そういうことで一昨日、以前から嘯いていたとおりの馬鹿をやって、年に何度かの
平日後楽園ホール弾丸観戦ツアーを強行してまいりました。
翌日早朝とんぼ返りという強行スケジュールのため、今頃観戦記です。
でもまあ、当ブログはいつもこんなものですので、どうかご容赦をば。
メイン、仲村正男vs伊藤雅雪ですが、私の予想は序盤のうちKOがあるなら仲村。
長引けば伊藤、という、いかにもありがちなものでした。
仲村は強打は当然のこと、好機を逃さぬ詰めの鋭さ、強さは突出したものがあり、
伊藤がその鋭い見切りに自信を持つあまり、受け身になりすぎたら、
仲村の強さを引き出してしまう可能性もあるだろうと。
しかし伊藤が、仲村の強打を小さく見切るだけでなく、大きく空転させ、
強打故にパンチとパンチの繋ぎに間があり、左から右を打つ際、やや胸を張った感じになる
仲村の防御の隙をカウンターで捉えれば、伊藤が勝つだろうとも見ていました。
いずれにせよ、双方共に、当然欠落したものがある代わりに、普通のボクサーにはない
突出した強みもある者同士で、スリリングな試合になるだろう、これは見ないで済まない、と
カード決定の時点で確信し、馬鹿をやって客席に陣取った次第でした。
初回、仲村が圧して出る。左を突いて右。シンプルだけどパワフル。
伊藤はここ二試合で見せた見切りは凄かったが、この日はやや余裕が無い。
この回終盤、仲村の右が浅くヒット。伊藤一瞬止まる。
2回、やや伊藤が持ち直し、カウンターパンチが当たり出すも、いずれも軽い。
3回、良く動く伊藤だが、仲村が強い左を増やし、しっかり見て闘っている。
ここまでの経過は、仲村勝利へのプロセスかと見えました。
伊藤はこれまでの相手とは一段違う仲村の強打に、脅威を感じていたように見えたし、
仲村が右への布石としての左をよく使えているとも思いました。
しかしこのあと、試合は伊藤の多彩さと、仲村の単調さが目に付く展開となります。
そして、両者とも、相手の強打、カウンターを警戒したせいか、揃って及び腰になってもいきます。
4回、伊藤右2発、仲村リターンも一発。
5回は正直、迷う回。仲村左で追う。伊藤カウンター決めるも浅い。
6回、仲村追うがワンツーのみで、単調。伊藤は圧されてホールドが増える。
離れれば左右の多彩なカウンター、ミスも多いが、右浅く当てる。
7回、伊藤カウンターが良く出る。仲村ミスが目立つ。攻め口は変わらず単調。
終盤、仲村カット。伊藤のヒットによる。
8回、仲村がカウンターを怖れず果敢に出る。激しい打ち合いになるが、
仲村が来たぶん、伊藤もカウンターが決まり出す、この辺は半ば「否応無し」だったか。
採点は5-3、伊藤。
採点を迷う回がいくつかあり、ドローまでならあるのか、とは思いました。
逆はどうか、と言われると...あまり言いたくないことですが、大阪でやっていたら、
普通にそうなってるのかな、とは思いましたが。
そして、試合内容としては、もちろん、それぞれに明確な特徴を持った者同士の、
緊迫した好試合、ではあったものの、こちらが勝手に期待した、普通に良い試合、という以上の
劇的な、スペクタクルな試合ではなかった、というのも事実でした。
仲村は右の強打を時に披露しましたが、それによって相手に与えた脅威を「利用」して
次の展開への布石を打っていく、というような組み立てが一切なく、単調な攻防に終始しましたし、
伊藤は柔軟な動きで見切りをしてカウンターで倒す、という凄みを、半ば削られていて、
仲村の攻勢を、時に露骨なホールドで食い止めざるを得なかったのも事実でした。
突出した強さの反面、未熟さも抱える同士の、けっして悪い内容では無い、好試合でしたが、
この試合自体には、上記の通りの不満も残りました。
双方共に、この試合で得たもの、喪ったものがあるとすれば、それを今後のキャリアにどう生かすか、
そこに注目したい、と思います。もちろん、それぞれにさらなる成長への期待をこめて、です。
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それにしても、この興行、メインカードだけで観戦を決めたんですが、セミに湯場忠志が出るわ、
木村隼人(見るのは初めてでした)は出るわ、ろくに知りもせんかったけどとても良い選手も見られて
(久我勇作のことです)、第一試合から最後まで見所満載の、とんでもなく濃厚な観戦となりました。
まあ、湯場の試合自体は完全な「箸休め」になってしまいましたが、木村隼人の壮絶な闘い(負けましたが)、
今後に大きな期待をかけたくなる好選手、久我の見事な勝負強さと右の鋭さ、色々見られた上に、
青木クリスチャーノvsクウエ・ピーターのダウン応酬、クルーザー級の4回戦等々、見所たくさんのカードばかりでした。
関西にいると、「DANGAN」シリーズといわれてもいまいちピンとこないんですけど、
この興行、普段見慣れた「ジムの都合」で組まれたカードばかりではなく、「好カード提供の意志」を持つ
「プロモーター」の手によるものなのだ、という、嬉しい実感が持てるものでした。
そう毎度無茶が出来るわけもないですが、「コレや」と思う時があれば、また馬鹿をやることになりそうです。
見に行った甲斐のある、とても楽しい興行でした。