カウンターが得意で、受け身になりながら好打を狙う頻度が高いボクサーの試合を見るとき、
いつも思うことと同じことを思わされたのが、宮崎亮の試合でした。
目が良く、上体を柔軟に使い、相手の攻めの逆を取るのが巧い、小柄な強打者。
宮崎亮のボクシングは、試合によって出来不出来が激しい点は心配なれど、
見方によっては友にしてライバルと目される井岡一翔を上回る、と見る向きもあるほど、
良いときのひらめき、切れ味、破壊力は目を見張るものがあります。
そしてその魅力は、今回の試合にも、時に発揮されました。
しかし、初めてミニマム級に落としての試合で、そのような宮崎の長所が
存分に発揮され続けるものなのか心配でした。
序盤、思った以上に、これまでと大きくは変わらない体つきと動きを視認して安堵した反面、
この好調さが突然消え失せるような失速があるのではないかと。
そして対戦相手のポンサワン、スローな反面、その並外れた強靱さと執拗さは、
宮崎を応援する者にとり、さらなる不安でした。
その飽くなき前進と攻勢に対し、宮崎は基本、受け身で見て、外してはカウンター。
時に好打を端緒にコンビネーションを繰り出し、終始有効打で上回りました。
逆に好打され、攻め込まれる場面もあり、スコアは割れ、競ったものもありました。
相手の攻めの裏を取るカウンターが得意な宮崎が、もう少し左リードで相手を止めて、
その上でカウンターを取れれば、より正確に強く打てるのでしょうが、
それは3回序盤などに実現されたものの、回数としては少なかったと思います。
このあたり、カウンターパンチャーとしての良さを生かすための、
攻防のバランスをどこに置くかという難しさが見えた試合でした。
タフなポンサワンがカウンターの好打で倒れてくれない以上、
より強く、数多く当てるために、より左リードを強く打つ攻撃的姿勢を強めるか。
しかしそれにより、減量苦を抱える宮崎の体力が消耗されるでしょうし、
ポンサワンの強打を浴びるリスクも増すことになります。
今回の試合は、そのあたりのバランスに苦心した末の勝利だったと見えました。
心配だった失速は、あからさまな形では起こらなかったし、
3回や11回の左フックの好打と、その前後の崩し、追撃は見事なものでした。
今後、転級せずにこの王座を防衛していくのなら、
もっとスピードがある相手に対したとき、果たして今日の調子で防御し、迎撃出来るものかどうか。
もう少し、受け身になる頻度を下げて闘う必要があるかもしれませんし、
その場合の体力面での不安も解消していかなければならないでしょう。
しかし、その魅力が十全に発揮されたかどうかは意見の分かれるところでしょうが、
この柔軟、自在、時に冷徹、時に奔放な、魅力に溢れたこの小柄なボクサーが
大晦日の舞台で、普段とは比べものにならないほど多くの注目を浴びて闘い、勝ったことは
それ自体がとても喜ばしいことです。
これをきっかけに、宮崎亮が新たなスターとして認知されてほしいし、
彼にはそうなるだけの魅力があると思います。
今後、どのような展開があるのかわかりませんが、
同級の強豪たち相手に、その実力を見せつけるような試合を期待します。