そういうことで昨日は有明アリーナで観戦してきました。
会場や進行、アンダーカードなどについては色々言いたいこともありますが、とりあえずメインから感想です。
待ちくたびれた末に初回のゴングが鳴って、驚いたのが井上尚弥の、左を下げた構えでした。
いわゆるL字ガード。どっちがアメリカの選手で、どっちがアジアの選手かわからないような「絵」。
試合展開次第でこういう構えをすることがあるとしても、まさかスタートからこの構えで立つとはまったく想像しておらず「え?何で?」と。
スティーブン・フルトンの左をいかに外し、防ぐか。それが序盤の鍵かと思っていたのですが、右ストレート、クロスを打ってこい、と誘っているようにも見える。
予想外の「オープン」な展開を、井上が望むのか、と。それほどに、左の差し合いになっても自信があるのか。
この構えはフルトンにとっても予想外だったのではないでしょうか。
まず遠い位置からジャブを突いて動く、というスタートを切るべきだったはずのフルトンが、若干前に出て、右を当ててみようか、と迷っているように見える。
そしてその分、本来頼りの、頼みのはずの左が良いときのように伸びず、切れもない。
この若干の狂い、乱れに乗じて、左の応酬で、井上がより正確に、深く踏み込んで当てている。
元より技巧派というものは、自分と同等か、より巧い相手が嫌なものでしょうが、井上は単に技巧のみならず、予想外の構えで立つという知略でもって、フルトンを相手に、早々に優勢の立場を手に入れてしまったようでした。
そして頼もしいことに、転級初戦の井上尚弥122ポンドは、フルトンと比べても見劣りしない、堂々たる体格に見える。
スピードも落ちてはいない。若干、下肢に硬さが感じられるが、階級のハンディキャップは心配要らなさそう。
2回、早々に井上ワンツー、次はスリーパンチ、ボディへさらに2発おまけ。速い。続いて右強振、フルトン外すが大わらわ、という風。
フルトンも右を返すが井上、足で外してアゴを指し「ここだよ」と余裕のジェスチャー。井上、ガードの上でも右を叩いて追い立てる。
井上、完全にフルトンを呑んでかかっている。
フルトンがヤワなボクサータイプだったら、早々に打ち崩せる流れ。
しかし3回、フルトンが前に出る「布陣」。しっかり踏ん張って、攻め返そうとする。早々に立て直しを狙う。この判断の早さはさすが。
フルトンのチョッピングライトに、井上左ダブルで対抗。ジャブを突くが井上が右クロス被せる。さらに左ボディジャブもまともに入る。
この回、フルトンの頑張りが見えるが、劣勢は変わらず。だが4回、フルトンのジャブに伸びが見え始める。
井上のワンツーが際どく飛ぶなど、ポイントは井上だが、フルトン僅かずつながら立て直してくる。
5回、両者ジャブを飛ばし、外し合う。最後に井上が連打、左ボディ。しかしジャブの応酬自体は、フルトンが互角にやれるところまで持ってきている。
フルトンのジャブに、井上4連打で脅かす。しかしフルトン、ワンツーをクリーンヒット。無駄に速くなく、当てるための適切な調整をしたパンチ。
なおかつ、ワンの左は正面から、ツーの右は外から斜めに来る軌道。井上まともに打たれる。井上のワンツーに、フルトン右ダイレクト。
井上さらにワンツー、フルトン左グローブで受け、ロープからサイドへ逃げる。格好良くはないが、きちんと避けている。
この回、ポイント微妙な印象。振り分けてフルトンかもしれない、という回。
試合が終わってから思ったことですが、もしこの内容が初回に来ていたら...この試合、どうなっていたかな、と思ったりもしました。
6回、互いに息を詰めて探り合う。井上左フック飛び込み。ワンツーから前に伸ばす左アッパーのスリーパンチ。
井上右クロスかすめる。左フック応酬。フルトンジャブ決めるが、井上前に出ながら小さいフックの連打。しかし締めの左フック強振は、フルトンがダック。
両者、攻防の切り替えが鋭く、それが連続して見られる。狙いを持ち、それを読み合い、外し合う。
ヒットとリターンによる、得点と相殺の連続。数多ある世界とつくタイトルマッチの中で、これは本物中の本物だと、この一連を見るだけでわかる、そんな場面。
7回、少し消耗が見えたフルトンだが、井上のパンチを小さいバクステップで外す防御が冴え始める。
井上のジャブを外して右フック。耳の辺りに入った?クリーンヒット。井上ロープに追って連打も、ほぼ外される。
この回はクリアにフルトン。場内、これは簡単に倒せる相手ではない、というに収まらず、徐々に井上尚弥が苦境に追いやられるのではないか、という緊張も、少なからず広まっていたように感じていました。
8回、井上左ダブル外される。しかし左ジャブをボディに散らし、しっかり当てて行く。
これだけでは後続打で捉えるまではいかないだろう、と思って見ていましたが、後に思えばフルトンも、7ラウンズの間、井上尚弥と対峙しての疲弊と、当然ながらダメージも多少、と言えないものを抱えていたのでしょう。
井上の左ボディジャブで「ピン留め」しておいての右ストレート、上下ワンツー。これがマトモに入ってフルトンよろめく。ダウンかと思ったが踏ん張る。しかし、そこに井上が左フックで飛び込んで来た。
普通、ワンツーまでは当たっても、3つめがこの流れで当たるものではないが、そこが井上尚弥の天性か。フルトン、ダウン。
終わったと思ったら、驚いたことにフルトンが立ってくる。しかし目線を井上から外し、ロープ際へよろり、と...止めるかと思ったが再開、井上がコーナーに詰めて左ボディフック。
斬るように当たったこのパンチで完全に止まったフルトンに、左右の連打が飛び、レフェリーがここで止めました。
試合後のインタビューでは、フルトンを引かせず、出て来させたかったがために、構えも変えて、ペースも上下させて、という旨を語っていたようですが、見ている最中は、正直そのような意図は読めず、少々重い気持ちもありました。
転級初戦で、肝心要のスタートを見事な知略でもって成功させ、ペースを掴んで、フルトンの技巧を、好ペースを封じた試合展開は、フルトンの巻き返しがよほど爆発的なものでない限り、井上の勝利をほぼ確定させていると見えましたが、同時に今日は判定であろうし、終盤に向けてのコントロールがどのくらいのレベルで可能なのか、というところに、目が行っていました。
また、入場時にモニタに映った井上尚弥の表情は、なんとなく不安の翳りがほの見えた気もして、何かコンディションの面で不安でもあるのかな、と心配もしていました。
序盤はその不安を忘れる好スタートでしたが、井上の攻防、細かい攻めの足捌きはあまり出ていないようにも思い、相手に追いつかれることはなくとも終盤、苦しい場面があるかも、と思っていた矢先に、強烈なエンディングがやってきたわけ、です。
余計な心配は、この試合に関しては無用だった、と言えるでしょう。
しかし今後のことばかりは...井上は「減量やリカバリーの方法など、改善の余地はある」と言っていましたが、この辺り、今回の試合では伏せたまま戦い終えられた何ごとかが、彼の身に起こっていたのかもしれません。
そして、それもこれも引っくるめての話ですが、やはり転級初戦で、階級最高の王者と認められたスティーブン・フルトン相手に、判定になっていても問題無い優勢を手にし、その上で強打を決めてフィニッシュしてしまう井上尚弥は、改めて驚異の存在です。
パワーやスピード、テクニック、どの面でも上回っていて、それに加えて、その優位性を確立するインテリジェンスの面でも、あのスティーブン・フルトンより一枚上手だった。
なんという凄い選手だろうか、と。この選手の試合を、同時代に生きてリアルタイムで見られることの喜びを、また体感することが出来ました。
試合後、日本人ボクサーによるアフロ・アメリカンとの世界タイトルマッチの対戦は、浜田剛史のロニー・シールズ戦が初の勝利だった、と友人に教えてもらいました。
あの試合が勝利なのか、という重大な問題はさておくとしても(さておくんかい)その後、辰吉丈一郎(グレグ・リチャードソン戦)村田諒太(ロブ・ブラント再戦)に続き、4つ目の勝利を、井上尚弥は手にしました。
米国のメディアや関係者の間でも、井上尚弥の声名は、ますます高まることでしょう。
この日曜日の、「世界」ウェルター級王者決定戦の内容と結果に、なんだかんだと左右されないわけはない、と思いはしますが、例のP4Pランキングでの1位返り咲きも、現実的な話となるでしょうね。
敗れたスティーブン・フルトンは、試合後、井上と直接言葉を交わすことは、見ていた限りではなかったように思います。
彼にとり、生涯最大のビッグマッチでの初黒星であり、その内容が、おそらく彼の想定を越える部分も含めての完敗だったことに、少なからずショックを受けていたことでしょう。
しかしその試合ぶりは、押しつけられた劣勢の中でも、常に懸命でした。
ニックネームに反し、全てを冷静にコントロール出来ているわけではないと見ていた選手ではありますが、避ける動作が不格好であろうと、それもこれも受け容れた上で、彼は井上尚弥と正対しての攻防で、苦しい中でも倦む事無く、最善の手を尽くして闘い続けていたように思います。
試合前に、彼について色々と書いたことで、外れていたこともありますが、思っていたとおりの部分も色々見えました。
やはり、いかな井上尚弥といえども、序盤のうちに打ち込んで、畳んでしまえるような、ヤワなボクサーではなかった。
試合を見ていて、この時間は本当に濃密なものだなあ、と実感すること再々でしたが、そういう試合が見られたのは、間違いなく、このフィラデルフィアからやってきた、一流のボクサーの存在あらばこそ、でした。
井上尚弥と、スティーブン・フルトンの両者に拍手を送ります。
本物の「世界」タイトルマッチを、充分に堪能させてもらえた喜びに、まさるものはありませんね。
※写真提供は「ミラーレス機とタブレットと」管理人さんです。
いつもありがとうございます。
自分も試合中は足を止めてサイズを使ってきたフルトンが5Rからペースを掴んできたなと思っていたのですが、本人談だと相手のペースに合わせるのも作戦だったとは驚きました
思い返せば河野戦、モロニー戦とタフでIQやクリンチに優れ、そういう相手が前に出てきた時には同じ作戦を使っているのですが、階級や相手の力量のバイアスがかかる見てる側からは不安になります笑
結果的には判定で勝ちが確定したスコアにしてからKOという、序盤KOより衝撃は少ないものの、力量差を一番示せる結果でしたのでP4Pたる所以を見させられたなあと
ただ、最も驚いたのはリードの差し合いでここまで差が出たことです。フルトンのジャブ自体の精度は階級内でのリーチ差、ハンドスピードを考えればトップクラスのものだと思いますが、踏み込みの速度とタイミングの良さに差があるとここまで一方的になるんだなと、想像以上でした。と思うと同時にポイントは取れていなかったものの、リードの差し合いで渡り合えたロドリゲスは相当タイミングが優れた選手と改めて感じました。井上と互角以上に差し合うにはフルトンとロドリゲスの良いとこ取りした選手、リゴンドーのような歴史に残る選手じゃないと厳しそうです
また、KOの起点となったパンチも、今回は過去のパワーによる蹂躙やカウンター、ボディなどと異なり、一流同士の駆け引きの流れの中のコンビネーションによるものでとても面白かったです
井上が話していた減量とリカバリーについての改善点について、個人的には今回の減量またはリカバリーは上手くいっていなかったと感じています。入場時の緊張感に加え、実際にリカバリー後の体重がバンタム時代と変わらなかったみたいですし。そうなると当日の体重差も想定以上に大きくなると思うので、少なくとも増量分は体重が戻るように改善して欲しいですね
とはいえ、これが出来なければ話にならない距離のコントロールに失敗し、ならばとクリンチを試みても容赦なくパンチをねじ込んでくる恐怖の男を相手に、倦むことなくよく戦ったと思います。ポール・バトラーとは格が2枚も3枚も違う、アルファベットいらずの本物の技巧派王者の誇りは確かに見て取れました。でも、あれが精一杯だっただろうなとも同時に感じました。よく井上の強打を避けてはいるが、それ以上の『構え』には入れず、数少ない顔面へのクリーンヒットを得ても、そこからもう一踏ん張りしてコンビネーションを叩き込む余力まではなかった。それを井上も感じ取っていたと思います。序盤からずっと井上が出し続けていたボディジャブは事実上のフィニッシュブローの布石であるのみならず、それだけでフルトンを十分に消耗させていたように思います。もしメイウェザーが消耗した状態でモズリーの右ストレートの直撃を受けていたなら? というifがあのシーンだったのかも知れません。
テクニックと駆け引きで名を売っていたアフロ・アメリカンの王者相手に、部分的にポイントを渡す場面はあったとしても全体として圧倒的に支配し、レッスンを施し、最後には文句のつけようのないKOで締めくくるという、向こうの人間が最も評価する形での勝利というのは、過去2回挑戦時のアーリーKOよりも価値があるものと受け止められるでしょうね。逆に言えばスーパーバンタムでこれ以上に価値ある勝利として受け止められ得る試合は存在しないとも言えますが……。
そして、日本のだいたいのボクシングマニア様方さうぽんさん含め、早い段階から既に気付かれておられた事もまた尊敬の気持ちです。
私は井上尚弥にはバンタム統一までを見て、もぅ負けないで引退してもらいたいと思うようになりました。でも常に上へ上へ、そして倒す本能が強いボクサーなので叶わない可能性もありますが…。
たくさんのボクシングスーパースターやビッグマッチ見てきてワクワクや爽快なモノを味わってきましたが、井上尚弥ほど全ての試合で期待を裏切らない、期待の上を提供してくれたボクサーっていません。見ている人を楽しませるため全力を尽くし結果現実に魅せてくれる。これが真のスーパースターなんだと思います。まさか日本の若者がそれを教えて魅せるとは…。
野球では大谷翔平が打席に立つだけで世界中がワクワク、これこそスーパースター。これから井上尚弥がリングに立つ、それだけで世界中がワクワク、ドキドキ。
日本の枠のスケールじゃなく、全世界の人達でこの日本人2人を存分に味わい、楽しみたいですね!!
凄すぎ、、日本人(笑)
ドネア2もそうでしたが、この相手にはこういう勝ち方をして欲しい、という自分の身勝手な願望を、井上は悉く叶えてくれるのですよね。ドネアには真っ向から打ち勝って倒して欲しい、フルトンには技術、スピードで明確に上回りポイントリードした上で倒して欲しい、と思っていました。それは最も評価が上がるけど最も難しい、でも出来る選手にとっては最善手という戦い方。それを井上は想像を超える形でやってしまう。夢のようです。
フルトンも相手によって戦い方を変え、相手の土俵でも上回ってきた選手ですから、この敗け方はショックでしょうね。ジャブの差し合いやアウトボクシングで上回られただけでなく、戦略面や頭脳戦で完敗。フルトンは用意してたであろう展開を全く作れなかった。ブラッドリーの言うように「レベル」を知る試合となってしまいました。
海外では、ボクシング好きでも井上はハイライトしか見たことない、という人はまだまだ多いと思います。倒し屋のイメージが強く、日本以上のインパクトだったでしょうね。反響の大きさを見ても、African-Americanと戦う意味は本当に大きいと感じます。
この日唯一不安になったのは、試合前に井上が脚を頻繁に叩いてた時ですね。何か問題を抱えているのかと。試合が始まってからは忘れてましたが、実際のところどうだったのでしょうね。後は1R終盤の謎のクリンチ。あれは未だによく分かりません笑
フルトンとの体格差?クリンチ際でもぶつかる時でもパワー面でも全くない。
ただあれだけ尚弥様が空振りしたのは初めてでしたし、足を踏んだりしながら重心は後ろだったりとフルトンの細かいテクはさすがでしたね。
とはいえです。結局全体として見れば試合は尚弥様の手中にあり、そして戦慄のKO。あれで調整法には改善すべきところがたくさんあると。いやはや
世界最高峰の試合が見られるこの幸福。
中谷くん、ケンシロウさん、そして尚弥様と、私たちはこの方がたを見られるこの時をできるだけ長くじっくり味わい、堪能したいですね。
本人の言にウソも間違いもないのだろうと、見終えて納得せざるを得ませんでしたね。一方的に迷いなく引かれたら面倒だから「調整」していたと。信じられないほどレベルの高い話ですが。
採点に関しては、あの時点ではそうでしたが、あの後フルトンの挽回も多少はありそうに思えました。さすがにそれも込みで試合を運んでいたのかどうかは、わからないところですが。
左リードの応酬は、それで勝てたら凄いし、勝てる可能性は充分あると思いつつ、フルトンにとっても良いペースでジャブが出せる間合いになってしまったら面倒だろう、とも。しかし初回の構えから、色々と相手を戸惑わせ、狂わせていましたね。その上でのペース掌握には、感嘆するしかありません。本当に頭良いですよね。
リカバリーについては試合後、本人の想定と違っていたような話が出ていましたね。もちろん118に落とさずに済んだのだから、身体は楽なはすですが、戻りが少し足りないと。そこは次回以降の課題なんでしょうね。
>月庵さん
唯一、長谷川穂積だけが可能性ありと見ますが、今回の井上が選んだスタートのように、知略の部分も求めるとなるとなかなか...仰る通り、初回で井上が完全に相手を手中に収め、呑んでかかっているように見えましたね。フルトンが攻撃でも防御でも、自分の良いバランスを取れる時間がほぼ皆無という序盤は、改めて井上尚弥畏るべし、と思いました。
それでも、現状の122ポンド最高のボクサーであったことは確かでしょうね。ダニエル・ローマン戦の水際立った試合からして、普通の日本人ボクサーではほぼ、攻略至難でしょう。
モズリーがメイウェザーに決めた右は凄かったですね。あれをしのいだメイウェザーも、好き嫌いは別にして(まだ言うか)やっぱり「本物」だということでしょうが。
今回の試合は、井上の試合をきちんと見ていないあちらさんにも、いよいよこれは、という受け止め方をさせるに一番良いものだったかもしれません。しかし今後は、スーパーバンタムにおいて、これ以上の試合があるかな、という。同感です。まあ、タパレスを逃しはしない、そしてネリーやカシメロとやって、という「算段」は見え透いていますね。とはいえ、これからその算段を妨げる何者かが、何ごとかを起こす可能性もあるのでしょうが...。
>NBさん
フルトンは充分、この階級におけるベストボクサーの一人だという証明をしたと思います。井上尚弥が凄すぎました。メイウェザーとはスタイルは似ていても情緒は違うかな、と、安易に接近戦をする過去の試合を見て思っていましたが、それが陥穽になるか、というような次元の話でもなかったですね。ズル、を外した賢さの面でも完全に上回ってました。
私はスーパーバンタムが井上のベスト、という大橋会長の言に、そうかもしれないとほぼ同感で、ここまでは楽しみにしていました。入場時の表情を見て、あれ?と少し思いましたが、終わってみれば、これでリカバリーに改善の余地ありというなら、また次も楽しみだなあ、と思っています。
ボクサーとしてスピード、パワー、テクニックのみならずインテリジェンスもあり、さらに言えばパーソナリティの面でも前向きな明るさ、そして強さがある。赤井英和の言う「男は強く、明るく、賢くなかったらアカン」を地で行くような。真に強いからこそ備わっていくものを、井上尚弥は全て持っている。大谷翔平にも、なるほど通じる話ですね。
>海の猫さん
観戦お疲れさまでした。飲める人は良いなあ(笑)。私は井上尚弥の試合の夜は、コーラでもウーロン茶でも酔いますが。
ボクシングで、応援する選手に勝ち方まで求めるのは相当な贅沢ですが、井上だけは何を期待しても大丈夫ですね。寺地拳四朗や中谷潤人もそれに近いですが、これだけ悉く、というわけにはいかないですしね。
仰る通り、今回の勝ち方は、変な言い方ですが一番頃合いが良いというのか。ケチ付けにくい勝ち方でしたね。技術、戦術面で高度、なおかつ余裕のジェスチャーあり、強烈なフィニッシュで締めと、カラフルな試合でもありました。アメリカでも受ける試合、でしたね。
フルトンは良いボクサーでしたが、井上相手に勝てる選手かというと違いました。それは誰にとっても重い課題で、それを「真価」として問うのは、酷な話ではありましたかね。あちらの一部は、言うてもまだ井上尚弥をつぶさに見てはいないようで、そういう層がまるで井上を下に見るようなコメントをしていましたが、これで完全に見方が変わることでしょう。
試合開始直前から腿を叩いてましたね。あれは癖になっているのかな、と思いましたが、一階級上げても楽じゃないでしょうし、季節柄もあり、心配ではありました。初回終了間際のは、あれは左足がつっかえたのでしょう。試合後、何度も踏まれたと井上が言っていましたが、あのときもそうだったのかもしれません。右構え同士で、あまり聞かない話ですが、これもアメリカン・ボクシング、さらにフィラデルフィアの闘いの伝統、その深遠なのでしょうか。
>アラフォーファンさん
フルトンは全体的に劣勢で、鮮やかに外して当てる自分の闘いが出来ないさなかでも、果敢で懸命でしたね。あの辺りは単に巧い、ズルいだけじゃなく、闘いというものにどう向き合っているか、という部分で、好感とは言いませんが畏敬の念を抱きました。
普通の選手だったら、なかなか攻略出来るものではないでしょう。あの修羅のごときブランドン・フィゲロアでさえ、僅差とはいえ競り負けているのですから。しかしその相手に、主導権を握りつつ、押し引きを調整して闘い続け、仕留めてしまうのだから、凄い話です。
今は井上に続き、大関クラスというと何ですが、良い選手が沢山見られる良い時代ですね。この好影響が、時代の少年少女ボクサー達にも、良い形で引き継がれて欲しい、と願うばかりです。