内山高志またも盤石、という試合でした。
コスタリカ初の世界王者(暫定ですが)ブライアン・バスケスは
思った以上に強く、巧者だったと思います。
ガードはやや低めの設定なれど、リズミカルな動きで的を絞らせない柔軟な防御。
距離の測定とパンチの選別を間違わず、ジャブ、フックと左リードが多彩。
要所にしっかり右を狙うが、一番の威力はスリーパンチの最後に打つ左ボディ。
時折見せたスイッチもバランスがよく、左ストレートも好打でした。
例として持ち出すのも何ですが、粟生隆寛を攻略したガマリエル・ディアスより、
実力的には上に見えました。
4団体全部合わせた世界ランキングがあると仮定しても、
トップ10に入れて問題がない、という感じです。
しかし内山高志は、難敵相手に動じることなく、いつものように闘い、勝ちました。
この人の、無駄に打たず、安易に打たせず、という丁寧な心がけが見えるボクシングは、
デビュー当初から、本当に変わりません。
強靱な肉体、並外れた強打を持ちながら、易きに流れず築き上げられたスタイルは、
見る者を敬服させ、対戦相手を屈服させ続けてきました。今回もまた...でした。
よく動くバスケスに対し、丁寧なジャブ、左ボディで叩く。
時に左を控えて、相手を逃がしておいて、追うように右ストレートで狙う。
懸命の応対もむなしく、間断なく圧力をかけ続けられたバスケスが
目に見えて失速してきてもなお、強打を狙って大振りになることもなく。
右が数多く当たるようになった7回、フィニッシュした8回に至っても、
小さく振る右で追い込み、とうとう打つときに前にのめってしまった
バスケスの数少ないミスを、左アッパーのカウンターで捉え、猛攻してストップ、でした。
試合後のインタビューで「まだまだ強くなることが第一」とコメントしていましたが
ええ、まだですか、と、見てるこちらとしては感心するより呆れてしまいましたね(^^)
私はこの試合のプレビューで、内山にはWBAのベルトじゃなく、他のベルトを巻いて欲しい、と
ファンの勝手は承知の上で書きましたけど、本人の「ベルトは形だけのもの、強さが大事」という
極めて説得力のある正論の前には、何の意味もない戯言だったと思い知らされた感じです。
強い、巧い、頼もしい。しかしそれだけでは収まらない、王者の風格。
大晦日、ふたつのTV局による複数世界戦イベントに関しては、
さまざまな是非論があることでしょうが、内山高志の存在あればこそ、
ボクシングの持つ威厳、尊厳が守られている、と改めて思いました。
そして内山高志には、大晦日の看板、重しというにはとどまらない、さらなる飛躍を期待したいですね。
とりあえず、ユリオルキス・ガンボアとの一戦、どうにか実現してもらいたいものです。
ここまでの実績と試合内容、対戦相手の質からいっても、
かつてのクリス・ジョンと同等か、それ以上のものがあると思いますし、
米大陸のリングから、ある水準を越えたオファーがあっても良いと思いますね。
いや、とにかく見事でした。内山高志の存在に感謝、です!