さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

猛々しき「蛮勇」を打倒 ドネア、凄絶な返り討ちで再起

2013-11-11 23:28:15 | 海外ボクシング

以前、一度だけ生で見たことのあるビック・ダルチニアンは、
試合ぶりがどう、勝敗がどうという以前に、その存在感の凄さが記憶に残るボクサーでした。
リングにふらりと現れたとき、遠くの客席にいるこちらにも、
まるで獲物を求めて目を光らせる、野獣のような佇まいが見えたように思えたものです。
そして昨日、TVの画面に映った彼には、またも同じ恐怖を感じました。

バンタム級転向後、思うように勝利を得られず、日本遠征でも山中慎介に敗れた後、
フェザー級において実現した、仇敵とのリマッチ。
しばらく続いた苦闘の日々を、たった一勝で精算出来る機会が目の前にある。
彼は自らの持つ殺傷本能を、全てさらけ出して、ゴングを待っていました。

その相手たるノニト・ドネアもまた、無人の野をゆく連勝をストップされての再起戦。
こういう状況で、ただでさえ、勝利のためにまず「打倒」を目指す両者です。
試合は初戦以上に、一打の致命傷を狙い合う、猛獣と狙撃手のような闘いになりました。


だいたい、各ラウンドはラスト近くになるまで、狙い合い、探り合いが多く、
ラスト10秒前後からヒットの応酬、という流れでした。

共に一打で致命傷を与えるパンチを持ち、またそれを共に狙っているものだから、
試合に流れというものがなく、突発的に起こるアクションを待つ間、
見てるこちらも息が詰まるような思いでした。

9回、激しい打ち合いからドネアの左が決まり、ダルチニアンが前にダウン。
追撃のさなか、ダルチニアンの打ち方を真似たような左を決めたドネア、直後にストップでしたが
勝負が決まった瞬間、何か興奮すると同時に、やっと一息つけるなぁという安堵もありました。

6年ぶりの再戦、共にフライ級時代からすると、当然スピード感はやや落ちましたが、
同時に、一打の決め手を持つ者同士のスリルは、やや形を変えたものの、まったく死んでませんでしたね。
よく「真剣勝負」なんて言いますが、本当に真剣で斬り合うような闘いでした。


勝ったドネアは、フェザー級ではまだまだ未知数というか、相手次第で苦闘もありそうですが、
この日勝ったWBA王者への挑戦ということになるんでしょうかね。
スーパーバンタム級でも最初はちょっと思うように行かず、西岡戦の快勝まで数試合を要しましたし、
徐々に調整していく可能性もあるでしょうね。

そしてダルチニアン、改めてその、唯一無二の存在に拍手です。
単なる勝利だけでなく「打倒」のために、蛮勇をふるって闘うその姿には、
傍目のあれこれつべこべを吹き飛ばす、蠱惑的な魅力、爽快感がありました。
最近は敗北の数も増えましたが、もうそういうこっちゃないですね。忘れ得ぬ王者のひとりでしょう。
一度だけとはいえ、直に見られたことも含め、有り難いボクサーだったなぁ、と思います...。

コメント (5)
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