できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

教科教育関係者にも来てほしい今回の公開講座

2016-09-27 06:54:15 | 受験・学校

理科実験中にフラスコ破裂、生徒3人けが 熊本の中学校 (gooニュース、2016年9月26日)

今度は中学校の理科の実験中に起きた事故ですね。

とかく学校事故・災害というと、地震・津波や大雨・洪水(どちらも台風によるものを含む)、火災あるいは体育・スポーツ活動中の事故や校外学習中の事故などが、パッとイメージとしてわきます。

でも、実際にはこの理科の実験中の事故のように、教室のなかでの各教科の学習でも、事故が起きるケースがあります。

ですから、たとえば文部科学省が今年3月末に出した「学校事故対応に関する指針」も、「あれは事後対応の指針」とか(=内容には「事故の未然防止」に関する事項を含む)、「あれは体育・スポーツ事故に関する指針だ」(=それ以外の事故も指針での対応を必要とするケース)だと勝手に決めつけたりせず、まずは学校現場の教職員・管理職にしっかり読んでいただきたいと思っています。

このような理由で、私なりになにかできることはないか・・・・と思って、公開講座をやろうと思ったのですが。

さて、連日告知をしておりますが、あらためまして、その公開講座のこと、告知をします。

上記のとおり、理科教育を含む教科教育系の人にもぜひ来ていただいて、事故防止のあり方について考えていただければ幸いです。

京都精華大学公開講座レクチャー・ガーデン

「学校での事故・事件とどのように向き合うか」

(全4回、すべて金曜日夜19時~20時30分、会場は京都精華大学)

講師:住友 剛(人文学部教員)  受講料:5000円 

定員の設定はなし。参加には事前申し込みが必要。

第1回 10月28日 学校事故・事件の被害者家族・遺族とかかわって

第2回 11月25日 これからの学校事故・事件防止のあり方について -文部科学省「学校事故対応に関する指針」解説-

第3回 12月23日 学校における「指導」を問い直す -「指導死」ということば、知っていますか?-

第4回 2017年1月27日 実際の被害者家族・遺族のお話を伺う

※参加申込の方法など、詳細は下記を参照してください。

http://www.kyoto-seika.ac.jp/info/garden/2016/late/lecture_sumitomo2016/

たくさんの方の参加申込、心からお待ちしております。

なお、できるだけ早く(開催10日前までに)参加申込をしていただけると助かります(受講申し込み者数が少ないと、閉講になる場合がありますので)。


事故防止に関する学校現場への情報伝達ルートの実態解明が今後の課題

2016-09-25 11:26:57 | 受験・学校

①「柔道事故、傾向は 中1と高1に多い被害・大外刈りで頭部外傷例」(朝日新聞デジタル、2016年9月24日)

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12574288.html?rm=150

②「柔道の部活中、昨年以降3人死亡 大外刈りが事故で最多」(朝日新聞デジタル、2016年9月24日)

http://www.asahi.com/articles/ASJ9F5CQBJ9FUTQP02B.html

この2つの記事を読んで率直に思ったのは、「柔道事故の防止に関する学校現場への情報伝達ルートの実態解明」こそが、今後の事故防止の取り組みにおいて重要な課題になってきているということですね。

たとえば、②の記事によりますと、しばらく起きていなかった死亡事故の発生を受けて、全柔連はあらためて注意喚起の文書を出したようです。

でも、①の記事によれば、そもそも学校現場に文科省からの事故防止に関する注意喚起の文書等が行き届いていないと。学校現場の教職員にアンケートをとれば、文科省の資料や日本スポーツ振興センターの重大事故事例についての資料等を知っている教員は4割程度だ、ということですよね。

そして、これについて①の記事では、「全柔連が情報を流しても、教委がブレーキをかけている」といって、「隠ぺい体質の改善を」いう趣旨のコメントを内田良さんがしていますよね。

でも、私はこの①の記事を読んで、「ちょっと待てよ。本当に隠ぺい体質の問題なの? もうちょっとていねいに情報伝達ルートの検証をして、きっちりとそこを直さなければいけないのでは?」と思ってしまいました。

それこそ、たとえば最近、各地の養護教諭さんの学習会に行ってわかってきたことですが・・・。

文科省が今年3月末に出した「学校事故対応に関する指針」は、文科省から各都道府県教委、各市町村教委、各学校へと伝達されるにあたって、電子メールのPDFファイルで各校に降りてきたところもあるようです。

そうなると、そのPDFファイルで「上から」降りてきた情報については、各都道府県あるいは市町村教委のレベルで、あるいは各校で誰かがそのファイルを開いて、中身を読んで、「これは重要だ」と校内で周知徹底を図ろうとしない限り、情報は広まらないことになります。

ですが、「上から」おろしてくる側(たとえば各都道府県教委にとっては文科省、各市町村教委にとっては各都道府県教委、各学校にとっては各市町村教委)は、電子メールの添付ファイルで一斉に情報発信すれば、それで「現場に(あるいは教委に)周知しました」と言えるわけです。

要するに「こういう文書が来たから、送信(転送)するんで、あなたたち、読みなさい」という形で、「上から」流すだけで終わっていて、学校現場では「誰も読まないまま」になっているのではないか・・・・ということですね。

これでは「隠ぺい」はしていないけど、でも「情報伝達は実質的に何もできていない」ということになります。

だから、なんでもかんでも「教委の隠ぺいだ」と考える発想から生まれる対応では、もはや、なんの役に立たないのではないかと。

実際にどういう伝達ルートで、どういう情報がどのように降りてきて、それをどのように学校現場が受容しているのか、その解明をしなければいけないし、その解明した結果にもとづいて事故防止策を練り直さないといけない、ということです。

そして、ただ「文書をメールで転送してしまうだけ」の対応になってしまう背景に「教員(あるいは教委職員)の多忙化」傾向があって、次々に他の仕事に追われていて「中身をじっくり読むひますらない」としたら、本当に改善すべき問題はどこにあるのか、ということになりますね。

以上2点、この記事から考えたことでした。

<追記>

こちら(下記URL)のブログ記事もぜひお読みいただき、公開講座への参加申込をしていただければありがたいです。ご参加よろしくお願いいたします。

http://blog.goo.ne.jp/seisyounenkaikan/e/024e49c5a2d4b2f09b00ca69b4d4efeb




あらためて、公開講座「学校での事故・事件とどのように向き合うか」の告知です。

2016-09-25 11:10:28 | 受験・学校

前にも何度かここで告知をしましたが、あらためて、告知をしておきます。

京都精華大学公開講座レクチャー・ガーデン

「学校での事故・事件とどのように向き合うか」

(全4回、すべて金曜日夜19時~20時30分、会場は京都精華大学)

講師:住友 剛(人文学部教員)  受講料:5000円 

定員の設定はなし。参加には事前申し込みが必要。

第1回 10月28日 学校事故・事件の被害者家族・遺族とかかわって

第2回 11月25日 これからの学校事故・事件防止のあり方について -文部科学省「学校事故対応に関する指針」解説-

第3回 12月23日 学校における「指導」を問い直す -「指導死」ということば、知っていますか?-

第4回 2017年1月27日 実際の被害者家族・遺族のお話を伺う

※参加申込の方法など、詳細は下記を参照してください。

http://www.kyoto-seika.ac.jp/info/garden/2016/late/lecture_sumitomo2016/

※追記

たくさんの方の参加申込、心からお待ちしております。

また、できるだけ早く(開催10日前までに)参加申込をしていただけると助かります(受講申し込み者数が少ないと、閉講になる場合がありますので)。

 


「詰め過ぎの弁当箱」化する教育改革?

2016-09-19 09:41:54 | 受験・学校

小学英語 半数近く反対…教員、授業増を懸念 (毎日新聞2016年9月17日配信)

http://mainichi.jp/articles/20160918/k00/00m/040/057000c

おはようございます。まずはこちらの記事、紹介します。

最近の教育改革談義を見てますと、「もう何も詰められないくらい詰まっているお弁当箱に、あれも食べさせたい、これも栄養があるから入れたいといって、まだタコさんウインナーとかプチトマトとか無理につめようとして、かえって、もとのお弁当自体がぐちゃぐちゃになってしまってる」感でいっぱいです。

すなわち、今のカリキュラムですら学校現場の教職員も子どもも、十分に消化しきれているとはいえない。

また、次から次へと、「あれがいい」だの「これをやってみろ」だの、言う方は「学校を変えたい」「子どもたちをなんとかしたい」という「善意で」教育改革の提案をして、それを政策化して、学校現場におろしてくる。

それへの対応で、もう各校の管理職も教職員もアップアップ。

そんなところに、多少「リーダー教員」だの「中核教員」だのをつけるとかいいつつ、まだプラスアルファで、小学校英語の教科化、道徳の教科化等々、新たな課題を持ち込むわけです。

「もうええわ、こんなもん・・・」「こんな改革いらんわ、もううんざり・・・」と思う方が学校現場に多くなっても、当然です。

それこそ、あれもこれも詰め込み過ぎて、かえってぐちゃぐちゃになっているお弁当見て、食欲わきますか?

食べられる量以上のごはんやおかず詰まっていたら、食べ残しする人もでますよね?

教育改革だって、それと同じことなのでは?

もうちょっと、お弁当箱のサイズがどんなものなのか、一度に食べられる量ってどんなものなのかを考えてお弁当を詰めるように・・・。

教育改革のメニューも、学校現場で子どもや教職員がきっちりと消化しきれる量を考えて、内容を整理してほしいものです。

※追記

今の学校に問題がないとは思いませんし、現実にいろいろと起きている諸問題もある以上、その是正策は一定必要です。

でも、その「いろいろと起きている諸問題」が、もしかしたらこの何年かの間、「学校を変えねば」とか「子どもたちにとってよかれ」と思って、「善意」の人々が主張してきたことがきっかけになって生まれているとしたら、その「善意」はいま、あらためて問い直されてしかるべきかと思います。

 

※追記2

 

ここのところの「詰め過ぎの弁当箱」化した教育改革や学校の状況を一定整理して「すきま」つくらないと、たとえば事故防止や子どもの安全確保策とか、いじめ防止策とか、そんなものは学校現場にもう、入る余地すらないでしょう。

 

それはちょうど、「詰め過ぎの弁当箱」から「ミートボール1個減らそうかな?」とか「からあげ1個やめとこうかな」とか、そういうことを考えるように。
何か1個入れるのを止めたら、別のおかず1個入れられるわけで。

 

それと、この学校や教育改革の「詰め過ぎの弁当箱」のぐちゃぐちゃな状態を改善しないまま、「現場がお困りですから、お助けしましょう」と多様な職種の人たちが出てくるのも、時々「なんだかなあ・・・」って思ってしまいますね。




とうとうやってきた学校現場・教育行政・大学教職課程の「多忙化」法案

2016-09-13 22:55:12 | 受験・学校

教員の養成・採用・研修一体改革 改正教特法など提出へ (2016年9月12日 教育新聞)

https://www.kyobun.co.jp/news/20160912_01/

うわ~。とうとう来ましたね・・・。

学校現場の教員の多忙化(=要するに「常に研修、研修」と、通常業務の負担関係なく「研修をやれ、やれ」と推し進める)と、大学教職課程の多忙化(科目増に内容の大幅な見直し、学生も担当教員も忙しくなる。おまけに再課程申請業務で膨大な書類をつくらねばいけなくなる)。

おまけに地方教育行政も、大学と学校現場の橋渡し的な業務をするわけで、ますます忙しくなる。

あちこちで二重、三重の多忙化を推進する法案の提出ですわ・・・。

これさあ、今のまま推進したら、大学も学校現場も、そして教育行政も疲弊するで、ますます・・・。

安直に「うわ~。ええことやってる~」とか言うて喜んでいたら、バカを見ますわ、ほんまに。

ついでにいうと「インターンシップ」で教職課程の学生つかって、学校現場の人手不足解消も狙ってるんですかねえ・・・。

確かに学校現場に入り込んで学べることも多いから、一概にダメとはいわないけど。

でも、ほんまに必要な教員の人手は、まずは優先的に正規採用で現場につけたほうがいいですわ。

当たり前の話ですけど。

そして、この法改正が通ったら、私、来年度以降、こっちへの対応にはりつけになって、学外でのいろんな活動できなくなりますわ。

「現場の実務」がわかってない、アタマでっかちな人間にこういう改革プランつくらせると、ほんと、ロクなことないな~と思う今日この頃ですわ。

そうそう、「チーム学校」で「学校現場の教員を授業に専念させる」という発想の行きつくところが、これでっせ。

そこんところも、よくわかっておいてね、学校外の人&教育学以外の人。

その本来業務なる「授業」に今は「アクティブラーニング」だの「道徳の教科化」だの、「学力向上のPDCAサイクル」だの、いろんな注文つけて、「研修、研修」って労働強化させているんですわ。

片方で仕事減らしても、今度は別のところから今度は「多忙化」が襲ってきますわ、それが今の教育改革の怖さですがな・・・。

あと、教員の「多忙化」解消に部活の外注化とか練習日数や時間数の制限とか、いろいろ、いうてきた方も居られるかと思いますが。

しかし、その方々にお聴きしたいのは、こっちの「教員の資質向上」政策といいますか、まさに教員としての「本業」それ自体がいまや労働強化の対象であり、「多忙化」の重要な要因となりつつある話については、どのように考えてきたんですかね??

なんか、あまりにも議論を単純化しすぎたのではないですかね?

あと、これだけ次々にいろんな改革への対応やらされていたら、そりゃ個々の子どもの状態に目配り気配りすることなんて、学校現場の教員には出来かねる状態になりますわ。

そうなったら、教員も子どもの話を十分に聴くことできなくなるでしょうし、それで子どもとの関係がこじれたりすることもでてくるでしょうし、いじめ対応や子どもの自死(自殺)防止、不登校対応などにいろいろ支障もでてくるでしょう。

ということで、もうそろそろ「余計な教育改革、やめてしまえ!」という議論が必要な時期かと思います。


 


最近読んだ本をまとめて紹介(2347冊目~2356冊目)

2016-09-12 23:15:28 | 本と雑誌

最近読んだ本がまたまた10冊たまりましたんで、著者名・書名程度の紹介だけですが、ここでしておきます。

2347冊目:保阪正康『安倍“壊憲”政権と昭和史の教訓』(朝日文庫、2016年)

2348冊目:国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センター編『変わる!キャリア教育』(ミネルヴァ書房、2016年)

2349冊目:五木寛之・釈徹宗『70歳! 人と社会の老いの作法』(文春新書、2016年)

2350冊目:一ノ瀬俊也『皇軍兵士の日常生活』(講談社現代新書、2016年)

2351冊目:岡本茂樹『いい子に育てると犯罪者になります』(新潮新書、2016年)

2352冊目:森松明希子『母子避難、心の軌跡 家族で訴訟を決意するまで』(かもがわ出版、2013年)

2353冊目:管賀江留郎『道徳感情はなぜ人を誤らせるのか 冤罪、虐殺、正しい心』(洋泉社、2016年)

2354冊目:井上理津子『さいごの色街飛田』(筑摩書房、2011年) ※リンク先は文庫本のもの

2355冊目:青柳慎一『中学校社会科授業を変える学習活動45の工夫』(明治図書、2016年)

2356冊目:おまかせHR研究会『これならできる主権者教育 実践アイデア&プラン』(学事出版、2016年)


昨日の「学校に行かない子と親の会大阪」25周年記念集会のこと

2016-09-12 16:47:06 | 受験・学校

昨日の学校に行かない子と親の会大阪25周年記念集会全体の印象ですが・・・。

まず、主催者側が「たぶん、よく集まっても50人」と言っていたところに、なんとまあ、77人も集まったとのこと。

用意していたイスがたりなくなるくらいでした。

たくさんの方に集まっていただき、ありがとうございました。

なにしろ例の「多様な・・・」法案関連で関東、中国・四国地方からも10人近く来られていましたし、また、昨日の朝日新聞の大阪市内版にでっかく集会の案内記事がでて、それを見てきたという方もおられました。

そして、私のツイッターを見てきたという方もけっこうおられましたね。

それから、この学校に行かない子と親の会大阪や、淡路プラッツや桜塚高校定時制に出入りしていた時期の私をよく知る人々が、これまた何人か集まってました。

まあ、みなさん、白髪のおじいさん・おばあさんになってましたけどね。

そうそう、司会の山田潤さんが私に娘がいて、もうすぐ中学生だと言うと、びっくりしてました。

でも、「25年」ってひとことでいいますが、私が大学生(3回生くらい)・大学院生・川西オンブズを経てうちの大学で働いて、結婚して娘が生まれて、その娘が来年中学生になるという、それだけの年月ですからね。

みなさん、白髪のおじいさん・おばあさんになりますわね(笑)

それと昨日、まさに20年ぶりくらいに自分の不登校経験の話をするとともに、学校に行かない子と親の会にも20年ぶりに出たわけですが・・・。

出てみて「何か、似てるな」と思ったのと、「20年も出てなかった気がしなかったのと、ふたつのことを感じました。

というのも、夜の交流会に出て気付いたんですが、「親の会」のつくりかたが、全国学校事故・事件を語る会や、約20年前の淡路プラッツの親の会、そして学校に行かない子と親の会の3つとも、どことなく似てるんですよね。

「とにかく自己紹介と近況報告だけで終わるかもしれないけど、何かひとことずつでも参加した人たちが発言して帰れるようにする」とか。

「正解を知っている誰かのお話をありがたく聴くとか、偉い誰かに答えを出してもらうのではなくて、自分がどうしたいのか、何を考えたいのかを大事にして、自分で答えを出す」とか。

そんな雰囲気というのか、会のつくりかたがどことなく似通っていて、「20年も出てなかったような気がしない」のでした。

ということは、自分のなかで確実に淡路プラッツや学校に行かない子と親の会大阪での経験が、今の学校事故・事件の被害者家族・遺族とのかかわりにつながっていること、そのことを示していますね。

やっぱりあのときの経験が土台になって、今があるんだなあと。

先月の全国大学人権教育交流会で桜塚高校定時制に出入りしていた頃にお世話になったみなさんと再会しましたが、なんだかこんここのところ、自分の過去を今とつなげる作業が続いていますね。


体育・スポーツ事故だけでない学校での事故

2016-09-10 20:31:07 | 受験・学校

今月初めにも生徒4人搬送 枚方の中学 硫化水素発生の実験で 化学変化実験自粛へ

(gooニュース 2016年9月9日)

とかく体育・スポーツ事故ばかり注目を集めがちな学校事故ですが、実は他の教科・領域の活動中にも事故は起きています。

たとえばこの記事のような理科の実験中の事故ですが、同じような硫化水素発生の実験で、過去にも事故が起きています。

その一例を挙げますと、京都教育大学附属桃山中学校の3年前の事故があります。

http://matome.naver.jp/odai/2137367977298319201

(「大ごとになるとは・・・」硫化水素で4人入院も通報しなかった中学校 naverまとめ 2013年7月13日)

このように「中学校での理科の実験」に限定しても、ひとつの事故が起きると、類似の事故が過去にも起きていたケースがいくつかあると思われます。

今後、早急に学校安全(事故防止)と理科教育の両方の領域の研究者・実践者のあいだで、事故事例をもとにした議論を蓄積していくことが必要です。

また、同様に、他の教科・領域でも、事故事例をもとにした議論を蓄積していかなければ、学校での重大事故の防止にはつながらないと思います。

体育・スポーツ事故にばかり注目していてはいけないな・・・と思う今日この頃です。


いったい、なんのための大阪府立高校再編計画なのか?

2016-09-06 15:38:14 | 受験・学校

大阪公立高校 再編案まとまる (NHK関西ニュースWEB 2016年9月5日)

http://www.nhk.or.jp/kansai-news/20160905/5275911.html

あれはたしか、今から4年前。

いろんな人々の反対の声を押し切るかたちでつくった、橋下維新の教育改革を推進する「教育」基本諸条例。

あの条例の「負の成果」が今、大阪府立高校の再編統合計画という形で、顕著に出始めていますね。

そしてこの府立高校の再編統合計画の「負の影響」は、じわじわと、大阪市・大阪府の各中学校にも及んで来ます。

なにしろ、この再編統合計画の対象となっている府立高校のなかには、さまざまな課題のある子どもを積極的に受入れ、卒業できるところまで面倒をみてきたような高校も、障害のある生徒と共に他の生徒が育ってきたような高校も含まれていますから。

大阪府教委はこういった府立高校を「再編統合してエンパワメントスクールをつくる」といってますが、「いまある再編統合の対象になっている府立高校そのものが、すでにエンパワメントスクール的な機能を果たしているんじゃないですか??」と言いたくなってしまいますね。

そして、再編統合後のエンパワメント・スクール化した府立高校の倍率が高くなれば、そうした高校を必要としている子どもたちどうしが競わされて、入りづらくなるわけで・・・。

「いったい、なんのための高校改革やねん?」と言いたくなりますわ、ほんまに。


生駒市の中学校で起きた熱中症死亡事故に思うこと

2016-09-06 11:51:31 | 受験・学校

部活中の熱中症死亡「不適切指導」 無給水でランニング(朝日新聞デジタル、2016年9月6日)

http://www.asahi.com/articles/ASJ955KL7J95POMB00T.html

おはようございます。・・・というか、気付けばもうお昼ですが。

まずはこの件、亡くなった子どものご冥福をお祈りします。

それから、部活動中の熱中症死亡事故が起こりやすいパターンのなかに「ランニング」、特に「罰」としてランニングを課すことがあります。

これはもう私が川西オンブズに居た頃、つまり1990年代末頃からスポーツ医学関係者から言われていたこと。

たとえば武藤芳照・太田美穂『けが・故障を防ぐ部活指導の新視点』(ぎょうせい、1999年)には、「事例から見る部活動の問題」のなかに、「先生、水を飲ませてください―高校野球部員の熱射病事故―」が含まれています。

ここでは、ある年の8月半ばの午後、盆地の多い県の公立高校1年生サッカー部員が、練習を前日休んだことの「罰」として、水を飲まずに約35度の炎天下、1時間近く走らされて熱中症(当時の言葉で「熱射病」)を発症し、亡くなったという事例が紹介されています。

ちなみに、同じ本の巻末にある「図解 応急処置のポイント」にも「熱中症の予防と手当」の項目があります(ただ、内容が古いので、今だとこの「予防と手当」にはもっといろんな知見が得られるはずですが)。

このように、スポーツ医学関係者が書いた部活指導の本ですけど、90年代末の時期から「どうすれば熱中症を防げるか?」については、いろんな提案が行われています。

また、「罰」としてランニングを暑熱環境下で課すことの危険性も指摘されてきたわけですね。

この生駒市の中学校のケースの場合、このニュース記事によりますと、当該のハンドボール部には複数の顧問がいるなかで、一応、別の顧問は暑熱環境下での練習に配慮して、こまめな水分補給を指示していたようですが・・・。

でも、当日の練習を見ていた顧問には、それがよく伝わっていなかった様子。

さらに、この当日の練習を見ていた顧問は、練習中に走るのを早めに切り上げた生徒たちを「ごまかした」と判断して、追加で走らせたともあります。

「演技するな」「ごまかしてもあかん」等の発言が、部活顧問から熱中症で倒れる前の子どもたちにかけられるケースが過去の重大事故事例でもありましたが、今回もそのパターンをなぞっている感があります。

このようなケースがあることも考えて、文科省「学校事故対応に関する指針」をつくるときに、学校の設備・施設の安全点検だけでなく、私からは「教職員の指導のあり方や子ども理解の見直しも大事だ」と言って、そういう項目を入れていただいた次第です。

ですから、調査・検証作業のポイントも、この顧問どうしの連携のあり方、当日の練習環境とメニュー、子どもの状態に関する当日の顧問の理解等々にまずは焦点を当てていくことになるでしょう。

もちろん、顧問のスポーツ事故防止に関する研修受講の有無、事故防止に関する意識のありようなども気になるところです。

と同時に、事故が起きたのが「8月16日」ということにも注意が必要です。

お盆休みで数日練習を休んで、久々の練習ということも考えられます。

からだを徐々に練習できる状態にもっていかなければならないのに、無理をさせてしまった・・・ということも考えられます。

夏休み中の練習スケジュールなども調査・検証のポイントになります。

そして、この学校のスポーツ部活のあり方全体ですね。この学校のスポーツ部活は特に熱心に指導を行っていたのか。

また、熱心に行っていた背景として、この学校の生活指導面での課題はなかったのか。

さらに、大会運営等のスケジュールとの兼ね合いに無理はなかったかとか。

なにしろ別の顧問がこの日、他の生徒を試合に連れて行ったというような記述がこのニュース記事にありましたから「どんな大会? 練習試合?」というあたりも気になりますね。

ということで、これから生駒市教委は第三者調査委員会を立ち上げるとのこと。

こういった点を教職員及び子どもの双方からていねいに話を聴いて、なおかつ、ご遺族として気になる点もふまえた上で、調査委員会がきっちり調査・検証作業のなかで詰められるかどうか。

そこが、私としてはとても気になるところです。

ただ、1~2週間程度、作業が遅れている感はなきにしもあらずなのですが、生駒市教委として、学校側による基本調査(初動対応)のあと、その結果を示した上で、詳細調査(第三者調査委員会による対応)という形で、文科省の「指針」に即して動き始めていることはわかります。

今後はこの第三者調査委員会がどういう形でたちあがり、どのように運営されて、どのように事実経過の解明と再発防止策の提案が行われるのか。

また、そのプロセスでご遺族の意見や要望等がどの程度反映されるのか。

そこを見守りたいと思います。

もちろん、第三者調査委員会の運営等に関して、必要があれば「お手伝い」をさせていただく準備があることは、あらためていうまでもありません。

ついでにいうと、起きてはほしくないことが大前提ではありますが、重大事故が起きたときに、すぐに上記のような「調査・検証のポイント」を示して、現場に出動できるくらいのスタッフが常駐(それもできれば複数居る状態に)していないと、重大事故の調査・検証作業ってすすまないでしょうね、今後。

子どもの重大事故の調査・検証のシステム整備を主張するみなさんが「本気で」その必要性を主張されるのであれば、常駐での人員配置の必要性とその人員の訓練・研修等々について、せめて、このくらいのことは言わないとダメですよ。

そして、ご遺族や被害者家族、あるいは市民のみなさんは別として、特に子どもの事故防止にかかわる諸領域の専門家については、調査・検証のシステムが必要だというだけでは、もうダメだろうと思います。

また、それを言うだけで(国や自治体など)「誰かやってくれ」的な議論ではもっとダメで、チャンスがあれば「その調査・検証、自分がやってみせる」くらいの覚悟も必要かと思います。


「応答的かかわり」の不在ということ

2016-09-05 20:35:01 | 受験・学校

 話を聞いてくれる 「学校の先生」はわずかに2.0% (2016年9月2日 教育新聞)

https://www.kyobun.co.jp/news/20160902_06/

群馬県大泉町の調査結果だそうですが。

私が川西市子どもの人権オンブズパーソン在職時だから、あれは1999年頃。

その頃の川西市教委が行った「子どもの実感調査」では、「いじめ・暴力をうけたときに誰に相談するか?」という質問項目に対して、「教員」と答えた子ども(複数回答あり)は、小学生40%、中学生28%でした(2000年3月付けの川西オンブズの年次報告にデータあり)。

また、教員と話をすることが楽しいと答えた子ども(複数回答あり)も小学生20%、中学生8%でした(これも上記年次報告にデータあり)。

自治体が異なるし質問項目もちがうから単純比較できませんけど、この十数年で、教員に対する子どもの期待感や、日頃の教員とのかかわりに対する子どもの満足感ががくんと落ちている傾向は伺えますね。

背景に教員の多忙化や、教員側が「(自分たちの望むように)教えること」「いうことをきかせること」へのこだわり等々、いろんな要因が考えられます。

ただ、子どもが訴えたことにていねいに耳を傾け、教員として適切にリアクションを返していくという「応答的なかかわり」の不在状況が、ますます強まっていることは伺えますね。

ちなみに、この「応答的なかかわり」の重要性というのは、ここ何年か、大阪や兵庫、滋賀、京都、奈良等々、関西圏でいじめ防止や「体罰」防止をテーマにして教員研修に呼ばれるたびに、いろいろ私が言ってきたことでもありますが・・・。

そして、こういう状況をどう改善していくかを考えていくたびに・・・。

やはり「自分の語ることばを誰かにていねいに聴き取ってもらうこと」と、「誰かの語ることばを自分がていねいに聴き取っていくこと」の両面から、「お互いの話をていねいに聴きあう関係」を学校の内外にどのように創出していくのか、ということに私などはこだわってしまうわけですね、はい。

授業方法なんかも「見せ方」以上に、こっちの「聴きあう関係」の構築みたいなほうに興味がわきます。

まあ、自分の話の聴き方・語り方の問い直しも含めてですけど・・・。



いよいよ公開講座、参加申込の受付開始です。

2016-09-01 10:57:58 | 受験・学校

2016年度後期の京都精華大学公開講座・レクチャーガーデンのなかで、「学校での事故・事件とどのように向き合うか」という連続講座を私が担当する予定になっています。

その公開講座の参加申込の受付が、今日(9月1日)の13時からはじまります。

詳しくは下記の画像および本学ホームページを参照してください。

多くの方のご参加、お待ちしております。

http://www.kyoto-seika.ac.jp/info/garden/2016/late/lecture_sumitomo2016/