そういうことで、昨夜は横浜アリーナにて観戦してきました。
「わしゃ、もう知らん」
「どうなと、お兄さんの好きにしたらよろしい」
と、それだけ書けば事足りてしまうような試合を見せられました。
しかし、本当にそれだけで済ますのもナニですので、
毎度の通り、まとまりませんが、とりとめもなく。
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これでもボクシングブログというものをやっている以上、
何か書こうと思った試合については、一応、メモなんぞを取りながら見ます。
役に立たないこともありますが、ないよりはマシだったりもしますので。
昨日、横浜アリーナで観戦したメインイベントについて、
私のメモは、こうでした。
「p、もうアタマ? i ワンツー」
以上です。
しかし、これを元に、見たものを書き出して見ると、以下のようになります。
立ち上がり、身体も締まり、動きも切れて見えたファン・カルロス・パヤノが、
左右のパンチを出し、加えて自然に、しかしよく見ると若干不自然に、頭も井上の方に寄せてくる。
試合前に、もつれる展開になるのなら、あれがこうで、これがあれで...と、
色々想像していた内のひとつを「絵」にして早々に見せられ、少し嫌な感じ...と思った直後、
その仕掛けを、さりげなく躱した井上尚弥の左ジャブが、ドミニカ人サウスポーの右腕の内側を通りました。
直後の右が出る、一瞬の間に、パヤノの重心が、僅かに前に出た、ように見えました。
そこに、ジャブの軌道をなぞって、後続の右がまっすぐに伸びていく。
遠くの席とはいえ、会場にいないと聞き取れないような「衝撃音」が聞こえ、
直後、パヤノが全身を伸ばしたまま、倒れる。
身体をよじって起きようとしたが、身体を支えられないパヤノ、顔からキャンバスに落ちる。
明らかに「終わった」ことが伝わってくる光景。
初回、僅か70秒で、試合が終わりました。
立ち上がり、少し重心を後ろに置き、引き気味の立ち上がりだった?パヤノが、
井上最初の攻撃だったあのワンツーに対し、イモ引いて逃げる「弱者」だったら、
このノックアウトはなかったのかもしれません。
しかし、強者と強者の闘い故に、こういうことも起こり得る、のでしょう。
さらに言うなら「たった」一撃で相手を沈めるに至るまで、井上尚弥が重ねてきた
労苦の膨大さも、忘れてはいけないことです。
その過程に、僅かにでも緩みがあれば、甘さがあれば、
あの「たった」一撃を放つことは出来ない。そう思います。
あまりに衝撃的な一撃を生み、支えるものの膨大さもまた、
ひしひしと伝わってきたもののうちの、大事なひとつ、でした。
...とかなんとか、賢しらに書いてみましたが、とにかく、本当に驚きました。
KO負けの経験は一度もなく、それ以前に「一筋縄ではいかぬ」ことでは
今回のWBSSバンタム級出場者の中でも最右翼、と思われたパヤノを、
初回、最初の攻撃「初弾」で倒す。こうして書いていても、現実味がありません。
それは昨日、衆目の眼前で起こった事実なのですが、それでもなお。
KOの瞬間は、場内、歓喜が爆発、というよりも、騒然、という感じでした。
私もご多分に漏れず、思わず席を立ち、しばらく呆然とリング上を眺めていました。
今までも、井上尚弥の試合ぶりに、あれこれ驚かされ、眼前の光景を疑う、
という気持ちになってきたものですが、その上に、まだこんな衝撃があり得るとは!
勝ち名乗りを受け、インタビューに答える井上尚弥を見ながら、
衝撃、驚愕、それを通り越した「呆れ」にも似た感情に包まれていました。
WBSSバンタム級トーナメントとは、井上尚弥が同級最強の座を手にするために
闘われる大会だったはずです。
しかし、彼はもう、優勝するまでもなく、全世界の眼前で、その証明をしてしまったのではないか。
いや、そうでさえなく、井上尚弥が参戦した時点で、その意味はすでにひっくり返っていて、
すでに最強である井上を破り得るものがいるのか否か、それを問うためにあるのが、この大会なのか。
あれやこれやと、頭の中を思いが巡り、なかなか止むことがありませんでした。
会場を去る道すがら、同道した友人たちとあれこれ話しながら、何かぼうっとした感じが長く続きました。
全てひっくるめて言うと、私は、とても心地よく「感動」をしていたのだと思います。
またしても、またしても、井上尚弥が与えてくれたそれに、ただただ感謝と、敬意あるのみ、です。
それにしても、井上尚弥は、本当に困ったお人です。
リングサイドに姿の見えた長谷川、山中、伊藤雅雪らは、あの試合で、何かを解説する暇があったのでしょうか。
ナルバエス戦における「A級戦犯」ぶりが未だに恨めしい香川照之さんは、出来れば黙っていて欲しいので、それは構いませんが、
人数の増えたラウンドガールも、メインでは出番なく仕事を終える羽目になっていましたし、
TV局の皆さんも、内心「出来れば、もう少し、あのその...」という感じではないのかと。
挙げ句、試合後のインタビューでは「次は海外、見に来れる人は来てください」とか言ってましたしね。
いや、本当に行きたくなってしまいますわ。無理ですけど。本当に、困ったお人もあったもので...。
WBSS仕掛け人のドイツ人がリップサービス込みでしょうが言っていた通り、冗談抜きでパッキャオを凌ぐ選手かも知れませんね…1発の強さは少なくとも上に感じます。年齢と相談でしょうが、今後もまだまだすごい夢を見せてくれるのではとワクワクしますね。
次の準決勝が待ちきれません。
それにしてもWBSSの雰囲気や演出は最高でしたね。外国にいるような感じでした。
しかしこれ、対戦相手はどうしたらいいのでしょうね。もらってはいけない、致命的になり得るパンチが多すぎる。どんなハードパンチャーでも、得意のパンチを打てる距離やタイミングといった「状況」を封じてしまえば、なのですが、井上の場合その「状況」が多すぎるし、自ら「状況」を作り出す能力にも長けている。さらには、優れたボクサーほど「ここから強いパンチはこない」というのを身体で覚えていると思うのですが、そのあり得ない位置とタイミングから井上の体重ののったパンチが飛んでくる。今の井上はまさに「手がつけられない」状態に思えます。
お読みいただきありがとうございます。私も同感で、マクドネル戦のようにはいかない、その過程で、良いものだけが見える試合になるものかどうか、相手の特徴を考えれば考えるほど、色々難しくなる部分もきっと...と思って、構えに構えて試合を見に行ったんですが...アレですからねえ。気づいたら立ち上がっていて、座るときは腰が抜けたような気分でした。
>neoさん
前戦で倒れている映像も見たから、その辺り、多少は不安もあるんだろう、とは思いましたが、立ち上がりは非常にしっかり構え、動きも良かったように見えましたね。左右を打って、右腕で井上の頭を巻き込もうとしたあと、アタマもけっこう寄せていて、あーやっぱり、こういうのも込みなんや、と嫌な気持ちでしたが、言われて見ればあのとき、井上がアッパー打ってましたね。
サウスポー相手に、インサイドからジャブ、右ストレートを通すのは、確かに難易度が高いというか、基本的には高度な応用科目だと思います。しかし、例えば徳山昌守なんかも、あれと同じパンチ打って、当てることは当てたでしょう。違いは、それで相手が倒れるかどうか、なんですが...。
今後については、記事にも書いたとおり、井上への次の「挑戦者」は誰か、という興味になってしまいましたね。それが大会というフォーマットに乗って、都合ではなく強者の勝ち残りで決まるというのは、本当に最高です。楽しみで仕方ないですねー。
>R35ファンさん
別記事上げましたが、拳四朗がまた良かったんですよねー。メインが万が一、億が一、凡戦になったとて今日はOK、とか思うくらいに。今思えば、馬鹿の思うことなど、一銭の値打ちもなかったわけですが(笑)
次は、相手によりますが、下馬評通りならアメリカなんですかね。プエルトリコ人相手だと、果たしてどこになるものか。オージーの方が勝つと、ひょっとしたら日本の可能性も出てくるんでしょうか。この辺は次の結果待ちですね。
>無記名の方
出来れば、次回からは何かお名前書いてくださると嬉しいです。よろしくお願いします(^^)
録画放送見ました。まあ、試合が早く終わっても出演料は一緒なんでしょうが...(笑)
山中慎介のような強いチャンピオンでさえ、笑うしかないという風でしたね。凄いものです。
>さんちょうさん
バンタム級時代のドネア以来、これに類するバンタムを見ていない、という気がします。剣崎順より強いやん、とか、いらんことを思ったりも(笑)
場内の雰囲気良かったですね。試合順も、フジの変な都合よりも世界配信が優先されたおかげで、ストレスなしでしたし。横アリならば出来たこと、という感じもありましたね。満足感の高い興行でした。
>盛者必衰さん
二回も続けて初回KO、しかも相手がふたりともタイトルホルダー経験者ですからね。井上くらいになると、相手が強くなればさらに輝く、という、そんな都合のええ話おまっかいな、漫画やあるまいし、と普通なら思うことを現実にやってしまうものなんですね。
日本で次はいつ見られるんだろう、当分ないかも、という声も聞きましたが、私はWBSS主催者の言うことは、話半分くらいでちょうどいいかな、と思っておりますし、そこへ大橋「会長」の存在も考え合わせると、まあそんなに待たんでも大丈夫でしょ、という感じに見ています。それが喜ばしいことかどうかは、別の話ですが。
IBFは、統一戦などの場合、当日計量を行わないよう、ルールを改正しました。確か昨年のクロフォードvsインドンゴ戦でも、当日計量はやっていないはずです。まあ、これも色々、矛盾を抱えた話ではありますが...。
>海の猫さん
KOの瞬間は、何か「ドーン」と来ましたよね。遠くの席でも、何か伝わるものがあるんですよ。不思議なことですが。
私は井上の右アッパーはあまり気にならず、むしろパヤノの仕掛けがさっそく、ああいう形でちらりと見えた、そこに目が行っていました。左のパーリングを繰り返す井上に、パヤノが次、何をしてくるのかと思っていたら、あのワンツーで決まりましたが、今思えば、倒されるまでの時間、パヤノを「止め」てしまっていた何事かが、そのパンチだったのでしょうか。
桁外れの強打、その出所、決まりどころが多すぎて、対処しようもない、という言葉で括るなら、全盛期のロベルト・デュランに匹敵する、それが今の井上尚弥かもしれません。スタイルもキャラクターも、時代も違いますから、井上の整然とした強さと、天衣無縫そのものだった「石の拳」は、あらゆる意味で別物ですが、その反面、列挙された条件に絞れば、通じる部分があると思います。
パヤノはあんなパンチを初めて見たのかもしれませんね。反応がよくてスピードがあるラウシー・ウォーレンですらあんな鋭角なアッパーカットは打ってなかったですし、威力がそもそも違いますね。
さて、次はエマロドなんですかね。とても良いボクサーですが、各々のコンポーネント、どれを取っても井上尚弥が上回るんですよね。エマロド視点で戦略を考えると、ちょっとアタマが痛くなりますね。
○でしょうね