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さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

井岡一翔、モラトリアム王者の道へ

2013-02-18 02:39:25 | 井岡一翔


その昔、世界タイトルというものは、獲ったら当事者はもちろん、
いわば赤の他人である我々ファンも、時には万歳三唱までして喜ぶ物でした。

TV局の都合により、叩き込みで行われた試合も、無いことはなかった。
しかし、そういう試合で生まれた王者には、普通より厳しい初防衛戦が
待ち受けているのが常で、それ故にファンは、新王者のさらなる勝利を
祈る思いで応援したし、結果が敗北となっても、ボクシングというスポーツの尊厳、
優勝劣敗の冷酷な真実を悲しみつつも、それを心底、愛せたんだと思います。

前王者とのリマッチを強いられた白井、原田、海老原を持ち出すまでもなく、
その後においても、多くの王者がその苦難を強いられ、多くが辛酸をなめています。

ロイヤル小林は初防衛戦にて、戴冠後わずか45日、韓国での防衛戦を義務づけられ、陥落。

中島成雄、友利正は共に、同級史上屈指の技巧派イラリオ・サパタに敗れました。

小林光二は、王座交代が続いたWBCフライ級タイトル戦線において、ついに登場した
「本命」と言うべき強打のガブリエル・ベルナルに、壮絶なKO負けを喫しました。

六車卓也は、当初挑むはずだった王者ベルナルド・ピニャンゴの突然の引退を受け、
調整期間不足の2位アサエル・モランを破って王座を獲ったあと、「60日以内」と決められた
1位朴賛栄との指名試合を戦い、バッティングの不運もあって王座から転落しています。

さらに、初防衛という区切りを外せば、避けられない強豪との対戦において、
壮絶な敗北を喫した事例は、いくらでもあります。


昨今のボクシング界において、どの試合がどの例に相当するのかは議論百出でしょうけど、
今回のロマゴン、井岡両陣営による「当面、対戦しないという合意」と、
それ故の入札回避の話が、主に海外サイトによる情報通りの内容だとすると、本当に残念です。

興行事情、というより「TV番組」の都合で、ありもしないタイトルを作り上げて戴冠し、
その際に棚上げになった本来の王者との対戦を、金銭によって回避した、というのが事実なら、
そのようなタイトルには、世界王座としての正当性がどこにもありません。
返上してWBCに鞍替え、という、普通ならあんまりな話の方が、まだ良いか、と思えるくらいです。

確かに、現時点で勝算が薄いから、というのは、ひとつのプロの判断ではあります。
しかし、仮にも「世界王者」の肩書きを背負っている以上、勝てる見込みが立つまでは、
というような猶予期間を求めるというのは、話の筋が違います。
まして、亀田兄弟のような、もともと箸にも棒にもかからないような手合いならともかく、
井岡一翔のようなボクサーをこのような「モラトリアム王者」にしてしまうことは、
ロマゴンと対戦して敗れること以上の恥辱です。やってはいけないこと、なのです。


今朝、一部の国内向けの報道の中で「両陣営とも、統一戦はもっと準備期間をとって、
将来的に大興行として行いたい意向があった」という、言い訳のようなコメントが出ています。
...ようもまぁ、こんな子供だましみたいな理屈を思いつくものですね。

誰も今、このカードを「統一戦」として期待しているわけじゃありません。
井岡の持つ王座に、本当の価値が無く、棚上げされた形の王者ロマゴンに「挑戦」せねば、
その王座に正当性はない、という話を、平然と「王者同士」の話にしてしまう。
その感性は、まさしくあの一家と共通するものです。

数年前、亀田大毅が世界王座にあった頃、亀田陣営がパナマに代理人を派遣して
強打の暫定王者ルイス・コンセプションと「対戦しない契約」を交わした、という現地報道があり、
それを「うさぎにく」さんのブログで知った時は、心底驚き、呆れ、嗤ったものですが、
今回の井岡陣営による交渉が、報じられている通りならば、完全にこの例の踏襲です。

善き行いは真似難く、悪例はすぐに広まるのが世の常とはいえ、
本当に、どう見ても救いのない話になってしまいました。
考え得る限り、最低最悪、下の下、という感じですね。
人もあろうにあの井岡一翔が、こんな無様な形で、内実のない王座に就き、
王者の宿命に背を向けてしまうとは...。


私は、井岡、ロマゴン両陣営の合意にならって「当面」井岡一翔の試合を見ても、
全面的にそれを支持する気持ちを持てないと思います。
そして、その思いを拭い去れる日が来るのかどうかも、かなり疑わしく思います。
108ポンド級において、ローマン・ゴンサレス以上の対戦相手が存在しない以上、
彼に匹敵せずとも、それに次ぐ強豪との対戦を、3~4試合立て続けに行うくらいであれば、
一定の信頼は回復されるかもしれませんが、その頃には、ロマゴンはフライ級に去っているでしょう。

これまで何度も書いてきたように、井岡一翔というボクサー自体は今でも好きですし、
ミニマム級における実績、今後の将来性をも疑うものではありません。

しかし、いったん経済的成功を収めたが最後、それを維持すること「のみ」を優先し、
ボクシングの持つ(時に悲劇的な)宿命に背を向けさせてしまった、陣営の舵取りに対して、
私は批判的立場を取ります。

そして、井岡一翔が、当面の間、多くから向けられるであろう懐疑の視線を払拭するためには、
それこそ膨大な労力が必要とされるでしょう...もっとも、陣営の方々にしてみれば、
そもそもそんなものを払拭するつもりなど、ハナからないのかも知れませんが。



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7 コメント

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Unknown (ハンク)
2013-02-18 10:35:49
以前「内容の濃い、重みのある三階級制覇にしたい」という趣旨のことを井岡選手が語ったという記事を読みましたが、もはやそれが実現される可能性は殆ど無くなったといえると思います。

井岡選手本人から戦う要望が聞こえなかったことを考えると、ロマゴン戦回避は陣営だけではなく、井岡選手本人の意思でもあるのだろうと個人的には考えています。
ドネア戦を追い求めていた頃の西岡選手の行動とは対照的でした。

井岡選手には、日本人にも一流の選手がいるのだと海外に対してもアピールできる存在になってほしいと期待していましたが、まさかある意味で亀田以上の恥をさらすことになるとは・・・残念です。

同じ若手スター候補の井上選手にはこうはなってほしくないものです。TBSから離れてくれて本当に良かった。
返信する
Unknown (アラサーファン)
2013-02-18 13:10:53
今回はパソコンから投稿させて頂きます。井岡君は
もう応援しません。
ミニマム級で防衛を重、統一戦を実現させた井岡陣営の志はどこへ行ってしまったのか。
彼の少し前のスター、長谷川様は自分のファイトマネーを削ってでもモンティエルとの事実上統一戦を実現させました。
西岡さんはドネア、ジョニゴンと海を渡り対戦しました。
現在のスター、山中さんは決定戦こそ微妙な相手でしたがその後の防衛ロードはこの上なきレベルです。
しかるに井岡陣営はこんな姿勢では  金さえ積めば
指令を簡単に覆すWBAもおかしいですが、亀田レベルのチキンぶりをさらす陣営は応援に値しません。次試合見に行く機会あれば思いっきり野次ってやります。
返信する
Unknown (なかじょー)
2013-02-18 18:50:53
昨年のMVP、すなわち日本最高のボクサーがこれですか、、、
これまでの全てを壊す内容ですね。
怖いなら返上してくれ、、、
返信する
アンチ井岡さんへ (ごようあらため)
2013-02-19 00:13:50
ブログ主さん、成功者へのひがみでしょう。

ラスベガスでの一戦を実現するために頑張ってるんです。

あなたはボクシングファンじゃない!
返信する
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2013-02-19 06:13:39
>ハンクさん

最新の専門両誌において、井岡は「やるときがくれば、運命に従う」と、ちょっと先の話みたいに語っていますね。本当に、遠くない将来対戦するのであれば、救いもありますが...今回の「合意」とやらに、せめて「年内か来春にも対戦」というような文言でもあれば、何とか納得もしますが、そういうのも無いですし。
結局、ありもしなかったタイトルを掲げて防衛戦をする、という、一番井岡に相応しくない道を選んでしまいましたね。

本人の意志に関しては、本人はやる気が無いわけではない、と思える反面、「最高でも先送り、最低ならこのまま回避」という陣営の選択に反しないような言葉選びなのかな、とも感じます。

「亀田以上の恥」かどうかは何とも言えませんが、井岡一翔であるがゆえに、あのような連中と同様の真似をしてはならない、という意味では、その通りなのかもしれませんね。井上の件も同感です。フジがどうなのか以前の問題として、TBSから離れてくれて良かった、と。

>アラサーファンさん

最近でも、先人たちが苦難の道を進んでいるのと同様、ミニマム級における井岡一翔の実績は、それらに見劣りしないものだっただけに、転級早々コレか、とげんなりしています。アラサーファンさんは、井岡に対するTBSの悪影響を早くから危惧されていましたが、まさかここまで酷い事になるとは思っていませんでした。

今回の「合意」は、ボクシングの尊厳を護るために闘われるべき試合を、関わった者全員が、金銭によって先送りにしたわけです。もちろん過去を振り返って、特定の選手の「勝負時」をどこに置くかというプロの判断により、こうした事例がいくらでもあるのは事実ですが、それにしてもこれは悪質です。「先送り」を望んだ側が、世界王者の肩書きをすでに持ち、それを名乗り続けるとなると、それこそあの箸にも棒にもなシャッチョさんくらいしか例がないんじゃないでしょうかね。

野次るというのも良いかもしれませんが、一番良いのは観戦ボイコットじゃないでしょうかね。もっとも、井岡ジム興行の集客力はけっこうなもので、まあどの程度が「実券」かどうかは不明なれど、ご存じの通り、あの膨大な発行枚数を誇る(笑)自由席チケットの件を見てもわかるように、あくまで小さな抵抗に過ぎないかも知れませんが。
真面目な話、エルナンデスやニエテスくらいの相手じゃないと、会場まで足を運ぶ気にはなれませんね。これで下位のランカーなんか選んだら...いや、もう、その辺はすでに、怒るポイントでは無くなっていますか。

>なかじょーさん

ホント「ぶち壊し」のレベルですね。まあ、昨年のMVPは、大晦日の試合を世界戦として見ていませんので、山中慎介で良かったと思っていますけど。というか、投票する記者さんたちって、あのランク5位相手の「転級初戦」に過ぎない試合を、世界戦としてカウントして評価したんですかね?その辺、どうなっとるの、と一度聞いてみたいものですね。


>ごようあらためさん

コメントは記事の内容を読んだ上でしていただくようにお願いします。

返信する
Unknown (さんちょう)
2013-02-24 21:36:19
試合すれば負けるかもしれない、倒されるかもしれない。
それでもリングに上がって全力で戦う。こんな悲壮感を背負って戦うからボクサーは美しいし、カッコイイ、尊敬に値するのだと思います。
それらを放棄したらもはやリングにあがるべきではない。

いっそのこともともとライトフライの宮崎選手がロマゴンとやったらどうですかね。

日本ボクシング界はまだまだ長谷川選手にひぱっていってもらうしかないようです。もちろん、内山選手、山中選手にも期待しています。
返信する
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2013-02-25 17:46:33
>さんちょうさん

サッカーなんかで、昔は知らず、今は格下としか言えないアジアのセカンドレベルの相手との試合を「絶対に負けられない闘い」と喧伝したりしてますが、以前はボクシングにも必ずあった「避けられない強敵との闘い」を金銭で回避し、大したこともない相手との試合を、さも歴史的大一番のように言い募るTV局とのビジネスを全てにおいて優先した今回の陣営の舵取りは、本当に情けない、格好悪い、ボクシング「らしく」ない、と色々な言い方で批判されて然るべきものですね。

宮崎も今回、暫定王者を無視した決定戦に出ましたが、初防衛で対戦するとのことで、一応筋は通す形になりましたね。

ボクサーの選手生命が伸び、ピーク年齢も昔より高い年代に来ることが増えたのは事実ですが、30オーーバーの選手たち頼りになってしまうのも考えものですね。岩佐、井上たちの今後にも期待をかけたいと思います。

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