昨夜速報したとおり、仲村正男が金子大樹を判定に下しました。
ざっと感想です。
私の予想としては、序盤どちらかのKOがあるとすれば、五分五分の可能性。
しかし試合が長引けば、有効打を重ねているのはおそらく金子の方だろう。
終盤KOか判定なら、金子の優勢という見方でした。
しかし仲村がこれまでになく、ジャブを間断なく出し、ワンツーの距離を意識して闘ったこと。
金子の反撃を受け、打たれて止まる場面は何度もあったが、粘り強く凌いだこと。
金子が序盤からやや重く、不調だったこと。
これらの要因が、私の予想を完全に覆しました。
ことに仲村の、この一戦に賭ける意気込みは相当なものだったようです。
これまで見た試合では、好機と言えない場面でも強引に踏み込んで打ち合い、
豪快に倒す試合もあれば、逆に打たれて危機を招き、敗れることもあった仲村でしたが、
昨日はジャブから入って右に繋げる形は同じでも、強弱をつけて、手数が出ました。
倒そうという力みがだいぶ軽減されていて、金子を突き放す意識が見えたように思います。
そもそも、パンチ力と、倒しにかかったときの強さは誰もが認めるものでしたから、
その仲村が自分の力をより生かす展開を考えて闘えば、相手にとってはかなり厄介です。
連敗のあとを受けて組まれた、金子大樹という強敵との試合で、これまで以上にリスクの高い
力勝負に出てしまうのではないか、という私の悪い想像は、まったくの的外れでした。
そして、金子の反撃を受けて、これは危ないと思った場面においても、これまでにない
仲村の粘り強さが見られました。
ジャブ、ワンツーで突き放しても、距離を詰めて入ってくる金子と、ショートの打ち合いになると
どうしても金子の方が優勢で、時に打たれ、動きが止まり、ダメージを感じさせる場面も再々でした。
しかしあっさり倒れたりはせず、懸命にジャブを返し、また距離を取ってワンツー、という形での
反撃もまた、再々見られました。この試合に向けて海外合宿で鍛えてきた仲村の闘いぶりは、
労を惜しまぬ手数と距離の維持、そして心身の強さが見られた、出色のものでした。
もちろん、これまでの試合で見られた、彼が抱える弱点が、完全に消えて無くなったわけではありません。
しかし強敵金子相手に、これまでの試合に欠けていた攻防の厚みを見せ、強打のみならず手数でも
圧倒的にまさって勝ったこの試合ぶりに、私は素直に脱帽します。そして、大いに称えたい気持ちです。
=============================================
対する金子大樹は、立ち上がりからちょっと重いかな、という印象でもありました。
仲村のジャブに先手を取られ、力んで左フックや右から入ってくる繰り返しは、
時に距離を詰めての好打はあれど、これまでにない粘りを見せる仲村を捉えきれませんでした。
陣営や本人に、私のような対仲村観というか、思いこみがあったわけでもないでしょうが、
全体的に雑な印象があり、また、好調時の勢い、爆発力も欠けて見えました。
元々、抜群の体格や力に恵まれた反面、けっして器用なタイプの選手でもないようです。
内山高志、ジョムトーンに敗れた後に喫したこの敗戦は、我々が思う以上の危機かもしれません。
苦境にあっても黙々と前進し、果敢に闘い続けた昨夜の姿は、これまた感動的なものでした。
今はしばし休息が必要なときでしょうが、彼の再起にも期待したいです。
=============================================
昨夜のホールは7試合全部判定でした。
しかし、内容的には見どころのある試合が多く(もちろん、それぞれに不足もありはしますが)、
全体的には場内もなかなか盛り上がって、良い感じでした。
これがどこでもTV放送されない、という現実だけが、残念ではありますが...。
何も地上波でやれなんて言いませんし、そういう時勢でもないでしょうが、
せめてCSのどこかで、こそっとでもいいからやれないものでしょうかね。
現実は我々が思う以上に厳しく、絶望的な話も聞いたりしますが、それでも何とか。
このような、全身全霊を込めた二人の闘いが、少しでも多くの目に触れて欲しいし、
その機会を創出するための方法を、何とか考え出してもらいたいと、切に願うところです。
==============================================
最後に、採点についてですが、速報してて「これは敵地といえども、勝ちにしてほしい内容だなあ」と
思っていたら、自分の採点がドローになっていて、愕然としました(^^;)
ちょっと序盤から中盤にかけて、仲村に辛いですね。
仲村は単発のヒットを受けたときのリアクションが大きい面があり、そのせいかもしれませんが...。
試合後、複数の方に「仲村の完勝だよ」と言われ、ちょっと考え込んでしまいました。
関西の選手に甘いと思われたくない、という心理が働いた部分があるのかもしれません。
予断を持ち過ぎて試合を見るのは、良いことではありませんね。この辺は永遠の課題であります。