さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

期待はまだ捨てたくない 土屋、久保、痛恨の敗戦

2013-07-26 09:10:54 | 関東ボクシング

昨夜は、久し振りの後楽園ホール観戦でした。
本当に、いつ以来か思い出せないくらい久々のホールは、
後ろの方の席でも、驚くほどリングが近く見えて、驚いてしまいました。
ここで日常的に観戦出来る人たちは、やっぱり贅沢してるなぁ、と
改めて羨ましく思ったりもしました。


試合ですが、個人的には土屋修平vs中谷正義がメインイベントでしたが、
他にも興味深い試合がたくさん見られた興行でした。


中谷正義は立ち上がり、望外と言っていい好スタートで、
左を伸ばして先制し、土屋修平に打てる距離を与えない立ち上がり。

土屋は相手の攻撃に「合わせ」の技を決めるセンスには抜群のものがあるが、
それ故の落とし穴というか、相手の攻めを待って対応する形に固執して、
序盤から好打され、ペースを失ってしまいます。

2回に土屋は踏み込みを強め、距離を縮めようと出ますが、
3回中谷の右を食い、ボディブローで動きが止まる。
中谷は左右をボディに集めダウンを奪い、再開後、パワーを溜めた左をストマックへ。
これが決まって二度目のダウン、土屋戦闘態勢を取れず、カウントアウト。

終わってみると、土屋のボクシングの、自分の良さを、試合の流れの中で、
より適切に生かすための組み立てがなく、布石の部分を飛ばして、
得意なことばかりをやろうとする欠点が露呈した試合だった、という印象です。
その隙を、立ち上がりから中谷に突かれた、というのが今回の試合だったのでは、と。

それにしても厳しい内容と結果です。彼の今後はかなり厳しいものがあるでしょう。
序盤のうちに、ボディブローでカウントアウトされるという負け方は、
様々な方向から、厳しく評されるでしょうし。
しかし相手の力を利した「合わせ」や、相手の攻撃のつなぎ目に切り込むような
天性のタイミングは、普通のボクサーに無いものです。
かなうことなら、あの天性が失われることなく、開花するところを見たいと、
いまだに心の片隅で思っています。


自身の良さを生かすための組み立て、布石の部分が欠けている選手を、
この日、もう一人見ました。元キック世界王者の久保賢司です。

この選手を直に見るのは初めてなのですが、なるほど、マネージする人が
早急に名のある選手と闘わせて売りだそう、と考えそうな選手だ、と
一目見て思いました。

まずルックスがいい。ボクサーとしても、スターとしても、華がある。
そして「単品」として見た攻撃に、事実として力がある。
きっとジムでバッグやミットを打たせたら、かなり迫力があるのだろうと。
スパーリングでも、かなりの強みを見せるのでないか、とも見えました。

しかし実際の試合の中では、自分の気持ちの良いように打っていればいい、
という場面は、実のところ全体の1割にも満たない。それがボクシングの試合です。

相手を崩し、攻めを組み立てることをせず、最初から最後まで、緩急も何もなく
自分の感覚で打ちたいパンチを選んで強打する、相手の好不調に関係なく、それだけ。

序盤、まだ相手が何もダメージなど受けていないときから、まるでフィニッシュに使うような
パターンのコンビネーションを数パターン繰り返す。
それで3回に二度ダウンを奪ったのは良いのですが、倒しきれず、徐々に失速し、
藤原陽介の反撃に失点を重ねて敗れた闘いぶりは、あまりに稚拙で、見ていて驚かされるほどでした。

この選手も、自分の良さを試合の流れの中でどこに配置するか、という考えがなく、
最初から、自分の良さを出して、それで上手くいって元々、という発想で闘っている。
悪く言えばそういう印象を持ちました。

もしこの選手が、相手を見て、探りを入れ、リズムを取って、相手を崩し、という過程を経て
速いダブルやアッパーのコンビを繰り出していれば、それを受けて劣勢になった相手は、
なかなかその試合の形勢を立て直すわけにはいかないと思います。
それだけの力が、久保賢司の攻撃にはありました。

しかし、ボクシングという闘いは、自分の良さだけを振りかざしていれば勝てるものではない。
その事実を早くに学べたという点では、今回の敗戦はまだ、嘆いてお終い、ではない、と
今後への希望をまだ語れるものかも知れません。


少ないキャリアで、強い相手と次々に当てるには、大きな「不備」があったとはいえ、
土屋も久保も、普通の選手にはない輝きが確かに見えました。
厳しい結果の先に、さらなる進化が見られるかどうか、
簡単ではないにせよ、まだ期待したいところ、です。



で、メインというか「いちばんさいごの試合」だったヘビー級タイトルマッチは、
藤本京太郎が6回にオケロ・ピーターをフィニッシュし、日本王座獲得。
藤本が6回の好機に見せた詰めは、迫力があって見事でした。

しかしそれまでの過程は、残念ながら若干、間延びした攻防が続き、
全体として見ると、日本ヘビー級ボクシングの将来が明るいとまでは思えませんでした。
オケロ・ピーターは、凄く大げさな例えを持ち出すと、
ラリー・ホームズ戦におけるモハメド・アリみたいなものだったな、というのが
試合を見ての率直な感想です。



ということで久々の後楽園ホール、色々見どころ、思うところの多い、
濃厚な興行を見ることが出来ました。
出来ればまた「コレや!」と思う試合を見つけて、お邪魔したいと思っております(^^)


コメント (6)
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