川新書)