できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

2068冊目:金時鐘『朝鮮と日本に生きる』(岩波新書)

2015-02-28 16:25:40 | 本と雑誌

2068冊目はこの本。

金時鐘『朝鮮と日本に生きる―済州島から猪飼野へ』(岩波新書、2015年)

この本は詩人・金時鐘さんが、幼い頃済州島で暮らし、その後朝鮮半島の学校で一時期過ごしたあと、再び済州島に戻って4.3事件に遭遇、日本にわたって大阪・猪飼野で暮らすようになるまでのいきさつを綴ったもの。

この本の出だし、金時鐘さんの幼少期に通った植民地・朝鮮の学校での「体罰」のすさまじさには、やはり驚かされる。日本語の使い方が悪いといっては殴られ、学校での授業態度が悪いと殴られ・・・。さらには子どもどうしで互いに殴りあう罰もあり・・・。そして、殴っている教員たちも朝鮮人で、子どもたちを「よき日本人にするため」に「善意」で殴っているという構図である。

その後の8.15(朝鮮の人々にとっては日本の植民地支配からの解放)と、アメリカ軍の占領統治、朝鮮の人々のなかでの右翼・左翼の対立、そこで占領軍の思惑を背景に復活してきたかつての日本の軍国主義に積極的に協力した朝鮮人たち、そして「4.3事件」という話のながれも、ほんとうにすさまじいものがある。

朝鮮と日本に生きる――済州島から猪飼野へ (岩波新書)


2067冊目:松岡完『ベトナム症候群』(中公新書)

2015-02-28 16:18:14 | 本と雑誌

2067冊目はこの本。

松岡完『ベトナム症候群 超大国を苛む「勝利」への強迫観念』(中公新書、2003年)

ここのところ東京出張や小豆島旅行など、遠出が相次ぎ、忙しくてなかなか本が読めなかった。

そんな状況のなかで読んだのが、この本。

これはイラク戦争やタリバン戦争など、いわゆる9.11テロ後のアメリカの外交・軍事情勢を考えるために、「ベトナム戦争以後湾岸戦争を経て90年代末まで」のそれをふりかえるという作業をした本でもある。

要するに「ベトナム戦争での手痛い打撃」から立ち直るために、アメリカの政府・軍などがどのような戦略を練って動いてきたか・・・ということ。それを描いた本だということ。

この本に描かれた「ベトナム症候群」は、今のアメリカの政府・軍にもさまざまな影響を及ぼしているように思われる。

ベトナム症候群―超大国を苛む「勝利」への強迫観念 (中公新書)


2066冊目:仲正昌樹『〈宗教化〉する現代思想』(光文社新書)

2015-02-19 10:55:06 | 本と雑誌
2066冊目はこの本。
仲正昌樹『〈宗教化〉する現代思想』(光文社新書、2008年)

少し古い本だけど、今の日本あるいは欧米諸国の現代思想の状況を考える上ではとても参考になる本。
「形而上学」への批判を徹底して行う際に何かの根拠となる基準を定めてやろうとすると、その批判の学がまたひとつの「形而上学」化しかねないという矛盾。この矛盾は政治的な右派・左派、どちらの思想も抱え込んでいる、ということ。これをどう考えるか・・・?? このことが、この本の主な主題だと思った。

〈宗教化〉する現代思想 (光文社新書)

2065冊目:手島泰伸『日本海軍と政治』(講談社現代新書)

2015-02-19 10:01:05 | 本と雑誌
2065冊目はこの本。
手島泰伸『日本海軍と政治』(講談社現代新書、2015年)

昭和期の陸軍に比べて海軍は政治に対してあまり介入せず、暴走しなかった。
いや、肝心のときには組織利益を優先した・・・等々。
これまで言われてきた「海軍善玉・悪玉」論に対して、もう少し日本海軍の成立期から歴史をふりかえることで、「海軍と政界との関係」を考えようとした本。
かつてあった日本の中央省庁としての「海軍」を振り返ることから、日本の官僚制のあり方を考えた本ともいえる。

日本海軍と政治 (講談社現代新書)

2064冊目:太田省一『アイドル進化論』(筑摩書房)

2015-02-16 23:02:48 | 本と雑誌
2064冊目はこの本。
太田省一『アイドル進化論』(筑摩書房、2011年)

東日本大震災前の本なので、1970年代から2010年頃までの日本のアイドルの変遷を論じた本。
イスラム国関連とか、中東アラブ諸国情勢がらみの本ばかり読んでいたので、たまにこういう大衆文化系の本を読むとホッとする。
ただ、この本の最後のところで、「永遠に未成熟で若い」存在としてのアイドルのような話が出てきた。
この部分は、現代日本の教育や学校のありようを考える上でも重要かも。

アイドル進化論 南沙織から初音ミク、AKB48まで(双書Zero)

2063冊目:逢坂巌『日本政治とメディア』(中公新書)

2015-02-16 22:53:55 | 本と雑誌
2063冊目はこの本。
逢坂巌『日本政治とメディア』(中公新書、2014年)

日本社会へのテレビの登場・普及、そしてテレビを主戦場とした政治の展開・・・。
敗戦後日本の政治のあゆみのなかで、テレビへの各政党、各政治家の対応がどのように行われたのか。
このことを軸に戦後政治史を綴ったのがこの本。
なかなか、面白かった。

日本政治とメディア - テレビの登場からネット時代まで (中公新書 2283)

2062冊目:国枝昌樹『イスラム国の正体』(朝日新書)

2015-02-16 22:41:46 | 本と雑誌
2062冊目はこの本。
国枝昌樹『イスラム国の正体』(朝日新書、2015年)

こちらはイスラム文化圏の国々の抱える諸課題を、イスラム国の問題を軸に、シリア・エジプト・イラクなどに勤務した元・外交官の立場から書いているもの。
イラクのフセイン政権を打倒して欧米流の民主主義を実現しようとしたら、そこからふきだしてきたのは制御不能な混乱であり、イスラム国だった・・・。
だとすれば、元外交官の著者のいう「よりマシな『独裁政権』とつき合う現実的な覚悟が、当面、国際社会には必要」(p.221)という言葉が、とても重い・・・。

イスラム国の正体 (朝日新書)

2061冊目:宮田律『イスラム潮流と日本』(イースト新書)

2015-02-16 22:36:00 | 受験・学校
2061冊目はこの本。
宮田律『イスラム潮流と日本』(イースト新書、2014年)

先ほど紹介した『アメリカはイスラム国に勝てない』と同じ著者の本。
こちらは王少しイスラム文化圏を広くとって、パキスタンやウクライナのタタール人にまで目を向けて書いているもの。
ただ、基本的なトーンは『アメリカはイスラム国に勝てない』と同じなので、やはり、イスラム文化圏の複雑な政治・社会情勢を読み解くのには一苦労。つまり、この本も読むのに一苦労するということ。
だからやっぱり、アメリカなどの大国のあとをついていくだけの外交だと、このイスラム文化圏の国々とは渡り合っていけないような気がするんですよね。

イスラム潮流と日本 (イースト新書)

2060冊目:宮田律『アメリカはイスラム国に勝てない』(PHP新書)

2015-02-16 22:27:02 | 本と雑誌
2060冊目はこの本。
宮田律『アメリカはイスラム国に勝てない』(PHP新書、2015年)

昨今の中東アラブ世界情勢を理解するのには重要な本だと思うのだけど、なにぶん、現地の諸勢力や各国の政府の思惑、さらにはアメリカ・イギリス・フランス・ロシア等々の大国の思惑が錯綜していて、それを読み解くのも一苦労。
だから、この本も新書本だけど、著者が現地の諸勢力のつながりをていねいに説明しようとしているのだけど、それ自体がかなり錯綜しているので、なかなか、すっきりと読ませてくれるような書き方にはなっていない。
ということで、そこからハッキリとするのだけど、安易にアメリカやイギリス、フランスなどの欧米の大国のあとを追従するような形で、日本政府が中東アラブ諸国との外交をやってしまうと、まあ、ロクなことはないな、ということ。
中東アラブ諸国の状況が落ち着くまで、日本は先方から必要な資源だけ買い取って、あとは人道的支援に徹しているほうが、まだ安全な位置に立てるのではないか・・・と、この本を読んで思った。そう考えたら、安倍政権の外交ってほんとうに危ない・・・。

アメリカはイスラム国に勝てない (PHP新書)

2059冊目:杉村啓『白熱日本酒教室』(星海社新書)

2015-02-16 22:23:18 | 本と雑誌
2059冊目はこの本。
杉村啓『白熱日本酒教室』(星海社新書、2014年)

かなり長い間、もう15年くらいお酒を飲まないようにしてきたのだが、ここ最近、またちょっと飲み始めている。
飲み始めているのは主に日本酒、それも「熱燗」向きのお酒ばかり。
そんなわけで、こんな本も読みました。日本酒って奥が深いなあって、この本を読んで思いました。

白熱日本酒教室 (星海社新書)