いよいよ、大阪府も大阪市も、平松市長の任期切れ・橋下新市長の就任を前に、大阪維新なるものの「正体」が表に出てきたようです。やはり、「教育基本条例案」を通すわけにはいかない、と思わせるような昨日・今日あたりの動きについて、マスメディアの伝えるところを紹介しながら書いておきます。
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20111217-OYO1T00239.htm?from=main4 (海自女性幹部ら校長に、大阪府教委:読売新聞関西ネット配信記事、2011年12月17日)
女性の退職幹部自衛官と大手企業の部長級職員が、今後「民間人」校長として大阪の府立学校の校長になるとか。
これ、「教育基本条例案」が本当に決まったあと、「どういう人がマネジメント能力に長けた人として、府教委のおめがねにかなって採用されるか?」を示す、重要な指標になりますね。と同時に、「教育基本条例案」がどんな学校を作りたいのかも、これでよくわかると思います。
日本の近代学校制度は「富国強兵・殖産興業」が掛け声だった明治維新期につくられたもの。すなわち、近代資本主義と近代国民国家(特に徴兵制)に適応可能な「人材」の育成、ということがアタマにあって、近代学校制度が日本でスタートしたとも考えられるんですよね。だとしたら、今回、府教委が「民間人」として選んだ府立学校の校長候補者は、どちらも、その延長線上に位置づく人材になります。
つまり、さすが「維新」。21世紀の今なのに、公立学校改革を通じて、19世紀後半の「明治維新」のやり直しをしたいわけですね。「時代錯誤」といえばいいのでしょうか。まぁ、「坂の上の雲」が大好きな人たちが、その時代小説を読む中で思い描いたロマンを、21世紀の今に追い求めているようなものだ、といえばいいのでしょうか。
次は、この記事ですね。読売新聞が続きますが。
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20111216-OYO1T00883.htm?from=newslist (維新教育条例案、大阪市教委が修正案、人事は絶対評価に:読売新聞関西ネット配信記事、2011年12月16日付け)
これについては、「いらんもんは、いらん」「修正案ではなくて、廃案の話をしよう」のひとことで終わりです。
おそらく大阪市教委の事務局サイドにしてみれば、橋下新市長就任時に何かいろいろ言われることを想定して、おそらく「先回り的」に準備を開始したのでしょう。そのなかで、いま、法令上の問題点を指摘する議論もあることから、その部分を削除するなどして、つじつまのあうような市教委案を作成したのでしょう。
しかし、どのような形で法的整合性を保った案を大阪市教委事務局が作ったとしても、もともとの基本理念がおかしいものは、「こんなもん、いらん!」というしかないのです。
それから、大阪市教委事務局が法的整合性を保った案をつくったら、維新の会がこの条例案でやろうとしたことが「骨抜き」になるとしたら、まさに、その「骨抜き」になった部分にこそ、この条例案の「本当の姿」があったことになります。
これもまた、おかしい話でしょう? 中身だけでなく、そんな法的に問題だらけの条例案をつくって、議会で可決成立して、ごり押ししようとしていたわけですからね。
ちなみに、毎日新聞のネット配信記事は、みんなの党からの質問主意書に対して、今の野田内閣が次のように答弁したと伝えています。
http://sp.mainichi.jp/m/news.html?cid=20111216k0000e010186000c (教育目標設定:政府「自治体の長に職務権限なし」と答弁書、毎日新聞ネット配信記事2011年12月16日付け)
それから、この記事です。
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20111216-OYO1T00254.htm?from=newslist (橋下新市長、大阪市幹部6人を更迭へ。「政治活動関わった」:読売新聞大阪ネット配信記事、2011年12月16日付け)
平松市長期の「市民協働」などの主要施策を担った幹部級公務員を「更迭」ですか。ということは、橋下新市長は「市民協働」なんて、さらさら「する気がない」ということですね。
しかも、この「更迭」される幹部級職員は4月の定期人事異動まで、人材開発センターに席をおくとか。これってかつて、国鉄が解体されてJRになるときに、労働組合の活動家たちを人材センターみたいなところにおいて、退職勧奨したやり方とどこがちがうのでしょうか?
こういう手法を、私はとうてい、許すわけにはいきません。
そして、この記事です。もはや、橋下新市長や大阪維新の会が、「誰の利益のために動いているのか?」は、きわめて明白です。
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20111216-OYO1T00465.htm?from=newslist (関西同友会、橋下新市長に交通局民営化など緊急提言:読売新聞大阪ネット配信記事、2011年12月16日づけ)
この記事でわかるように、橋下新市長や大阪維新の会がすすめようとしている諸改革は、「企業(それも大企業)のビジネスチャンス創出のための大阪」をつくるためのもの。当然、これは松井知事とて同じことです。この改革に協力したからとて、大阪市民・大阪府民がその改革の「おこぼれ」にあずかれる保障は、なにもないのです。むしろ、今までの生活の安定をぶちこわして、ビジネスチャンスをつくっていくという側面のほうが強いのではないでしょうか。
もうそろそろ、みなさん、彼らの「正体」に気づいて、批判・非難の声をあげていく時期ではないかと思います。『こんなもん、いらん!』『いらんもんはいらん!』『対案? そんなもん、「いままでどおり」の一言でおわりじゃ!』でいいと思います。