さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

新王者による、清々しき「挑戦者」宣言 村田諒太、エンダムを圧倒

2017-10-23 10:16:48 | 関東ボクシング



ということでこの週末は、風雨を切り裂き敢然と上京。
両国国技館で観戦してまいりました。

台風の影響は各方面にあったかと思われますが、
場内は視認できる空席ほぼ皆無の大盛況。
その中で行われたメインイベントは、大観衆の期待を満たす内容と結果でした。

ちなみにこの観戦記は、台風の影響で発車を見合わせている
東京駅の新幹線車中にて書いている。ジョー小泉風に。
ということで、簡単にメインから感想を。


初回、少しだけ見て立った感じの村田諒太でしたが、徐々に手数が出始める。
対するアッサン・エンダムは、こちらもストレートパンチの距離から連打。
しかし前回同様、或いはそれ以上に村田の圧力を感じたか、連打もクリンチも、
早々に「強いられている」風に見える。

2回は村田、右ショート一発以外はミス多い。この回だけはエンダムに振れるか。
しかし3回、ショートの距離で村田が右アッパー。エンダムたまらず離れ、下がる。

4回からほぼワンサイドという感じになっていく。村田は右を再三決める。
右クロスから左ボディ、対角線のコンビで追撃。
5回、村田さらに攻勢。前回ダウンを奪ったのと同じタイミングの
「先手のカウンター」気味の右を決める。

6回、エンダムは苦心惨憺。構えを変えてくる。
まずガードを絞って上げる。村田空いたボディへ左右。
次に左ガードを上げて右頬に付けるが、村田が右をインサイドへ。
最後は左を下げ前傾するが、村田がコンパクトな右で叩く。

7回、エンダムの防御が空くたびに、厳しいタイミングで右。
ジャブ、ボディへとパンチを散らし、エンダムが腰を落とす場面も。

このまま、もうひとつギアを上げれば仕留められるだろう、
村田、今日はやってくれるだろう...と思った7回のあと、試合は終わりました。


試合としては、ほぼワンサイドの圧勝でした。
村田は前回の試合を、確実に自分のものにするために不足していた様々を、
ひとつひとつ着実に、再戦のリングで我々に見せてくれました。

打つべきときに打ち、好打のあとの追い打ちがあり、上下左右の「散らし」もあり。
一試合前と比べ、大幅に変わり、派手に変貌したわけではないが、
着実に一歩前進し、改善した部分が、試合全般を通じ、確かに見られました。

意地の悪い言い方をすれば、エンダムのような元王者クラスを相手に、
その実力が通じるのかどうか、その証のために、一試合余計に費やした、とも言えるでしょうが、
そんな辛口はひとまず脇に置いて、村田が現状の実力をしっかり出し切った、
見事な勝利だったと思います。


そして、喜びに包まれた場内に向けて語った試合後の言葉が、
この勝利にさらなる彩を加えました。

落涙を笑って否定し、ジム会長やファン、TV局や広告代理店に対する感謝を、
時に誠実に、時に軽妙に語ったのち、彼は「自分より上の、強いチャンピオン」に対し、
敢えて言及しました。

「自分より上の、強い」チャンピオンの存在を、さもしい意図を持って隠蔽し、
「ボクシングファンなら、誰でも知っている」現実から目を背け、
目先の経済的成功だけを追い続ける、嘘偽りに塗れた、志の低いタイトルホルダーの姿に、
長きに渡り、辟易してきたファンのひとりとして、
彼があの場で、あのような「言及」を行ったことは、とても嬉しい驚きでした。

上記した「連中」のような、元々大した力も実績もない駄馬と比べれば、
元五輪金メダリストの、いわばサラブレッドである村田の周辺事情は、
実はもっと重く複雑なものがあることでしょう。

しかし、仮に彼自身が腹の中で思い、頭で理解しているはずの現実を、口をつぐむことなく、
人前で、しかもTVの生中継で流れるインタビューの場で語ることは、とても重要な意味があります。

彼は、優れた広告の対象であり、ボクシングの枠を越えた知名度を持つスターですが、
それよりも先に、真の世界最強を目指す、数多のボクサーのひとりであり、伝統あるミドル級において、
世界上位を伺う実力を証明した、チャレンジャーのひとりである。
そのことを、自分の意志で宣言したのです。


贅沢で勝手なボクシングファンとして、村田諒太というボクサー、彼のボクシングが、
一から十まで全て好みなのかというと、実はちょっと違います。
日本人のミドル級ボクサーとして、竹原慎二、石田順裕に匹敵する、
歴代最高クラスの実力を持つ、稀有なボクサーだと思い、認めもしますが、
その長所と短所ははっきりしていると感じますし、物足りなさもまだ残ります。

しかし、彼が一試合ごとに経験を積み、じわじわと成長し、改善を重ねていく姿、
そして今回、あの場で「ほんとうのこと」を、さらなる挑戦への意志を語った姿を見て、
私は極めて単純に、ちょっと村田諒太のファンになってしまいました。


会場を出ると外は雨。しかし、心は晴れやかでした。
この試合を見た方々の多くが、きっと同じような気持ちだったのではないか、と
勝手に想像しております。
この悪天候で、会場が有明だったら悲惨でしたね、と、友人と言い合って笑いましたが、
今考えてみたら、別にそうであっても構わなかったかな、と。

期待以上に、幸福な気持ちになれた観戦でした。
村田諒太に感謝と祝福を。そして、さらなる期待と共に、声援を送りたい気持ちです。





コメント (11)
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